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【たとえたとえ】明治安田生命J1 第8節 鹿島アントラーズ-柏レイソル レビュー

戦前

前節は浦和レッズに敗れて、リーグ戦3連敗を喫してしまった鹿島アントラーズ。降格圏が目前に迫る状況の中、今節は中3日でのホームゲームとなる。

鹿島が迎え撃つのは柏レイソル。鹿島と同じく、今季ここまでリーグ戦1勝と苦しんでおり、降格圏の17位に位置している。前節も同じく降格圏の横浜FC相手に先制を許し、終盤になんとか追いつきドローという展開だった。今節はそこから中3日で迎える。

スタメン

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鹿島は前節から4人変更。センターバックに犬飼智也が戻り、右サイドバックに小泉慶、中盤にファン・アラーノが入った。また、ボランチにはリーグ戦初スタメンとなる舩橋佑が起用されており、土居聖真がケガから復帰してベンチ入りしている。

柏は前節から2人変更。ボランチに椎橋慧也、左サイドに神谷優太が起用された。

逃げられる鹿島のプレス

試合は柏がボールを保持する展開でスタートした。柏は4バックの形を崩さずに組み立てを行い、4-2-3-1の布陣で入った鹿島はトップ下のアラーノがボランチの椎橋を監視する形で入った。

この噛み合わせだと、センターバック2枚を1トップの上田綺世1人で見る形になり、この部分の数的不利をどう受け入れて、どう解決していくのかがポイントになる。だが、今節の鹿島は左サイドに入っているエヴェラウドもセンターバックにプレスをかけており、この部分の数的不利は解消されていた。

だが、エヴェラウドが前に出るということは、必然的にエヴェラウドが埋めていた部分が空くということになる。空くのは柏の右サイドバックである大南拓磨。エヴェラウドは大南へのパスコースも切りながらプレスにいければ良いのだが、彼は中盤のマテウス・サヴィオへのパスコースは切っていたものの、大南へのパスコースは切れていない状態でプレスにいっていた。そうなると、柏は大南をプレスの逃げ場にして、そこからボールを前進させればいい。ということで、柏は右サイドから鹿島のプレスを剥がして、ボールを前進させていく。左サイドバックの永戸勝也が対面するクリスティアーノも見なければならない状況の中で、長い距離を走って大南の対応にいくのは中々切なかった。

一発狙い

柏の攻撃を凌ぐと、徐々に鹿島はボール保持の局面が増えていく。柏は4-4-2の撤退で守り、あまり積極的にプレッシングを行わなかったこともあって、鹿島はボールを前進させることにあまり苦労していなかった。

鹿島が使ったのは柏の2トップの脇のスペース。ボランチを降ろして3枚で組み立てる鹿島は両脇の選手がこのスペースへとボールを運び、そこから縦パスを送り込んでいった。

序盤の鹿島はそこから柏の最終ラインの裏へと長いボールを送り込み、そこから少ない手数でフィニッシュに迫る形が目立っていた。裏抜けするのは上田、エヴェラウド、アラーノ。彼らの個の力ならそれで十分チャンスになるという算段なのだろうし、実際チャンスになっていた。

だが、当然弊害もある。手数をかけずに前線の選手だけで攻撃をおこなうため、はね返された時に布陣が整っておらず、セカンドボールが思うように拾えなかったのだ。こうなると、ペースを握って攻撃を畳みかけることは出来なくなる。一発は強いが、単発感が否めない攻撃となってしまっていた。

袋小路に入る鹿島

前半の飲水タイム明けから鹿島はより主導権を自らのものとすべく、細かいパスを増やして、ポゼッションで相手を押し込んで崩していこうと試みていく。だが、柏も黙ってそれを受け入れるわけではない。中盤と前線との間をコンパクトにして、プレス強度を強めて鹿島のポゼッションに制限をかけていった。

鹿島の問題は繋ぐフェーズになると、途端に中盤に人数が掛かりすぎてしまい、裏や逆サイドへの展開が消えて密集の中でのプレーを常に求められてしまうことだ。繋ぎながらも展開を大きく変えてチャンスに持っていくために、逆サイドに選手を配置してそこにボールを供給したり、裏に走り込む選手がいて相手のコンパクトさを阻害出来れば良いのだが、現状だと全員が全員繋ぐフェーズに入ってしまう訳である。そうなると、圧倒的な質の高さでもない限り、そこを剥がすのは難しくなってしまうのだ。

今節も柏のプレスの網にかかり、そこからショートカウンターを食らってピンチになる場面は少なくなかった。柏はボランチにマテウス・サヴィオを起用しており、彼の機動力とそこから前に運ぶ推進力は鹿島にとってかなり厄介だった。

システム変更でペースを掴む柏

前半をスコアレスで折り返すと、ハーフタイムに柏は2枚代えを敢行。イッペイ・シノヅカと仲間隼斗が投入され、3バックにシステムも変更してきた。

後半開始時~

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48分~

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3バックに変更した柏の狙いとしてはまず守備を安定させたかった部分が大きいはずだ。前半からエヴェラウドが左サイドに回っており、対面する大南はイエローカードをもらっている。後半もエヴェラウドの質的優位をぶつけられることが想定される中で、守備に人数を掛けて大南の負担を減らしたかったのだろう。

また、先述したように前半から柏は右サイドをプレスの回避場所として、そこからボールを運べていた。そこにドリブラーのイッペイ・シノヅカを入れることでより攻撃力を増して、サイドに流れるクリスティアーノと共に左サイドバックの永戸を追い込みたい狙いもあったはずだ。

これでペースを掴んだ柏は攻勢の色を強めていく。左サイドでも江坂任が降りてボールを引き出し、その裏に仲間が流れて抜け出していく形は、鹿島守備陣に迷いを生じさせ、サイドからの攻撃でチャンスを作り出していった。

上田綺世の一発回答

だが、その中で先制したのは鹿島だった。中盤でマテウス・サヴィオがボールを持っていたところにレオ・シルバと小泉が連動してボールを奪うと、そこからショートカウンターが発動。ボールを受けたアラーノのスルーパスに最後は抜け出した上田がゴールネットに沈めた。

レオ・シルバと小泉のボールへの感度の良さも、アラーノの絶妙なスルーパスも見事だが、何と言っても一番は上田の裏抜けだろう。ファーに逃げることでDFの視界から消え、DFが視界にとらえた段階で一気にスピードアップして、空けていたスペースに飛び込んでボールを引き出す。ここまで中々思うようなプレーが出来ず、交代させられそうになっていた上田だが、お手本のようなワンプレーで結果を出した。

柏のショートカウンターの脅威

だが、先制もつかの間だった。2分後に、鹿島は下がって受けたエヴェラウドが捌こうとしたバックパスが江坂にカットされると、その江坂のクロスに飛び込んだ仲間が合わせて、鹿島は同点に追いつかれてしまう。

このシーンに限らず、エヴェラウドは何度か下がって受けて、展開をサポートしようとしていたが、彼の特徴を考えればそのタスクがあまり向いてないのも事実。この辺は早急にタスクを整理した方がいい。

同点になってからはお互いにオープンになって、ゴール前に迫る回数が増えていく。その中でチャンスを作っていたのは柏の方。柏は2トップがボランチを切りながらセンターバックへ、インサイドハーフがサイドバックにプレッシャーをかける形が明確になっており、高い位置からのショートカウンターで決定機を作り出していた。ここが決まっていたら、試合は柏のモノになっていただろうが、ここで決めきれず試合は終盤を迎えた。

獅子奮迅の白崎凌兵と永木亮太

79分、鹿島は4枚代えで勝負に出る。白崎凌兵、染野唯月、永木亮太、三竿健斗が投入され、システムは4-3-1-2に変わった。

79分~

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このシステム変更で鹿島は柏との嚙み合わせが上手くいくようになる。柏の3バックに対して2トップに加え、白崎と永木がサイドに応じてプレッシャーを掛けるようになり、鹿島のボール奪取の機能性が増すことになったからだ。守備では前に出てプレッシャーを掛けるだけでなく、いざとなれば自陣ゴール前で身体を張ることも求められるし、攻撃でも組み立てから相手ゴール前までの侵入など、白崎と永木のタスクは明らかにオーバーと思えるものだったが、残り時間が限られていたためにこの部分は割り切ってできたのだろう。

決勝ゴールもこの2人が関わっている。88分、ルーズボールを永戸が拾うと、左サイドに開いた永木に預け、左サイドに抜けていく。再びボールを受けると、マイナスにクロスを供給。これを走り込んできた白崎のダイレクトシュートがゴールに吸い込まれ、鹿島は土壇場で勝ち越しに成功した。

エヴェラウドと土居がゴール前に侵入したことで、DFがクロスへの対応に集中し、その結果空いたペナルティエリア手前のスペースを見事に白崎が活用した形となった。

このまま鹿島は逃げ切ってタイムアップ。2-1で勝利した鹿島はリーグ戦の連敗を3で止めた。

まとめ

劇的に内容が改善したとは言えないものの、何より連敗を止められたことが大きい。今節も紙一重の試合だったが、その中で結果として勝点3を得られたことは、チームとして状況を立て直していくうえで大きいはずだ。

今節を見る限り、スタイルを大きく変えることはなく、引き続きザーゴの志向するスタイルの中で微調整しながら戦っていくことになりそうだ。その中で機能性はまだまだと言わざるを得ないだけに、上手く勝点を拾いながらチームを上向かせていくしかないだろう。

次節は再び中3日での試合となる。昨季はダブルを食らった北海道コンサドーレ札幌にリベンジして、連勝で波に乗っていきたい。

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