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【追い風が止まる時】明治安田生命J1 第15節 サガン鳥栖-鹿島アントラーズ レビュー

戦前

鹿島アントラーズ

・現在6位

・リーグ戦4連勝中、8試合負けなし

・前節は横浜F・マリノスに5-3で勝利

・ミッドウィークにルヴァンカップを札幌の地で戦い、中2日で今節を迎える

サガン鳥栖

・現在3位

・リーグ戦5試合負けなし

・前節は大分トリニータと1-1のドロー。先制しながらも長沢駿のヘッドで追いつかれ、PKで逆転の大ピンチも朴一圭の好セーブで凌ぐ

・ミッドウィークのルヴァンカップから同じく中2日で迎える

スタメン

画像1

鹿島は前節から1人変更

・出場停止の常本佳吾に代わって、広瀬陸斗が右サイドバックに

鳥栖は前節から1人変更

・前線に本田風智を起用

鳥栖の狙い

攻撃

・ベースはポゼッション、ピッチを幅広く使って攻めよう!
・組み立ての時は中野伸哉が左サイドバックになって高い位置を取り、4バック化する
・組み立てはファン・ソッコ、エドゥアルド、松岡大起、仙頭啓矢の4人が中心。ここにキーパーの朴一圭も加わる
・鹿島の1stプレス部隊である前線2枚(土居聖真と荒木遼太郎)に対しては、松岡か仙頭がファン・ソッコとエドゥアルドの間に降りて3バックとなって数的優位を確保
サイドの攻め筋は左サイドから。中野伸のキック精度の高さ、中野嘉大のドリブルを活かしてサイドから切り崩す。組み立てに積極的に関わる仙頭が左インサイドハーフなのもありそう。

守備

・ボールを失ったら即時奪回
出来れば高い位置でボールを奪いたいけど、そこまでリスクを冒さなくてもいいかな
・大前提として中盤は樋口雄太、仙頭、松岡の3人だけ。彼らのカバーエリアはかなり広め。
・プレスは基本的に山下敬大1人、2トップの相方である本田風智は中盤に降りて中央のスペースを塞ぐ
・鹿島に中盤中央で自由にさせるのは避けたい。荒木遼太郎みたいにそのスペースが大好物な選手がいっぱいいるから

こぼれてきた先制点

立ち上がりから鳥栖の組み立てにプレスを剥がされて劣勢の鹿島だったが、ほとんど最初のボール保持のターンで試合を動かす。

14分、自陣で数的優位を作ると荒木も登場してボールを前進させることに成功。ピッチのちょうど中央でフリーキックを得ると、三竿健斗はクイックリスタートを選択。これを松岡の脇のスペースで土居聖真が受けて前を向き、スルーパス。これに右サイドで抜けた松村優太がシュートを放つと、ボールはブロックにいったエドゥアルドに当たってゴールに吸い込まれ、鹿島は先制に成功した。

自らにこぼれてきた攻撃機会を一発でゴールに繋げた鹿島。三竿の判断、鳥栖の泣き所となる中盤のスペースを活用した土居、相手最終ラインを押し下げるためにこの試合ずっと裏抜けを仕掛け続けていた松村、3者それぞれの好パフォーマンスがゴールに繋がった。

ハマらない鹿島の守備

先制後、しばらくは鹿島が勢いに乗って押せ押せになるが、鳥栖も徐々に盛り返していく。ボールを握った鳥栖は上記に書いたような組み立てから左サイドを軸にした攻め筋で鹿島ゴールに迫っていった。

鹿島は試合を通じて、この鳥栖の組み立てを封じることが出来なかった。基本的に高い位置で奪いたいがために鹿島は積極的にプレスを仕掛けていったのだが、鳥栖に数的優位を活かされてことごとく剥がされてしまっていた。また、鳥栖にボールを運ばれ押し込まれたところではね返しても、鳥栖が即時奪回に動くため、鹿島は落ち着いてボール保持する時間を与えてもらえない。そうなると即時奪回をかわすか、ロングボールを前線に預けて起点を作ってもらうしかないのだが、今節の鹿島は1トップに土居を起用しているようにパワー不足は否めず。結果として鳥栖にボールを再び拾われ、また守備の時間を強いられるという、鳥栖がワンサイドで攻め続ける時間が続くようになってしまっていた。

象徴的だったのは松村のポジショニングだ。松村のスピードはプレスにおいて強力な武器となりえるのだが、松村がマークに付いていた仙頭はポジションをどんどん動かして組み立てに関わっていく。松村もマンツーマンを命じられている訳ではないので深追いしないが、そうすると松村が見る対象となる相手選手はいなくなってしまう。左サイドで高い位置を取る中野伸には広瀬が対応しており、結果として守備の対象を失った松村は浮き続けて守備に参加できず、鹿島は守備においても強力なカードとなりうるはずの松村を上手く使い切ることが出来なかった。

押し込まれる鹿島

それでもなんとか前半を1点リードで折り返した鹿島。後半になると相手サイドの裏にロングボールを蹴り込んで陣地回復を図りつつ、プレスの人数を増やして相手の数的優位を防ぎにかかり、流れを取り戻そうと試みるプレーが増えていく。

だが、前半から続いた優位性を鳥栖はスコアに結びつけた。50分、左サイドからボールを運ぶと、裏に抜けた中野嘉のクロスのこぼれ球を山下が押し込んで同点。鹿島は前半から再三狙われていた形から追いつかれてしまった。

これで勢いづいた鳥栖はさらに圧力を強めていく。58分には前線に林大地を投入して、パワーを強化。逆に鹿島は時間の経過と共にプレスの強度が落ちていき、鳥栖に押し込まれる時間が続いてしまう。疲労からなのか、鳥栖の攻撃で陣形を広げられているからなのか、陣形を圧縮しきれずに中央にパスを通されるシーンが目立ち始め、鳥栖の決定機の数も増えていく。また、せっかくボールを奪ってカウンターに繋げようとしてもその部分でのミスが増え、64分に投入した上田綺世までボールを届けられない現象が起きてしまっていた。

小さなことの積み重ね

鳥栖の攻撃をなんとか凌いでいた鹿島は、ボール保持でのロストを減らすため、78分にディエゴ・ピトゥカを遠藤康と合わせて投入。終盤に反撃を試みた。

だが、その直後だった。エドゥアルドのボールに反応した途中出場の小屋松知哉が左サイドで犬飼智也との競り合いに勝って入れ替わり、クロス。これのクリアボールを仙頭が拾うと、最後は仙頭の落としを樋口が流し込み、鹿島は鳥栖に逆転を許してしまった。

失点自体は犬飼のミスという部分が大きいのは否めない。センターバックがサイドに引きずり出された状況での1対1で結果的に競り負けるのは、チームの守備として計算が成り立たなくなってしまうからだ。

だが、形自体は前半の押し込まれていた展開からずっと作られていたものであり、もっと早く失点していてもおかしくなかったことを考えれば、修正できなかったことが痛かったとも言えるし、また巻き返しを図るためのピトゥカ投入がもう少し早ければ効果が出ていたのではないかとも言えるだろう。そうした要所要所で後手に回ったことが、今節逆転を許すことに結びついてしまった。

追いかける展開となった鹿島はピトゥカを軸にしながら反撃を開始。アディショナルタイムには左サイドで永戸勝也が抜け出して決定機を迎える。しかし、クロスに合わせた遠藤のシュートは枠を大きく外れてゴールならず。結局、試合はこのままタイムアップ。1-2で敗れた鹿島は連勝がストップ、相馬直樹監督就任後初黒星となった。

まとめ

内容を見ても負けるべくして負けた試合だった。鳥栖の組み立てを前にプレッシングが終始ハマらず押し込まれ続けたことで、鹿島は中々攻め手を繰り出すことも出来なかった。

ただ、今節の鹿島がこれまでと比べて極端にパフォーマンスが悪かった訳ではない。鳥栖が一枚上手だったのもそうだが、連勝中でも鹿島は常に相手を圧倒てきていたわけではなく、要所要所の試合を左右する場面でゴールを奪い、逆に相手に奪われなかったことで、流れを自分たちのものに引き寄せ、勝点を積み重ねていった。今回はそうしたところで相手を上回れなかったが故の結果であるし、またこれまでも勝点を落としていた可能性は十分にあったという訳だ。

この敗戦によって良い流れは止まってしまったと言わざるを得ない。だが、何かを大きく変える必要はないし、そうすることもないだろう。改めてチームのプレー原則を徹底させること、プレッシングと撤退守備の使い分けを意識すること、修正ポイントはそうした点になるはずだ。次節は中3日でやってくるだけに、大事なのはここでズルズルと連敗しないことである。

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