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Books, Life, Diversity #1

これまでの私の人生を支えてくれてきた本(出版)という文化の持つ多様性が大きな危機に直面しているいま、本が好きだという以外には特に才覚もない私にできることを考えると、当たり前かもしれませんが、やはり、好きな本を紹介していくことくらいしかなさそうです。今回から始める一連の記事("Books, Life, Diversity")では、気負わず焦らず、私が特に好きな本についての紹介を、ゆるゆると続けていこうと思います。

ここでは一回の投稿につき「新刊本」、「表紙の美しい本」、「読んでほしい本」という三つのカテゴリーから一冊ずつ紹介していきます。読んでほしい本(すべてが読んでほしい本ではあるのですが)については、その本のなかから特に好きな一節を紹介します。残りについては書誌情報のみの紹介になりますが、ちょっとでも心を惹かれるようであれば、手に入れて後悔することはないものばかりです。

もし気になる本があるようでしたら、ぜひ、近くにある書店や街の書店のオンラインショップで探してみてください。探す過程で、きっとさらに素晴らしい本に出合えることと思います。

あと、出版支援として以下の重要なプロジェクト/情報へのリンクもはっておきます。ぜひご覧いただければ。

というわけで第一回目。

「新刊本」#1

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山本圭『アンタゴニズムス―ポピュリズム〈以後〉の民主主義』共和国、2020年

共和国の本は宗利淳一氏がデザインを手掛けており、これは「表紙の美しい本」カテゴリーでも良いくらい完成された装丁ですが、出版されたばかりなのでこちらのカテゴリーで。ラクラウとムフ、個人的にはちょっと苦手だけれども、ポピュリズムを避けては通れないこの日常を生きる私たちにとっての新たな必読書だと思います。

「表紙の美しい本」#1

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ジャック・ランシエール『民主主義への憎悪』松葉祥一訳、インスクリプト、2008年

内容的にも素晴らしい根本的な民主主義論。ぜひ『アンタゴニズムス』と合わせて。ここに掲載した写真は(私の腕が悪いため)いまひとつですが、モノクロでシャープなデザインに銀で刻印されたタイトルが美しいの一言。哲学の本はこうでなくちゃね、という、私にとってのあこがれの一冊です。

「読んでほしい本」#1

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ルネ・ドーマル『類推の山』巖谷國士訳、河出文庫、1996年

寓意の塊がやがて臨界を超えて落ちてくるような、圧倒的に明るく美しく、そしてどこか恐ろしい物語世界。物語自体は未完なのですが、それがまた不思議で透明で、どこか悲しい風が通り抜けていくのを感じさせます。巻末には資料も充実。

おわかりのように、私には試金石がありませんでした。けれども、私たちが二人になったという事実が、すべてを変えるのです。仕事が二倍だけ容易になるということではない、不可能だったことが可能になるのです。ちょうどある天体から地球までの距離をはかろうというときに、あなたが地球上のある既知の点をあたえてくれたようなものだ――計算はまだ不可能です、けれども、あなたが第二の点をあたえてくれればそれは可能になる――そうすれば私は三角形をつくることができるからです。(p.43)

きみと私が居るということ。その存在論的なかけがえのない意義をこれほど美しく表現した言葉を、私はほんとうにわずかしか知りません。鬱々としたときにこそ読んでほしい一冊です。

そんなこんなで、また次回。

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