見出し画像

【塩漬けの末路】明治安田生命J1 第6節 鹿島アントラーズ-名古屋グランパス レビュー

戦前

前節は昇格組のアビスパ福岡に敗れ、早くもシーズン2敗目を喫した鹿島アントラーズ。おまけにこの試合で土居聖真と和泉竜司が負傷離脱と、厳しい状況が続く中、今節は中3日で迎えるホームゲームだ。

対戦相手は名古屋グランパス。今季はここまで5連勝と絶好調。前節も横浜FCを相手に前半こそ攻めあぐねたものの、後半は前田直輝のゴールを皮切りに3-0と快勝。首位川崎フロンターレと共に上位戦線をひた走っている。鹿島としては優勝戦線に食らいつくためには、何としても引きずり降ろさなければならない対戦相手となる。

スタメン

画像1

鹿島は前節から6人変更。関川郁万が出場停止のセンターバックに犬飼智也が戻り、サイドバックは小泉慶と杉岡大暉のセットに。ボランチにレオ・シルバ、2列目にファン・アラーノが入り、松村優太がリーグ戦初スタメンを飾っている。

名古屋は前節から2人変更。右サイドにマテウス、前線に山﨑凌吾が起用された。

いかに崩すのか

名古屋の特長は堅い守備にある。4-4のブロックを形成し、その状態から前に圧力を掛けていく。ボランチには米本拓司と稲垣祥という広範囲に動けてボールの奪える選手が揃っており、センターバックも人に強い。彼らのところでボールを奪えるように誘導させるか、失点の危険性の低い外からの攻撃に限定させるかが、名古屋の主な守り方だ。

当然、鹿島としてはその守備をいかに崩すかというところに今節はフォーカスしなくてはならない。鹿島が今節採った方法としては3つあるのだが、そもそも今節の鹿島の攻撃陣の強みが中央での連係による崩しにあることに触れておきたい。ファン・アラーノがトップ下でエヴェラウドの周辺を自由に動き、そこに中央でのプレーを得意とする荒木遼太郎が加わり、中央に入り込むことも縦に仕掛けることも出来る松村もいる。彼ら4人がペナルティエリア手前の中央でボールが持てる状態を、今節の鹿島はなるべく多く作り出したい目論見だった。

三つの崩しの方法

崩しの方法の一つ目はエヴェラウドへのロングボールだ。これは特に立ち上がりに多用していた。前線で質的優位を得られる彼のところに当てて、そこから押し込んでいく。名古屋のセンターバック陣も簡単には競り負けないため成功率としてはあまり高くなかったが、リスクを嫌った序盤の攻撃としては妥当な選択だろう。

二つ目は左サイドの杉岡を使う方法だ。今節の鹿島は、右サイドの崩しは松村、左サイドの崩しは杉岡に託されていた。杉岡が高い位置を取って、彼のところにロングボールを届けて、そこからはパワーと高さを活かして切り崩す。このところ、左サイドはエヴェラウドが流れることが多かったが、ザーゴ監督としてはそこで中央にターゲットがいなくなる状況を好ましく思っていなかったようで、今節はサイドに杉岡を入れることで彼に起点を作らせて、エヴェラウドを中央に留まらせたかったのだと思われる。

ザーゴの試合後コメント

唯一、エヴェラウドに僕自身も言い続けていましたが、もうちょっとボックス内にいてほしいというところで、ちょっとサイドに流れることが多いというのが良くなかったところであり、改善しなければいけない部分でした。
https://www.jleague.jp/match/j1/2021/032108/live#coach

ただ、問題だったのはチーム全体としてそこまで杉岡を使おうという意識がなかったことだ。ザーゴもしきりに杉岡に出せ!と要求していたが、それに応えるようなパスは限られていた。杉岡のところで起点が作ることが出来れば、対面するマテウスは杉岡の対応のため下がらざるを得なくなる。強力なアタッカーを守備に回せば、カウンターの脅威を削ることも出来ただけに、鹿島としてはもったいない部分だった。

三つめはレオ・シルバの個での打開だ。名古屋の守備は中央への縦パスに対してはボランチの稲垣と米本が積極的に出ていってインターセプトを狙ってくる。彼らの特長を活かした守り方であるが、逆に言えば彼らがカバーするエリアも広く、依存度も必然的に高い。彼らを上回ることが出来ればチャンスになる、ということで鹿島はボランチの周りに人を送り込んで、稲垣と米本をタスクオーバーに追い込もうとしていた。そこで輝くのがコンディションの上がってきたレオ・シルバだ。今節のレオ・シルバは中盤での剥がしに組み立ての中心と、八面六臂の動きっぷりだった。

組み立てを助ける山﨑凌吾とマテウス

一方の名古屋である。名古屋は元々風間八宏前監督が率いていた影響もあり、組み立てのスキルも高く、そうした面でのミスも少ない。だが、マッシモ・フィッカデンティ監督になってからは意地でも繋ぐ!というこだわりはほとんどない。鹿島が態勢を整えてプレッシングを仕掛けてきた時は、迷わずロングボールを選択していた。

今節の名古屋はそのロングボールの出口が優秀だった。特に最前線で身体を張っていた山﨑と、右サイドでボールを引き出していたマテウスの2人を鹿島の守備陣は最後まで掴み切れていなかった。名古屋としては基本的に撤退守備からカウンターを狙っていたが、カウンターの狙えない時や自分たちがボールを保持していた時にはマテウスや山﨑を受け手として有効活用することでボールの前進を試みていた。

とはいえ、名古屋もそこから鹿島の守備を崩しきるには至らず、チャンスはカウンターが主であった。逆に、鹿島も名古屋の堅い守備を攻めあぐねてはいたが、ボールを上手く保持した状態で攻め込めてはいたため、カウンターを食らうリスクは低く、ピンチもあまり作られない。試合は膠着という言葉そのもののような展開で進んでいった。

心配な三竿健斗

試合は59分に名古屋が先制する。左サイドのコーナーキックがはね返されたところを稲垣がミドルで突き刺した。稲垣は今季ミドルシュートだけで早くも3得点目。鹿島としてはワンチャンスで先制を許してしまった。

もったいなかったのはそのコーナーキックを与えるきっかけになったプレーだ。その前から名古屋のセットプレーで自陣での守備を強いられていた鹿島だが、そこでボールを奪いロングカウンターのチャンスが到来する。ただ、そこで三竿健斗から松村に通したパスは吉田豊に奪われてしまい、結局そこから名古屋に逆カウンターを食らう結果となり、失点に繋がるコーナーキックを与えてしまったのだ。

ザーゴの試合後コメント

こぼれ球を拾った選手が決めたところはありますが、ただそのCKになった過程が非常に問題だった。特にチームとして改善しないといけないのは守から攻になったトランジションのところですぐにボールを失ってしまう。パスミスがある。そこが今日の試合でも出てしまい、そういう状況を与えてしまいました。
https://www.jleague.jp/match/j1/2021/032108/live#coach

ここでもパスがズレた三竿の今節のパフォーマンスは正直非常によろしくなかった。先述したように崩しの部分でレオ・シルバがかなり効果的だったのに比べて、三竿は組み立てにおいてもふらついていて絡む場面は限られていたし、せっかくボールを持ってチャンスを作り出そうとしてもそれがパスミスになるシーンが非常に多かった。チャレンジした結果にしても看過しがたい部分が多く、途中交代を命じられるのも仕方ないと言えるだろう。

怒涛の拙攻

ただ、先制されたとはいえ時間はまだ30分以上残されていた。ザーゴも展開を変えるべく動く。68分に4枚代えを敢行した。それに対して、フィッカデンティも動く。山﨑に代えて木本恭生をアンカーに投入。布陣も4-1-4-1に変更した。

68分~

画像2

結果、交代がハマったのは名古屋の方だった。木本が入ることで中央の人数が増え、米本と稲垣がタスクオーバーになることを防ぎ、鹿島の攻撃をサイドからに限定させた。木本は高さもあるため、センターバックと合わせてはね返し要員も担保できる。1点先制すれば今日は十分だと割り切ったフィッカデンティの采配が見事に的中した。

対して、4-3-1-2に布陣を変えた鹿島は交代からの20分強終始拙攻だった。サイドで優位性を作れるわけでもなく、中央に入った遠藤康は名古屋の布陣変更によって窒息状態に陥っており、せっかくのエヴェラウドと上田綺世の2トップにほとんどボールが入らなかった。おそらく、名古屋の布陣変更が想定よりも早く、相手の対応に上回られてしまった部分が大きいのだろうが、それにしても詰まった状態のまま攻撃を繰り出そうとする鹿島はあまりに拙いとしか言いようがなかった。

手こずる鹿島を尻目に、名古屋はボールを奪うとマテウス、柿谷曜一朗、途中出場の齋藤学を活かしたカウンターに移行。彼らであわよくばの2点目を狙いつつ、鹿島の攻撃時間を着実に削っていった。そして、82分にはそのカウンター対応に当たっていた中で、柿谷に入れ替わられかけた犬飼がホールディングでこの日2枚目のイエローカードで退場。ここで試合は決まってしまい、あとは名古屋にしっかりと試合を締められてしまった。

0-1で完封負けを喫した鹿島は2連敗。名古屋は対照的に6連勝となった。

まとめ

厳しい敗戦だ。開幕5試合で積み上げた勝点はわずかに4。名古屋や川崎Fが順調すぎるくらい勝点を積み上げているため、上位陣とは早くも大差をつけられてしまっている。6ポイントゲームとも言える今節を落としたのは痛恨以外の何物でもないだろう。

チームとしてもかなり底に近い状態だ。各々がどうにかしようともがいてはいるものの、統一性がなく効果的な動きは少ない。このままだと助っ人たちのコンディションが上がってくるのと新外国人の来日でブーストが掛からないと、現状の打破は難しくなってしまっている。

幸か不幸か、ルヴァンカップこそあるもののここから代表ウィークで日程は空くことになる。ここで現状を整理できないと、今後も厳しい戦いは続くことになるはずだ。

ハイライト動画

公式記録

リンク


ここから先は

0字

¥ 200

遠征費とスタグル代に充てるので、恵んでください