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【似たもの同士だけど】明治安田生命J1 第25節 ヴィッセル神戸-鹿島アントラーズ レビュー

戦前

鹿島アントラーズ

・現在3位

・前節は徳島ヴォルティスに3-0で勝利

・ミッドウィークの天皇杯はV・ファーレン長崎に3-1で逆転勝ち

・長崎戦から中2日で迎える

ヴィッセル神戸

・現在5位

・前節のサンフレッチェ広島戦は悪天候のため中止に

・ミッドウィークの天皇杯は終盤の失点で、名古屋グランパスに0-1の敗戦

・名古屋戦から中2日で迎える

スタメン

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鹿島は前節から1人変更

・ボランチにディエゴ・ピトゥカが入る

神戸は前節から2人変更

・セルジ・サンペールが出場停止で、最終ラインに小林友希を起用して3バックに

・前線に佐々木大樹を起用

・新加入の武藤嘉紀が初のベンチ入り

狙いを持って押し込む鹿島

最初のプレーでロングボールからコーナーキックを得たように、立ち上がり主導権を握ったのは鹿島の方だった。

鹿島が狙っていたのは神戸のアンカーである山口蛍の脇のスペース。ここに2列目の選手やボランチが入り込んで起点を作り、神戸の3バックと直接勝負できるような環境に持っていく。そうすれば、ドリブルで剥がしても、センターバックが出てきたところの裏を突いても、すぐにシュートチャンスまで持っていけるからだ。

また、今節の鹿島はラインを高く保って、陣形をコンパクトに。この状態で前線からプレスを仕掛けていくことによって、神戸に中盤で繋がせるスペースを与えず、またロングボールを2トップ目がけて蹴ってきた場合には、センターバックがしっかりマンツーマンでついてはね返すことを徹底。神戸を自陣に釘付けにしたまま、押し込んでいこうとしていた。

この流れから迎えたのが、17分の荒木遼太郎と20分にエヴェラウドが迎えた決定機。荒木のシュートは相手のロングボールを高い位置で回収したところからであり、エヴェラウドのシュートは山口をサイドに引きずり出して中央にスペースを生み出し、そこにピトゥカが侵入してきたところからチャンスが生まれている。鹿島としてはここで先制点を奪っておければかなりラクに試合を進められたのだが、神戸の好守に阻まれ、得点を奪うことは出来なかった。

布陣変更で巻き返す神戸

前半飲水タイム明け~

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押され気味の神戸だったが、飲水タイム明け頃から徐々に巻き返し始める。その理由として大きいのが布陣変更だろう。立ち上がりから山口の脇のスペースを埋めるため下がり気味に位置取っていた郷家友太をボランチの位置にまで下げて、3-3-2-2から3-4-1-2に変更。2ボランチに変えて中盤中央のスペースを埋めにかかったのである。

これで鹿島は狙っていた中央のスペースを消されてしまい、有力な攻め筋を一つ失ってしまうことに。サイドからボールは前進できるものの、中央には神戸の3バックが待ち構えており、単純なクロスは簡単にはね返されてしまう状況になってしまった。

守備が安定してきた神戸は徐々にボール保持の色を強めていく。サンペールが出場停止なこともあってそこまでボールを繋ぐことにこだわりは見せていなかった今節の神戸。2トップに簡単に蹴ることも多かったが、前線は鹿島のセンターバックにきっちりマークされており中々起点を作ることが出来ずにいた。

そこで登場するのが左サイドに流れてくるアンドレス・イニエスタ。鹿島は右サイドハーフの土居聖真を3バックのケアへと押し出し、神戸の左ウイングバックである初瀬亮には右サイドバックの常本佳吾がつくようになっていた。そこにサイドに流れたイニエスタが出てくると、イニエスタ&初瀬 VS 常本という2対1の構図が出来上がる。ここの数的優位を活かして神戸はボールを前進させ、常本の裏のスペースにボールを流して対応に出てきた犬飼智也を引きずり出して、中央を手薄にさせようとするのが狙いだった。

後半の両者の出方

後半開始時~

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神戸が巻き返しつつも前半をスコアレスで折り返すと、ハーフタイムで神戸が動く。移籍後初出場となる武藤をピッチに。布陣も3-3-2-2へと戻してきた。

布陣を戻したのには、鹿島のセンターバックをサイドに引きずり出して、手薄になった中央を中盤から駆け上がってきた選手で突く、という明確な狙いがあったからだろう。アンカーに配球に長けた郷家を回し、上下動が出来る山口をインサイドに置いたのもその狙いを実行にするのに合わせてのものだ。

一方の鹿島は後半になるとサイド攻撃の色を鮮明にしていく。中央は神戸にスペースを消されてしまうため、ならばサイドからボールを運んでクロスを入れていき、そこで仮にはね返されてもセカンドボールを回収していくことで、相手を押し込んでいきより事故の生まれやすい状況を作り出したいという目論見があったのだろう。鹿島は54分という比較的早い時間で安西幸輝と上田綺世を投入するが、これはもちろん連戦の中でのプレータイムを考慮したのもあるだろうが、特に安西の投入はサイド攻撃により迫力を生み出すという意味合いもあったはずだ。

また事故を引き起こすために、後半立ち上がりの鹿島はもう一度プレスの色を強めてもいた。それで作り出したのが58分に和泉竜司が迎えた決定機。前からのプレスでインターセプトに成功した鹿島は永戸勝也の縦パスから、荒木、ピトゥカと繋いで、ピトゥカのスルーパスに抜け出した和泉がキーパーと1対1の局面を迎えたが、決められず。ここで決めていれば狙い通りとも言えただけに、悔やまれる場面である。

狙われた失点シーン

60分~

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再び押し込まれつつあった神戸は60分に中坂勇哉を投入すると、このタイミングで3度目の布陣変更。2ボランチに戻して、武藤はボールを持つと右サイドに流れるように。右サイドの酒井高徳が低めの位置を取る一方で、左サイドの中坂は高い位置を取り、変則的な3バックとも4バックとも言える布陣を取り、守備の安定性を担保しつつ、サイドの裏を狙うということを明確にしたスタイルを採った。

そんな神戸の狙いが実ったのは79分。神戸は左サイドでボールを回す神戸は中坂が裏に蹴り込むと、そこに右サイドから走り込んできた武藤が抜け出し起点を作る。武藤のクロスにニアでドウグラスが潰れると、最後に押し込んだのは駆け上がってきた山口。神戸はずっと狙っていたサイドの裏を突いてセンターバックを引きずり出し、手薄になった中央を突く形で得点に結びつけた。

鹿島は中坂からパスが出た段階で犬飼が前に引きずり出され、武藤に町田浩樹が付いていって対応したため、クロスが上がった段階ではゴール前にセンターバックがいない状況を作り出されてしまっていた。この状況になると、ゴール前の強度はかなり落ちてしまうため、その前に引きずり出されたセンターバックがそこで止めるほかはない。また、そもそも強度が上がらない中でプレスに行ってあっさりと剥がされたことが問題だ。プレスに行ったはいいが相手の選択肢を制限できていないため、プレスに合わせて高いライン設定を敷いた後ろがそのツケを払う羽目になってしまっている。プレスの連動性によってハマるハマらないがあるのは仕方のない部分ではあるのだが、その差があまりにも大きすぎるのは今の鹿島が抱える問題点の一つだ。

結局、この1点は試合を決めるのには大きいものだった。神戸はこの後山川哲史を投入して、最終ラインにセンターバック4人を並べる4バックにシフト。守備を固めつつ鹿島の反撃を凌ぎ切って、タイムアップ。鹿島は連勝が3でストップ。アウェイ神戸戦では12年ぶりの敗戦を喫した。

まとめ

端的に言えば、鹿島が決めるべきところで決められず、逆に神戸に一発で失点を許してしまったが故の敗戦と言えるだろう。たしかにその部分は少なくないが、しかし内容面で見ても鹿島が勝点3を確実に拾える試合だったかと聞かれると、そこに疑問符は付く。鹿島も狙いは持っていたし、その狙いを形として作り出していたが、よりそれを明確に行っていたのは神戸の方であると思われるからだ。

決定機はあった。だが、それらは単発のものがほとんどで、再現性を持ってゴール前に侵入できたケースは多くない。そうしたチャンスを作り出せずに、唐突に巡ってきたチャンスだけで神戸のような上位チームに勝てるほど、甘いものではない。お互いに明確なスタイルを持つというよりかは、いる選手の特長に合わせたサッカーをする色が強い両者だが、より狙いを持って試合に入っていたのは神戸であり、その神戸が勝点3を手にしたのはある種当然とも言えるだろう。

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