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【それぞれの振る舞い】明治安田生命J1 第22節 柏レイソル-鹿島アントラーズ レビュー

戦前

鹿島アントラーズ

・現在7位

・前節は北海道コンサドーレ札幌に4-0で快勝

・天皇杯は栃木SCに3-0で勝利

・天皇杯から中3日で迎える

・五輪代表で上田綺世と町田浩樹が不在

柏レイソル

・現在16位

・前節は横浜F・マリノスに1-2で敗戦

・天皇杯では京都サンガF.C.に1-2で逆転負け

・天皇杯から中3日で迎える

スタメン

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鹿島は前節から3人変更

・永戸勝也が左サイドバックに復帰

・センターバックに林尚輝、2列目にファン・アラーノを起用

は前節から4人変更

・センターバックに上島拓巳、ボランチにドッジ、シャドーに戸嶋祥郎とクリスティアーノを起用

柏のゲームプラン

・守備時は5-4-1⇔5-2-3
・プレスはいけたらいくで、基本的には撤退守備
・エヴェラウドには上島が厳しく寄せて対応
・攻撃時はペドロ・ハウルとクリスティアーノをシンプルに活かす
・クリスティアーノは高い位置を取りつつ、右サイドに流れて2トップ化するような形に
・ボールを持ったら繋ぎにはこだわらず、基本的にはクリスティアーノを走らせるか、ペドロ・ハウルへのロングボールの2択
・理想は左の三丸拡のクロスから右で仕留める形
・繋ぐときは3バックからサイドに付けて、そこからサイドの裏を狙う

ロングボールの応酬

前線の助っ人たちを活かすために躊躇なくロングボールを蹴ってくる柏に対して、序盤の鹿島は相手を押し込むために同じくロングボールを活用。中盤を省略した蹴っ飛ばし合いになった。

鹿島がロングボールを蹴っ飛ばした先にいたのは左サイドに流れたエヴェラウド。彼のフィジカルを活かして押し込む算段だったのだろう。流れた先が左サイドだったのはエヴェラウドがそちらでのプレーを好むからで、相手のことを考えていたわけでは無さげ。エヴェラウドがサイドに流れると中央のターゲットは不在になるが、まずはとにかく相手を押し込んで、こちらの得点の可能性を上げつつ、相手をゴールから遠ざけるのが目的なので、それほど決定機が作れなくても気にしている様子はなかった。

こうして試合は徐々にボールを持って攻める鹿島と、守りながらもカウンターで一刺しを狙う柏という構図が明確になっていく。そんな中でゴールに近づけていたのはどちらかというと柏の方だった。柏の攻撃はシンプルながらも、クリスティアーノとペドロ・ハウルの個の力は強力そのもの。彼らだけの力でも十分攻撃を完結させられるため、攻めに出た鹿島の裏を突くカウンターはかなり効いていた。

変化をもたらす土居聖真とピトゥカ

ボールを持ったからには確実にゴールに迫って、得点を奪いたい鹿島。まず注力したのは確実にボールを前進させていくということ。ここで登場したのがトップ下の土居聖真。彼が降りてセンターバックからボールを引き出す動きを入れていくことで、鹿島は中央に縦パスを付けられるようになる。柏の1列目の守備がそれほどプレスを積極的に行わなかったこともあって、鹿島は安定して相手陣内にボールを運べるようになっていった。

ただ、相手陣内にボールを運んだところで、そこには柏の守備ブロックが待ち構えており、ここを崩せない限りゴールへの道は遠い。そこで登場したのがディエゴ・ピトゥカだ。前節まででもそうだったようにピトゥカはかなり自由に動き、ボールに絡んでいく。その中で今節多かったのは、ゴール前の高い位置まで上がっていく動き。パスを供給するだけでなく、自らも高い位置へと進出して、シュートチャンスを窺うシーンはよく見られていた。実際、鹿島が相手を崩そうとするチャレンジングなプレーはほとんどがピトゥカの縦パスやこうした攻め上がりだった。

2人の登場によって、柏のカウンターの脅威こそあれど、鹿島は徐々にゴールへと近づいていく。だが、そこまで決定機を多く作れたわけでもなく、無得点。スコアレスで前半を折り返した。

流れを失った交代策

ハーフタイムを挟んで迎えた後半に入る前に、先に鹿島が動く。レオ・シルバに代えて、三竿健斗を投入。システムを4-1-4-1に変更した。

後半開始時~

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この交代の狙いとしてはおそらくピトゥカを高い位置に上げたかったのだろう。先述したように前半からピトゥカは高い位置まで上がっていくことが多かったし、その動きがチャンスにも繋がっていた。ならば、あらかじめ高い位置まで上げて攻めに掛ける人数を増やして、柏の守備陣を崩してやろうと狙ったのである。

だが、この交代が結果的には裏目に出てしまった。まず問題だったのは組み立ての面だ。前半は犬飼智也と林のセンターバックコンビに土居やレオ・シルバが流動的に加わることで、柏の1トップ2シャドーに対して数的優位を作り出し、ボールを前進させることが出来ていた。だが、後半の形では犬飼と林、それに三竿の3枚で組み立てを行うようになるが、これだと柏の1トップ2シャドーと3対3で噛み合ってしまう。これによって、結果的に柏は鹿島の組み立てに対して、制限を掛けやすい状況になっていたのである。

さらに、守備面でもボランチを1枚削ったことで、中盤にはスペースが生まれやすくなっている。カウンターを狙う柏にとって、そのスペースは大好物。鹿島はいくらそのリスクを承知していたとはいえ、柏のカウンターの効果性を引き上げてしまうことになってしまったのだ。

先制点は柏がずっと狙っていたカウンターから生まれたものだった。柏はエヴェラウドへの縦パスを上島がカットすると、そこから戸嶋に繋ぎ、右サイドで抜け出したクリスティアーノへ。最後はクリスティアーノが豪快に右足でネットを揺らした。

鹿島は起点を作るはずだったエヴェラウドのところでボールを失ってしまったのが痛恨だったし、上記で触れたように前がかりになっていたことでより柏のカウンターをまともに食らいやすい状況となってしまっていた。また、その直前のプレーで林がペドロ・ハウルとの1対1の対応に苦慮していたことからか、犬飼がかなりペドロ・ハウルに寄ってしまい、結果的に右サイドで高い位置を取るクリスティアーノを完全にフリーにしてしまっていた。

ただ、もっと痛恨だったのはこの4分後に喫した2失点目だった。相手のコーナーキックを凌いだ後のゴールキックで沖悠哉はクイックリスタートを選択したが、キックを相手に当ててしまい、結果自陣でボールは柏に渡ってしまう。ここから柏の疑似カウンターが炸裂する。戸嶋から右サイドに流れたクリスティアーノにボールが渡ると、そこから内側を駆け上がってきた大南拓磨が引き出し、最後は大南のクロスをペドロ・ハウルが決めた。

この失点は守備陣が後手後手に回ってしまったのが原因だが、その原因を作り出したのは沖のキックであることは間違いない。ビハインドで焦る気持ちは分からなくはないが、まだ30分以上残して1点ビハインドならあのシーンであそこまで急ぐ必要はない。積極的な姿勢は評価されてもいいのかもしれないが、もう少し的確な判断を求めたいところである。

反撃に出るも

2点ビハインドという厳しい状況に追い込まれた鹿島。当然ここからは攻めるしかないの一択なのだが、柏は5-4-1で完全に守備ブロックを敷いて待ち構えるようになる。残りの30分はそれをどう崩すかの局面となっていった。

2失点目の直後は中々ボールを前進させられずに流れを失っていた鹿島だが、60分にキープ力のあるアルトゥール・カイキとボールを運べる和泉竜司を投入すると、徐々に巻き返し始める。サイドから2列目のアタッカーに縦パスを入れていくことで、相手を押し込みその先のカオスで得点を狙うようになっていったのだ。

だが、どうしても最後は人数を掛けて守る柏を崩し切るだけのパワーは持っておらず。89分にセットプレーの流れから、永戸のクロスを犬飼が合わせて1点を返したものの、反撃はそれが精いっぱい。追いつくまでには至らず、タイムアップの笛を聞くこととなった。

1-2で敗れた鹿島は相馬直樹監督就任後リーグ戦3敗目。初めて下位の相手に黒星を喫することとなった。

まとめ

相手のやりたい形にまんまとハマってしまった。一番警戒していたであろう形で相手に先行を許し、試合を苦しくしてしまうのはおよそ賢いチームのやることではない。厳しい敗戦と言えるだろう。

ハーフタイムの交代策が裏目に出たのも、三竿が思ったよりも繋ぎのテンポを上げる部分で貢献できなかったのも痛手だが、これまで勝っていた試合でも序盤や最初のチャンス、セットプレーなどで決めきることが出来ていなければ、今節のような試合になっていた可能性は十分あるし、逆に今節も最初のセットプレーで得点を奪えていれば、全く違った試合になっていたはずだ。

今の鹿島はサイコロを振り続けて当たりが出るのを待っている、とよく自分は思っているが、それは上記みたいな現象が試合でずっと続いているからだ。今節は結果として当たりが出なかった訳であるが、その原因をどこに求めていくのか。サイコロを別のものに変えればいいのか、サイコロの振り方を変えてみればいいのか、そもそもサイコロを振るという行為をやめればいいのか。このあたりの振る舞いが今後の鹿島の行く末を占っている。

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