見出し画像

中学生のとき、職場体験で隣町の病院に行った。

はじめに看護師さんからいくつか注意事項の説明があって、「患者さんの情報は、学校の先生や友達、家族にも絶対に話さないでくださいね」って言われてた。

1週間あった期間のうち、確か2,3日目だったはず。病室に入って、少しだけ患者さんと1対1で話すタイミングがあった。

自己紹介をすると、「あんた仁賀保の人だか?」と聞かれた。あんまりない苗字だから、ピンときたのかもしれない。

話を聞くと、患者さんは私のおばあちゃんと知り合いみたいだった。その方はえらく喜んで、「おばあちゃんさよろしく伝えてけれなぁ」と私に言う。反射的にハイと答えてしまったけど、頭には看護師さんに言われたことが浮かんでた。

1週間は矢のように過ぎて、あっという間に職場体験は終わった。結局、おばあちゃんにその患者さんのことを伝えられていない。残念ながら、もうその患者さんの名前も覚えてない。

あの患者さんは、どうして入院してたんだろうな。一時的なものだったのか、それとも。

どちらにせよ私が伝えなければ、おばあちゃんがその方のことを思い出したり、もしくは会ったりすることなんかもないだろう。

そのお願いは、おばあちゃんに届けてあげたほうがよかったのかなぁ。私が、なにか可能性の種を潰してしまったのかもしれない。

長い目で見たとき、どうするのが正解だったのかとふと思う。今の私ならきっと判断を間違って、それでいて正しい選択肢を選べるのかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?