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【たりないかしま】明治安田生命J1 第7節 浦和レッズ-鹿島アントラーズ レビュー

戦前

ルヴァンカップではアビスパ福岡に5-1と大勝し、公式戦の連敗を止めた鹿島アントラーズ。2週間ぶりのリーグ戦となる今節はアウェイでの試合となる。

鹿島を迎え撃つのは13位浦和レッズ。今季から徳島ヴォルティスをJ1昇格に導いたリカルド・ロドリゲス監督を招聘して新たなスタイル構築に取り組んでいるが、リーグ戦では川崎フロンターレに0-5の大敗、ルヴァンカップでも柏レイソルに0-1で敗れており、公式戦連敗中の状態で今節を迎えた。

スタメン

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鹿島は名古屋グランパス戦から5人変更。犬飼智也が出場停止のセンターバックに関川郁万が入り、サイドバックは永戸勝也とリーグ戦初先発となる常本佳吾のコンビに。2列目に白崎凌兵、前線には上田綺世が入った。

浦和は川崎F戦から5人変更。右サイドバックに浦和でのリーグ戦デビューとなる西大伍、中盤に柴戸海、新加入の明本考浩、今季リーグ戦初先発の武田英寿が入り、前線には武藤雄樹が起用された。

タスクオーバーを狙う浦和のボール保持

試合は立ち上がりから浦和のボール保持のターンが続いていく。浦和がポゼッション色の強いスタイルを導入していることから、浦和がボールを持ち、鹿島がそれを受ける展開になるのはある程度予想できた展開だった。

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浦和のポゼッションはとにかく数的優位を作って、鹿島をタスクオーバーに追い込むように設計されている。最終ラインでは柴戸が降りて鹿島の2トップに3対2の構造を作り出す。そこからボールを前進させると、狙っていたのは鹿島のボランチの脇のスペース。ここに縦パスを入れて、鹿島の選手が食いついてくればその食いついた裏を狙えばいいし、食いついてこなければフリーの状態で前を向いて攻撃を仕掛けられる。

ということで、浦和はここに人材をどんどん送り込んでいく。ポジションチェンジを積極的に行っていたため、入ってくるのは武田や小泉佳穂だけでなく、武藤も明本も関根貴大も入っていたが、その時に入っていない選手は相手の最終ラインを下げさせるべく必ず裏を狙う動き出しが求められており、立ち位置によるタスクが明確化されていた。

この浦和のボール保持に鹿島はまんまとハメられてしまう格好になった。高い位置でボールを奪うべく、前線からのプレッシングを積極的に行っていくが、2トップは浦和のボール前進を制限できずに縦パスを通され、ボランチ脇に入った縦パスを潰し切れずに、中途半端に寄せては逆サイドのフリーの選手を使われて一気に運ばれる。そうしたシーンを何度も作られてしまった。

今節の鹿島はリスクを冒してでもボールを奪いにいきたいのか、撤退と圧縮で相手の自由を奪いながらはね返していきたいのか、この辺がとにかく中途半端だった。問題なのは各々の距離感。プレッシングをかけるにしては遠すぎるし、ピッチ全体をカバーするには近すぎる。チームとしてはボールを奪いにいきたいという意図は感じられるが、ピッチ上ではそうしたいとは思えないような位置取りだった。

繋ぐのか、蹴るのか

鹿島は20分過ぎ頃からようやく反撃を開始する。起点となったのはエヴェラウドと上田へのロングボール。彼らのパワーを活かして徐々に浦和を押し込んでいくと、プレッシングも浦和の最終ラインに対しての圧力を強めることで徐々に機能性を増していく。ボール保持の時間が増えてきた鹿島はセットプレーを中心にチャンスを窺えるようになっていった。

だが、今節の鹿島はボール保持の局面でも中途半端さが目立っていた。前線の4人は押し込むきっかけとなったロングボールを待ち受ける姿勢を取る。2列目の荒木遼太郎や白崎はエヴェラウドと上田が競ったこぼれ球を拾うポジショニングを取っていたのだ。しかし、後ろはパスを組み立てて崩していこうという姿勢を見せる。こうなるとどうなるか。押し込むべく張っている前線と徐々に押し上げようとする後ろの間で間延びし始め、ここでも距離感が遠くなってしまうのだ。

距離感の広がった鹿島を浦和は逃さない。積極的にプレッシングを仕掛けて、鹿島のボール保持から自由を奪っていく。鹿島は縦パスを通そうにも受け手がおらず、結果として中途半端に蹴っては相手に回収されて、流れを失っていった。ザーゴ監督が試合後のコメントで述べていた部分は、おそらくこうした前線と最終ラインの意識の乖離から生まれた現象であろう。

"ただ、僕が目指しているのはボールを握りながらゲームをコントロールすること、怖がらず顔を動かして勇気を持ってボールをつなぐというところを求めている。今まではそれができていたが、今日はそれが初めてできなかった。逃げているのか隠れているのか、どういう理由なのか分からないですが、初めて自分たちが何もしようとしなかった。"
https://www.jleague.jp/match/j1/2021/040307/live#coach

緩すぎるプレッシング

試合が動いたのは37分だった。浦和は左サイドに開いた小泉がボールを受けると、サイドチェンジでフリーの西へ。西はドリブルで運び、裏へスルーパス。これに左サイドで抜け出した明本が受けると、そのまま1対1を制してゴール。自分たちの時間帯になってきたところで浦和が先制に成功した。

このシーン、鹿島にとって一番問題なのは小泉への対応だ。小泉がボールを受けた時、左サイドでは3対3の関係が作られていたし、チームとしては奪いどころに出来るはずだった。しかし、サイドにいた三竿健斗も白崎も常本も中途半端な寄せでボールを奪うどころか、相手に自由にプレーする時間を与えてしまっている。

小泉がサイドチェンジを行った段階で鹿島はサイドに寄せられており、逆サイドの西はフリーでボールを受けられる状況が整っている。西が受けた段階で鹿島は後手に回っており、後は芋づる式に崩されてしまった。プレッシングの強度が生命線のチームとしてはあまりに寄せが緩く、相手のプレーを何も制限できていなかった。

だが、リードを許した鹿島は前半のアディショナルタイムに追いつく。相手陣内でのセットプレーのルーズボールに反応した関川のヘッドがループ気味でゴールに吸い込まれた。ポジショニングの修正ができずボールの軌道を見誤った西川周作の判断ミスではあるのだが、鹿島としてはこれでイーブンにできたのは大きく、前半は1-1で折り返した。

稚拙なプレー判断

後半の立ち上がり、鹿島は再びロングボールから押し込んでいく。前半からの変化はエヴェラウドが積極的に左サイドに流れるようになったこと。西が高い位置取るならその裏使おう!中央には白崎がいる!ということで、前半の半ばごろと同じようにセットプレーからチャンスを窺っていった。

ただ、鹿島はワンプレーで流れを失ってしまう。自分たちのゴールキックだったが、沖悠哉の蹴ったボールはあっさり浦和に回収されると、そこから中央の武藤に繋がれ、武藤のスルーパスに明本が抜け出す。これを常本がエリア内で倒してしまい、PK献上。これを槙野智章に決められ、鹿島は再び勝ち越しを許してしまった。

このシーン、いただけなかったのはゴールキックの際のプレー選択と盤面の配置だ。鹿島はゴールキックで後ろから組み立てていこうと、ピッチを広く使った位置取りを各々が取っている。だが、この直前に選手交代が行われ時間もあったことから、浦和もそれに対する用意が出来ている。ならばと、沖はロングボールを選択したわけだが、組み立てるためのポジショニングを取っている鹿島はセカンドボールを拾う用意が出来ていない。そこで浦和にボールをカットされると、間延びしたままの鹿島は浦和に自由に使えるスペースを与えた状態で攻撃を受ける状態になる。そこを見事に武藤に使われてしまったわけだ。組み立てをするなら相手の状況が整っていても貫き通さなければならないし、ロングボールを選択するなら時間をかけて態勢を整えてからでも蹴るべきだったでのではないだろうか。

再び追う展開となった鹿島だが、攻撃の意思は最後まで統一されることはなかった。前線は早くロングボールを放り込むのを待っているのに対し、後ろは繋いで崩そうとする。その意思が合わないところを浦和に狙われ、広大なスペースを突かれてカウンターを食らってしまう。交代枠を使って攻勢に出たかった鹿島だったが、結果として自分たちが追いつくチャンスよりも、浦和がカウンターでトドメを刺せる可能性の方が高かった。

結局、鹿島は最後までビハインドをはね返せずに試合終了。1-2で敗れた鹿島はリーグ戦3連敗となった。

まとめ

チームとしての完成度の差を見せつけられる結果となってしまった。鹿島は攻守ともに中途半端な状態を続け、浦和に自由を与えてしまった。チームとして統一したプレー意思が感じられず、各々の奔走が徒労に終わってしまっているのは、非常によろしくない状況だ。

ここはある程度振り切った戦いを選択すべきだと思う。プレッシングでも撤退でもポゼッションでもロングボールでも、どこかに振り切ってそのプレーに集中させて、タスクをシンプルにさせてあげたい。現状のままでは相手の嫌がることも出来ずに、何でもやろうとして何も出来ていない虚無の状態になってしまっている。

今季は昨季と違い降格がある。一刻も早く安全圏に浮上出来ないと、このまま泥沼にハマる可能性も高い。早急な立て直しが必須だ。

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