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【相手を見続ける】明治安田生命J1 第30節 セレッソ大阪-鹿島アントラーズ レビュー

戦前

鹿島アントラーズ

・現在7位

・前節は川崎フロンターレに1-2で逆転負け

・前節から中3日で迎える

セレッソ大阪

・現在11位

・8月に監督交代、小菊昭雄新監督がコーチから昇格

・前節はサンフレッチェ広島に1-0で勝利

・前節から中3日で迎える、13連戦の締めくくり

スタメン

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鹿島は前節から4人変更

・右サイドバックに常本佳吾が入る

・2列目に土居聖真と松村優太、前線にアルトゥール・カイキを起用

C大阪は前節から3人変更

・右サイドバックに松田陸、左サイドバックに丸橋祐介が戻る

・前線に大久保嘉人を起用

ハイプレスの回避法の違い

試合は立ち上がりからお互いにハイプレスを仕掛け合う展開となった。相手に自由にやらせないため、高い位置でボールを奪うために、前線から積極的にプレッシャーを掛けていく。

そんなハイプレスを鹿島もC大阪もロングボールで回避していった。お互いにそこまでボールを保持して丁寧に繋ぎたいという思惑はなかったのだろう。鹿島は前線のカイキ目掛けて蹴って彼のポストプレーに託す形。2列目のアタッカー陣の中ではフィジカル面で戦え、そうしたプレーを苦にしないカイキはC大阪守備陣と相対しながら献身的に身体を張っていた。

一方のC大阪はボランチの原川力が低い位置に降りて組み立てに関わることで、数的優位を作り出そうとしていた。そうなると、数を合わせるために鹿島はボランチが前に出ていくが、それこそがC大阪の狙い。2トップが縦関係となり、どちらかが出ていった鹿島のボランチが空けたスペースに顔を出してパスを引き出せれば、C大阪は相手守備陣を剥き出しにした状態で前を向いて攻撃を仕掛けることが出来る。シンプルな裏一本を見せながら、こうして降りてスペースに入り込んでパスを引き出す動きを見せることで、鹿島のセンターバックは降りていくC大阪のプレーヤーを捕まえられず、マンマークの意識が強いために守備の対象を失ってしまう。どっちつかずの前半立ち上がりの中でペースを掴もうとしていたのはC大阪の方だった。

鹿島の修正

だが、前半の20分ごろから鹿島も修正を施していく。ボランチが出ていってはそのスペースを使われていたため、ハイプレスで出ていって前線のサポートをする役割を2列目のファン・アラーノに変更。ボランチがむやみやたらにスペースを空けないようにしたのだ。

こうなると、前線の選手が降りてもパスを引き出せるスペースのないC大阪は、シンプルなロングボールを蹴らざるを得なくなっていく。ただ、そのロングボールへの準備は鹿島の方が出来ており、確実に回収していく。C大阪としてはもう少しロングボールの蹴った先に人を集めていきたかったが、2列目の乾貴士や坂元達裕は大外で仕掛けるための位置取りをしていることが多く、彼らが中央に寄っていくことはあまりなかった。では、大外に揺さぶって彼らが仕掛けられる状況を作り出せば良いのではと思われたが、どうやらそれが準備されている様子はなく。サイドバックからの外外の前進で活かされるくらいだった。

ボールを回収できるようになった鹿島は、飲水タイムで相馬直樹監督が「(サイドの)奥までいこう!」と指示をしたように、ロングボールの供給先をサイドの裏に設定していく。C大阪はボランチが組み立てで降りる分、サイドバックは高い位置を取る。そこを右サイドは常本、左サイドは松村や安西幸輝で突いていこうという形だ。これが機能して、前半の半ば頃からはゴールこそ奪えなかったものの、鹿島が主導権を握るようになっていった。

痛恨の失点

スコアレスで前半を折り返して後半になると、両者共にボランチが高い位置を取るようになり、ボールを失えば即時奪回で高い位置からプレスを掛けるようになっていく。そこを外せば当然相手陣内にはスペースが生まれていて、カウンターのチャンスが作り出せる。お互いに行ったり来たりの攻撃の応酬になっていった。

この展開で先に動いたのは鹿島だった。56分に3枚代えを敢行し、上田綺世、荒木遼太郎、和泉竜司を投入。元々勝負どころでこの3人を投入するのは相馬監督のプラン通りと思われ、スペースが出来始めたこの時間での投入で彼らのクオリティを活かしてゴールを奪いにいく算段だったのだろう。

56分〜

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だが、先に試合を動かしたのはC大阪の方だった。58分、ロングボールからのルーズボールの競り合いでC大阪が三竿健斗とディエゴ・ピトゥカに競り勝ってボールをモノにすると、そこからカウンターが発動。最後は左サイドでボールを受けた乾貴士のスルーパスに、飛び出してきた原川が抜け出してゴールに流し込んだ。

鹿島としてはここから点を取りにいくぞという展開の中で痛い失点だった。まず2ボランチが出ていったのにボールを奪い切れなかったのが痛かったし、後方から駆け上がってきた原川にセンターバックが対応出来なかったのも痛かった。関川郁万はボールを持っていた乾に引き付けられてしまい、原川を途中まで見ていた町田浩樹は原川の抜け出しを捕まえることが出来なかった。こうした本来のマーカーではない選手が出てきた時の対応に今の鹿島守備陣は問題を抱えている。

狙い通りの同点弾

追いかける立場になった鹿島。前半から続いてのサイドの裏狙いの攻撃でなんとかC大阪が守備を固める前に追い付きたかったが、早い時間でそれに成功する。

66分、鹿島は相手のゴールキックをはね返すと上田のポストプレーから攻撃がスタート。一度左サイドの深くまで侵入したところからやり直し、ボールを受けた三竿が右サイドに展開。これにフリーで和泉が受けてクロスを送ると、最後は西尾隆矢の前に入り込んだ上田がヘッドですらして流し込み、鹿島は同点に追いついた。

上田のポストプレーとポジショニングの上手さ、三竿の正確なパスと、和泉の高い技術、と個々の質の高さが活きた得点でもあるが、前半から繰り返していたサイドの奥まで侵入してそこから逆サイドに揺さぶるという形で奪った得点だけに、鹿島としては狙い通りだったのだろう。三竿が展開した時点でC大阪守備陣は視野がリセットされてしまい、ボールとマーカーを同時に追うのが難しくなっている状況だった。

最後までオープン

再びイーブンとなった試合はオープンになっていき、お互いにチャンスを迎える。80分にはC大阪が決定機を迎えるが、ここは沖悠哉がシュートを2本立て続けにストップ。そのシュートストップの流れからだった。

鹿島は左サイドから侵入を試みるが、一度リセットして中央を経由して右サイドへと展開。途中出場の遠藤康は大外を駆け上がった常本を囮に使って、中央から流れようとした上田へのパスを選択。これを受けた上田が瀬古歩夢にペナルティエリア内で引っ掛けられて倒され、PKを獲得。これを上田自らが決めて、鹿島は逆転に成功した。

C大阪としてはやや不用意だっただけに、鹿島としてはラッキーな得点とも言える。上田はゴールから遠ざかるプレーになっており、あそこで受けても直接シュートを打てる状況ではなかっただけに、あそこでファウルをしてまで止める必要性はなかった。

逆転した鹿島はすぐさまレオ・シルバを投入したものの、全体の陣形が下がらなかったためにオープン気味の展開が続き、C大阪の反撃を受けることに。それでも何とか失点は免れ、逃げ切りに成功。逆転勝ちの鹿島が連敗を阻止する結果となった。

まとめ

序盤こそ相手に主導権を握られたが、そこから相手の出方を見て振る舞い方を変え、ペースを取り戻したことは評価していいだろう。どっちつかずの展開の中で先制点を奪われたことは褒められたものではないが、そこから立て直して仕掛け続け、逆転に結びつけたという点で、今節は小さくない意味を持つ勝利だったはずだ。

ただ、そこまで相手を見ながら自分たちの振る舞いを変えられたのなら、逆転した後の振る舞いにも改善の余地はある。終盤にリードを奪った展開で、あそこまでオープンにして相手にチャンスを作らせる必要はなかったはず。陣形を引いてでも守りを固め、リードを守り切るという手もあったのではないかと思われるし、レオ・シルバの投入はそうしたメッセージだったように思える。そのあたりの戦い方の上手さは鹿島が本来得意としていたもののはず。らしさを取り戻したいのなら、まだまだこだわれる部分はある。

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