マイ窯製作

批判されたり伝わらないから価値がある-「Mass production unique items」が生まれるまで-

僕が初めて移動可能な陶芸窯に出会ったのは4年前くらいだと思います。最大お茶碗くらいの大きさの陶器しか焼けない陶芸窯でしたが、その存在は僕に大きな衝撃を与えました。

でもこの窯と出会った陶芸の産地では結構目にする物で、僕が「すごいですね!」と興奮していても地元の方々は「そう?」という反応でした。

でもこの出会いで感じた感動を多くの人に伝えたくて、まずは窯焚きイベントを5代続く窯元でもある文五郎窯さんにご協力していただき何回か開催しました。

その後、職人さんから「窯を作ってみるか?」と聞かれ、陶芸初心者の僕でも作れてしまったことから「窯作りイベント」の開催が決定し、多くの方々に「窯作り」「窯で焼くための陶器作り」「自分で作った陶器を自分で作った窯で焼く」まで体験してもらい、自分で作ったお猪口を自分で作った窯で焼き、その場で日本酒を呑むという最高の体験をされているお客様もいらっしゃいました。

しかしこの窯の使い方は、作家や一般の人が作った素焼き作品を本焼きするだけでした。

そんな移動可能な陶芸窯で出来上がる陶芸作品を見ていて「この陶芸窯で100円均一の陶器を焼き直したらどうなるのだろうか」という発想が頭をよぎりました。

これまでそんなことをやった人は誰もいなくて、職人さんに伝えてみると「やってみれば?」とあまり乗り気でもない感じで、他の人たちは「それが何になるの?」という反応でした。

後日、100円均一で陶器を買ってきて焼いてみました。

すると本当に見たことのない陶器が焼きあがりました。

この作品を後に「Mass production to unique items」と名付けました。

でも誰にもこの陶器にどれだけの価値があるのか分かる人はいませんでした。それだけ新しい試みだったからです。

そこでLEXUS DESIGN AWARD 2017などコンペに出してみることで、反応を確かめてみました。

すると見事に賞を頂け、イタリアのミラノデザインウィーク2017でNYタイムズなど多くのメディア、キュレーターの前でプレゼンテーションをする機会まで得ることができました。

「100円均一の陶器を焼いてみたい」

あの時、職人さんが「やめておけ」と言っていたら。

あの時、誰も分かってくれないからやめておこうとしていたら。

ミラノデザインウィークでプレゼンテーションすることも、尊敬する建築家の伊東豊雄先生からコメントをもらうことも、その後この陶芸窯を体験しにKURA COCOLONOに人が集まることもありませんでした。

僕はいつも周りの身近な人に作品や企画の話をします。そして「それいいね!」とすぐに言われたら、いつも一度立ち止まるようにしてます。

マーケティングとしては間違っているやり方ですが、未来への自己投資としては大切な考え方だと思っています。

その態度こそが「オリジナリティを生み出す僕らしい方法」だと思っています。

TAKEHANAKE design studio

竹鼻良文

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