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【自信と過信】明治安田生命J1 第29節 鹿島アントラーズ-柏レイソル レビュー

戦前

前節はアウェイでベガルタ仙台に3-1と快勝した鹿島アントラーズ。今節から残り4試合は全てホームゲームとなる。中3日で迎えるホーム4連戦初戦の相手は10位柏レイソルだ。

柏は11月上旬から活動を停止していたが、前節からリーグ戦を再開。その初戦となったサガン鳥栖戦は終盤にオルンガのゴールで1点を返すも、1-2で敗戦。今節はそこから中3日の再開2戦目となる。

なお、両者は第13節で対戦。柏は前半のうちにケガ人や退場者を出す苦しい展開だったが、オルンガの2ゴールで2度先行。しかし、鹿島も終盤反撃して土居聖真の2ゴールで試合を土壇場でひっくり返し、3-2で鹿島の勝利に終わっている。

前回対戦時のレビュー

スタメン

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鹿島は前節から2人変更。右サイドバックに小泉慶が入り、中盤には三竿健斗が出場停止から復帰した。

柏は前節から2人変更。ヒシャルジソンと瀬川祐輔がスタメンで起用された。

変えない鹿島、変えた柏。変化をつける古賀太陽

この試合の注目ポイントの一つだったのが、ここ2試合4-3-1-2を採用して機能している鹿島が、違う布陣を採用する相手と対戦した時にどのように振る舞い、どこまで機能性を保てるのかという点である。

ここ2試合対戦していた川崎Fも仙台も共に4-3-3を採用するチームであったため、2トップで相手のセンターバックを監視して、アンカーをトップ下に入る土居が見るという、ある種分かりやすい構図が出来上がっていたが、その前提が変わった時に相手に合わせて微調整していくのか、そもそも形を変えるのか、そのあたりが鹿島にとっては一つの決断のしどころであった。

結論から行くと、鹿島は前節までの流れを継続する形で入った。布陣は4-3-1-2のまま、エヴェラウドが大南拓磨、上田綺世が山下達也を見て、土居はヒシャルジソンを塞ぎに行く形を取って、引き続き高い位置でのボール奪取を狙っていた。

これに対して、柏は普段採用する4バックから今節は3バックに形を変えて入った。まず、ここが鹿島にとっては予想外だったはずだ。柏としてはまず守備を5人で固めることで鹿島のパワーあるアタッカー陣に対応しつつ、前線のオルンガ、クリスティアーノ、江坂任の独力で攻撃を完結させられる3人に攻撃を託すというプランだったのだろう。

さらに、柏が3バックを選択した理由としてもう一つ大きかったのが組み立ての部分だ。鹿島の2トップに対し、柏は3バックで数的優位を作ることが出来る。この数的優位を活かして、柏は鹿島のプレッシャーを剥がしてボールを前進させていた。鹿島としては、普段なら2トップに加え、2トップに近い土居が加わることで相手の数的優位を阻止していたが、今節の土居のタスクはヒシャルジソンを封じること。センターバックへのプレスに加勢できる状況ではなく、鹿島は3ボランチのヘルプが来ない限り、数的不利の状態を解決できない状況に陥っていた。

このシチュエーションを活かしたのが、柏の左センターバックに入った古賀太陽だ。両足遜色なく使うことが出来、パス精度も高いものを持つ彼を起点にして柏の組み立ては行われていた。鹿島は古賀のところにプレッシャーを掛けたかったところだが、元々古賀のマークを担当する選手がおらず、ファン・アラーノがプレッシャーを掛けていったが、彼は元々のボランチの三原雅俊のケアを担当しており、その中で古賀にもプレッシャーを掛けに行かなければいけないという明らかにタスクオーバーの状況に陥っていた。

こうして、高い位置で思ったほどにボールを奪えない鹿島と、守備を固めながら数的優位を活かしてボールを前進させていく柏、という構図で試合は進んでいき、ペースとしては五分から柏寄りになっていた。

そうした中で、柏は26分にセットプレーのサインプレーから先制する。鹿島としては完全に枠外に外れたボールがレオ・シルバに当たってゴールに入ってしまうアンラッキーなものだったが、柏としては北爪健吾がシュートを放つ際に鹿島の選手が誰もアプローチに来なかったことを考えれば、狙い通りとも言うべき得点だったのだろう。

力業で押し込む鹿島

先制後、柏が重心を後ろに下げて守りを意識するようになったことで、ペースは徐々に鹿島へと移っていく。ここからの鹿島は柏の守備をいかに崩していくかということに意識が傾いていった。

鹿島の攻撃で一番効果的だったのはやはりエヴェラウドと上田による力業だった。多少ラフでも2人のところに放り込めば競り勝ってチャンスに繋げられる、このことが柏をジリジリと押し込んでいった。

後半開始時

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後半開始時に鹿島はボックス型の4-4-2に変更。これで攻守のバランスを整え、より柏を押し込もうとした。

同点に追いついたのは56分だった。左サイドからレオ・シルバがシュート性のクロスを入れ、キム・スンギュが弾いたところをアラーノが折り返す。これがキム・スンギュの手を弾いて、ゴールイン。雨でスリッピーなピッチコンディションも考え、よりゴールの可能性の高いボールの質をチョイスしたレオ・シルバの判断力が光るゴールだった。

同点に追いついて勢いづいた鹿島は更に攻勢を強めていく。62分には3枚代えを敢行し、伊藤翔、遠藤康、広瀬陸斗を投入。サイドからも質の高いボールを供給できる面々を揃え、柏ゴールに迫ろうとしていた。

試合を決めた柏攻撃陣のクオリティ

だが、柏は虎視眈々とワンチャンスを狙い、それを見事に活かしきった。75分、キーパーからのロングキックに江坂が競り勝つと、こぼれ球を拾ったオルンガがチェックに来た三竿も犬飼智也も剥がしてゴールに突き刺し、柏が再び勝ち越しに成功した。

このシーン、奈良竜樹が江坂に競り負けたことや、そもそも前がかりで守備陣の数が少なかったことが失点の要因に挙げられそうだが、鹿島としては前節以前はこうしたシーンで守り切れていたこともあるので、特段このシーンのリスクマネジメントが出来ていなかったとは言い難い。むしろ、鹿島の守備陣のクオリティを柏の攻撃陣が上回っていたという相手を褒めるべきものだとも言えるだろう。

これで鹿島はさらに前がかりになって攻めに出ざるを得なくなった。柏としてはそこを確実にカウンターで突いていけばいい。3点目も4点目もクリアからのロングカウンターという点では、2点目と全く同じ形だった。数的同数や数的優位のカウンターなら確実に決めきる、という柏攻撃陣の質の高さを見せつけられるようなゴールシーンだった。

結局、試合は1-4で終了。鹿島は今季ワースト失点での大敗。上位戦線において痛恨の黒星となってしまった。

まとめ

2失点目以降については鹿島の守備陣がすぐにどうこうできる問題というよりは、柏の攻撃をモロに受けてしまった結果であり、そこまで悲観することはないだろう。1-4の大敗と聞くとショックも大きいが、個人的には勝ち越しを許した時点でこうなる可能性は常にあると思うだけに、やはり2点目を決めきってきたオルンガの質の高さに舌を巻くしかない。彼のようなストライカーが他クラブにはいないのが幸運と思うくらいだ。

それよりももったいなかったのは前半の戦いぶりである。前節の勢いを継続したかったのもあるかもしれないが、前半の鹿島はあまりにも惰性的に試合に入ってしまっていた。前線からの強度を強めていることや連戦ということを考えれば、あそこでなんとなく上手くいかない時間を過ごして体力を浪費する展開は勝点3を掴みにいくならば、避けねばならぬ展開だった。

試合前の準備という勝つためには絶対不可欠な要素が今節の鹿島には不足していた、そう言わざるを得ないのが今節の戦いぶりだった。

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