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今季の鹿島アントラーズのルーキーたちは何がスゴいのか

内田篤人も太鼓判

今季の鹿島アントラーズは高卒ルーキーがかなり良い、そんな話があちこちで聞こえるようになってきた。実際、中断前には荒木遼太郎と松村優太の2人が早くも公式戦デビューを果たし、荒木に至っては今やレギュラー候補の1人だ。チームメイトで世界トップレベルを肌で知る内田篤人も彼らのことをこう評している。

「新人は結構やると思います。鹿島はいい高卒を取ったんじゃない?という感じかな。これから何年かすればアントラーズのスタメンをがっちり確保することもできなくはない。なんだったら代表も、という選手だと思います」

ただ、内田がこうまで評する彼らは一体何がそこまで良いのだろうか。その中身を今回は筆者なりに考えてみた。

何がスゴいのか

結論から言いたい。今季の鹿島の高卒ルーキーのスゴさ、それはオフザボールの動き出しにあると思っている。

サッカーというスポーツは当たり前の話だが、ボールがなければ出来ない。ただ、ボール一つを味方と相手含めた22人で動かすために、1人が90分の中でボールに触れる時間はおよそ2分と言われている。これがマークの激しくなるアタッカーならもっと短くなっても不思議はないし、そうでなくても90分のうち88分はボールに触っていないことになるのだ。

つまり、ボールに触っていない時間の方が圧倒的に長いということを考えれば、その時間帯の動きが重要ということは言うまでもないだろう。ルーキーの選手たちはその動きが優れているのだ。ただ、単にオフザボールの動き出しと言っても、その中身は様々だ。そこで、彼ら1人1人の良さを以下に記していきたい。

荒木遼太郎

東福岡高校から加入し、ルーキーの中では唯一リーグ戦デビューも果たした荒木。その荒木のオフザボールのスゴさは、ボールの引き出し方にある。

荒木は2列目のポジションに入ると、ペナルティエリアの角の延長線上付近のハーフスペースに位置取ることが多い。このエリアは中央ほど相手のプレッシャーが強くないエリアであり、かつサイドよりもゴールへの直線的に距離が近いこともあり、近年重要度が増しているエリアだ。荒木はこのエリアを上手く使いながら、パスの受け手となってボールを呼び込んでいるのだ。

また、荒木が特筆すべきなのはそもそもボールへの嗅覚が鋭いことだ。彼はおそらく、どこにいればボールがこぼれてくるのか、味方にとって助かるのか、相手に嫌がられるのか、それが分かっているように思える。だからこそ、一度練習見学した時にもミニゲームでこぼれ球にいち早く反応していたのはほとんどが荒木であったし、それがシュートシーンでも組み立ての部分でもプラスになっているのだろう。

さらに、彼はボールを扱う技術にも長けている。止める蹴るといった基礎的な技術が高いためにミスが少ないし、爆発的な突破力はないもののドリブルで目の前の相手を剥がすことも出来る。こうした能力を兼ね備える荒木への期待は大きく、ルーキーながら今季の鹿島の攻撃の潤滑油となるかもしれない存在だ。

松村優太

静岡学園高校で高校選手権優勝という実績を残して、鹿島に加入してきた松村。デビュー戦は途中出場で一発退場と苦い思いを味わったが、彼も早くも公式戦デビューを果たしたルーキーの1人だ。

松村のオフザボールでスゴいのは守備だ。まずはプレスの掛け方。相手がボールを持っている時に、的確な位置取りでプレッシャーを掛けていって、相手の選択肢を狭め、失点のリスクを減らし、味方がボールを奪う可能性を高めることが出来ているのだ。

さらに、自分たちがボールを失った時の振る舞いも見逃せない。松村はすぐに守備へと切り替え、自分の近くにいる相手のボールホルダーへとプレッシャーを掛けて、奪い返しにいくのだ。こうした即時奪回の意識の高さは、静岡学園高のゲームモデルの影響もあるだろうが、今季の鹿島でもこの意識は強く求められているだけに、松村にとってはレギュラー争いでアドバンテージになりそうだ。

そして、松村の一番得意とするプレーはドリブルだ。繊細なボールタッチに加え、圧倒的なスピードを持つ彼のドリブルは、局面を一気に変える力を持っている。まだ、フィジカルやスタミナ面で課題を抱えているため、その力が発揮できる場が限定されてはいるが、そのことを自身でも把握しているようで、広いスペースが確保されていることの多い大外のエリアをプレーエリアで選択することが多くなっている。今の鹿島に純粋なドリブラータイプの選手は少ないだけに、重宝されるであろう存在だ。

染野唯月

尚志高校から加入した染野唯月は高校時代のケガが響いて、中断前は戦線離脱していたが、すでに復帰。No.1高校生ストライカーと呼ばれた実力の片鱗を見せようとしている。

染野のスゴさは器用さだ。彼は、エヴェラウド、伊藤翔、上田綺世といった鹿島の他のFWたちのように前線に張りつつ、相手DFと勝負を繰り返していくタイプではない。もちろんそうしたプレーが出来ない訳ではないが、染野の味方からボールを引き出してゴール前に繋げていく、というリンクマンのようなプレーこそ彼の持ち味と言えるだろう。

こうした染野の持ち味を引き出した要因として、尚志高でエースとして攻撃の全権を握っていたというのがあるように思える。点を取るだけでなく、パスで攻撃のリズムを作り出し、ドリブルでチャンスを作り出す。そのプレースタイルはリバプールに所属するフィルミーノに似たものがあった。

また染野はシュートも上手い。この上手いというのは、単に精度が高いというだけでなく、タイミングや間合いの取り方というのも含まれている。相手が寄せきれない距離を見逃さず、相手が打ってこないと思ったタイミングでシュートを打ってくる。簡単に点を取っているように見えるのが、彼の上手さという訳である。中断明け、そんな染野がコンスタントに試合に絡んでいても不思議はない。

山田大樹

鹿島アントラーズユースから昇格してきた山田大樹も期待の高卒ルーキーの1人だ。早くからチャンスを掴み取りそうな前述の3人と違い、GKというポジションだけに、チャンスが訪れるのに時間がかかるかもしれないが、彼が実力者だということも忘れてはならない。

先述の3人の武器がオフザボールだったが、山田の武器はその逆であるオンザボールだ。シュートストップなどのGKに特に求められる能力がしっかりしている上に、彼は繋ぎに加わることを苦にしていないし、左足から繰り出すフィードも正確だ。

キーパーが繋ぎに加われるということのメリットは大きい。フィールドプレーヤーと同じくボールを扱うことが出来れば、相手のゴールキーパーが「ボールを奪いにいく」守備に参加出来ないことを考えると、必ず11対10の数的優位が発生することになるからだ。

190cmと恵まれた体格を持つ山田は将来の守護神と期待される存在だ。ここ十年ほど鹿島は曽ヶ端準が守護神として君臨し安定したパフォーマンスを見せてきたが、その反面世代交代が進んでいないという側面がある。現在レギュラーのクォン・スンテも現在35歳とベテランだ。そうした今のGK陣において、山田は3年目の沖悠哉共々、新風を吹かして欲しいところだ。

まとめ

ここまで紹介した4人を、かつての79年組と重ね合わせる人も多い。あの時も、小笠原満男、中田浩二、本山雅志は早くからチームの戦力として計算され、曽ヶ端準も時間はかかったが4年目のシーズンでレギュラーポジションを掴むと、小笠原らと共にチームの多くのタイトル獲得に貢献してきた歴史がある。

荒木、松村、染野、山田。この4人がそうした存在になる可能性は十二分にある。後にそうした存在となった時、礎とも言えるのが今シーズンだ。彼らのプレーに注目したい。

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