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人生の最高潮って・・・


「じいちゃんプップ(車乗せて)!じいちゃんプップ(車乗せて)!」


僕の祖父は数年前に亡くなった。

僕と祖父が本当に仲良くなったのは25歳でフリーランスになった次の年。結構厳しい祖父だったからフリーランスになったことを理解してくれず、怒られると思って逃げ回っていた。

そんな祖父がいきなり朝方5時くらいに福岡県から実家のある兵庫県まで車でやってきて、寝ていた僕は久々の出会いを果たした。祖父はフリーランスになった僕に「人や時代や国すら裏切ることがあるのだから自分が信じることをやることこそが正しい」と言ってくれ、僕がやろうとしていることを一番理解してくれ応援してくれた。

都合が良くなったら仲良くなるってとてもダサいことだとは思うけれど、僕と祖父はその日からとても仲良くなった。


人や時代や国すら裏切る

祖父は戦争を経験している。会社の社長もやっていた。バブルも駆け抜けた。兄弟も多く、子どもにも恵まれた。孫もいる。

そんな色んな経験をしてきた祖父が亡くなる1年前くらいに僕に言った話がある。


「お前のお兄ちゃんがなぁ、まだ言葉を覚えたての時に車に乗るのが大好きで、俺がトイレに入るものならじいちゃんを探して、じいちゃんプップ(車乗せて)!じいちゃんプップ(車乗せて)!って追っかけて来たんよ。」

「いろんな経験をしてきたけれど、よ〜く考えてみたらあの時が一番幸せだったと思うんよ」


その話を聞いた時、僕はまだ子育てが始まっていなくて、妻のお腹に上の子がいる状態だったから祖父の感覚に全く実感がなかった。というか今も実感はない。でも、もしかすると僕は今、人生の最高潮の時間を過ごしているのではないかと思うようになっている。

人は失ってから色んなことに気がつく生き物だ。母も「棺桶が閉まる時に人生の全てが分かる」とよく言うし、祖父も「葬式の時にどんな人が集まったかで自分の人生が分かるから人生は分からない」とよく言っていた。


人生の最高潮は色々あると思う。子どもがいるからとかそういうことではなく、先日のnote酒場だって本当に素晴らしい体験だったし、これからも人生は続く。


でも先人に話を聞き、先に人生の最高潮を知っておくこともまた素敵な人生の歩み方ではないかと思っている。もしそれが最高潮でなかったとしても、もしかしたら最高潮かもしれないと思い、1分1秒を大切にできるかもしれない。


偶然病院で看取れた祖父が最後に残した言葉はめちゃくちゃ嬉しそうな顔をして言った「あぁ!ふみくん(僕の呼び名)!来てくれたんか!」だった。

今のところ、僕の人生の最高潮はあの瞬間だったと思う。


孫 竹鼻良文

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