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【現在地】明治安田生命J1 第34節 鹿島アントラーズ-セレッソ大阪 レビュー

戦前

前節は上田綺世の2ゴールで、清水エスパルスに完封勝利した鹿島アントラーズ。3位浮上の可能性を残して、最終節を迎えることとなった。今節は中6日のホームゲーム4連戦目だ。

鹿島が迎え撃つのは4位セレッソ大阪。すでにロティーナ監督の退任が決定しており、これが彼にとってのラストゲームとなる。前節はホームで終了間際の失点が響いてサガン鳥栖に1-2で敗れており、そこから中2日での試合となる。

なお、両者は第17節で対戦。鹿島は前半にファン・アラーノのゴールで先制するも、C大阪もブルーノ・メンデスのゴールで追いつく。しかし、鹿島は後半立ち上がりにエヴェラウドのゴールで勝ち越すと、そのまま逃げ切って2-1で勝利した。

前回対戦時のレビュー

スタメン

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鹿島は前節から2人変更。右サイドバックに永木亮太、左サイドバックは山本脩斗が先発予定だったがアップ中のアクシデントにより、杉岡大暉が急遽起用された。

C大阪は前節から2人変更。最終ラインに木本恭生が入り、片山瑛一が左ウイングバックに。シャドーには高木俊幸を起用して、坂元達裕が右ウイングバックに回っている。

押し込む鹿島

試合は序盤から鹿島が押し込む形で進んでいく。C大阪は鹿島の組み立ての形に合わせて5-4-1と5-3-2で守備の形を使い分けていたが、鹿島もC大阪が1トップの時はセンターバックの2枚、C大阪が2トップの時はセンターバック+ボランチの3枚で組み立てるようにして、数的優位を形成。それを活かして、確実にボールを前進させていった。

また、鹿島が押し込むことで、C大阪の攻め手を一つ削ることが出来たのも大きかった。今節のC大阪の右ウイングバックはアタッカーの坂元。C大阪の狙いとしては左サイドでボールを保持しながら鹿島を引き付けたところでサイドチェンジして、逆サイドにいる坂元にボールを届けて彼の得意なドリブルを仕掛けやすい状況を作り出す、そうした意図があったはずだ。だが、鹿島が立ち上がりからチーム全体として押し込んだことに加え、左サイドバックで起用された杉岡がかなり高い位置に張っていたため、坂元はそのケアで下がらざるを得ず、結果としてC大阪の狙い通りのシーンが作り出せることはほとんどなかった。

鹿島としてはこの流れの中で先制点を奪いたかったはずだ。だが、エヴェラウドのシュートがポストに弾かれたのもそうだが、今節はC大阪の3バックの堅さに終始苦労させられることになり、中々ゴールが遠い試合となってしまった。

展開を変えた清武弘嗣

押し込まれ続けていたC大阪だが、守備陣の踏ん張りもあって徐々にリズムを取り戻していく。C大阪はそこからボール保持で主導権を握ろうと試みていた。

C大阪は3バックで鹿島の2トップに対して数的優位を形成して、ボールを前進させようとしていた。だが、鹿島も2列目のアラーノや土居聖真が位置を上げることで数的不利を解消。鹿島は立ち上がりからかなり攻撃的なプレッシングを敢行しており、C大阪はその強度に苦しんでいた。

そこで登場したのが清武弘嗣。2シャドーの一角に入っていた彼がボールの受け手としてポジションを下げて組み立てに加わり始めたところから、C大阪は中盤で数的優位が作ることが可能になり、徐々にボールが回り出していく。鹿島としても清武を捕まえたいところだったが、センターバックは高木と豊川雄太に、サイドバックは両ウイングバックにピン止めされており、出ていけず。結果として、清武にボールを受けてから前を向かれて鹿島陣内に攻め込まれるシーンが増えていった。

清武の動きによって、落ち着きを取り戻したのがC大阪のボランチだった。鹿島のプレス強度に苦労していた彼らだったが、清武の登場によってその強度が弱まると、落ち着いてボールを保持することが可能になる。特に、長短のパスで攻撃のリズムを作り出せる藤田直之が自由を得たのは大きかった。

こうしてC大阪もボール保持の局面を増やしていき、それに比例してボールロストの機会も減らしていった。ショートカウンターでC大阪陣内に攻め込むことの多かった鹿島は、徐々にゴール前に近づけなくなっていった。鹿島はボールを持つことは出来るものの、ボールを持たされている状態が続き、C大阪守備陣に結局ははね返されてしまう。そうした展開が前半は続いていくことなった。

的中するロティーナ采配

後半開始時

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スコアレスで前半を折り返すと、ハーフタイムにC大阪が選手交代。高木に代えて松田陸を右サイドに投入して、守備に追われていた坂元をシャドーのポジションに置いた。

右サイドに本職の選手を置いたことでC大阪の守備はより強固さを増す結果となり、鹿島はますます攻めあぐねていった。キックオフ直後から高い位置を取り続けていた杉岡も徐々にスペースを消されて埋没。結局、土居が下がって受け手になりボールを捌く、というお世辞にもバランスのいい攻撃とは言えない状況が続いていた。

60分~

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この展開でロティーナはさらなる一手を打つ。最前線の豊川に代えて、柿谷曜一朗を投入。AFCチャンピオンズリーグ出場権獲得のためには勝たなければならない鹿島がバランスを崩してでもゴールを奪いに前に出てくるのを逆手に取り、裏抜けの得意な柿谷を起用してカウンターから鹿島ゴールに迫ろうとしたのだ。

その采配はピタリと的中した。柿谷はカウンターでの裏抜けやクロスから再三再四チャンスを作り出す。これらは沖悠哉の好セーブなどによって防がれるものの、83分にその柿谷のところから結実する。柿谷のシュートのこぼれ球を拾い、左足でのビューティフルゴールを決めたのは松田。鹿島としては前がかりになっていたのでこうしたリスクは覚悟していたし、シュートも相手を褒めるしかないものだったが、痛恨の失点となってしまった。

力業でこじ開ける

リードを許したことで攻めに出るしかなくなったのは鹿島の方だ。2トップへのシンプルなロングボールを増やして、なりふり構わずにC大阪ゴールに迫った。

その力業でゴールをこじ開けたのは90分のことだった。杉岡が中盤からロングボールを裏に供給すると、上田が競り合ってこぼれたボールに詰めていたのはエヴェラウド。鹿島は2トップのパワーを活かした攻撃で同点に追いついたのだった。

その後、アディショナルタイムに入っても決定機を作った鹿島だったが、犬飼智也のシュートや上田綺世の2度のシュートも相手ゴールを揺らすことは出来ず、タイムアップ。結局、試合は1-1のドローに終わり、鹿島はシーズン5位。ACL出場権獲得には至らなかった。

まとめ

最大のストロングである2トップにボールを届ける前に、もう一つ崩しどころを見つけておけば、という試合だった。守備が整っている段階でC大阪の3バックに勝負を挑んでも、中々崩すのは難しい。左サイドバックの杉岡の高さや推進力だったり、途中出場の遠藤康のキープ力など光明になりそうな部分はあっただけに、チームとしてそれを活かす意識をもっと高く持ちたかったところだろうし、使われる側もよりそれを呼び込みたかったところだ。

とはいえ、今節のC大阪にはドローが妥当な結果ともいえるだろう。攻撃陣は流れを変える途中出場のうち2人は高卒ルーキーに頼らざるを得なかったし、守備陣も踏ん張りを見せていたが失点ゼロに抑えることは出来なかった。ここがある意味でチームの現在地だろう。ここからどう上げていくのか、C大阪のような相手にどう勝ち切るのか、それが来季タイトルを目指す上で、鹿島が乗り越えなければいけない壁となる。

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