日本農法を北米で実験する 1
ロシアン・ガーリック編 1
ロシアン・ガーリックの栽培をはじめてから、3年がたち今年も無事に収穫が出来ました。日本では、あまりなじみがないと思いますが、ロシアン・ガーリックは普通のガーリックに比べて粒は大きく、味もまろやかで何とも言えない美味しさであります。多くの人は、1度このガーリックを食べると、普通のガーリックに戻れなくなってしまうほどです。これは、食べた人しかわからず、うま味と甘さとまろやかさが調和され、何とも言えな美味しさになっています。普通ガーリックと言えば、刺すような刺激臭とニンニク独特の尖った味で、風味も匂いも強いのですが、このガーリックの特徴は本来のガーリックの強い味ではなく別の食べ物になっています。さらに、三徳農園のガーリックは粒が大きく、Vancouver周辺のプロの農家のロシアン・ガーリックよりも大きな粒になり、生で食べてもよし蒸して食べても美味しい、不思議なガーリックになっています。当然、普通にガーリックとして使うこともでき調味料としても使えます。強いにおいや風味が苦手で、食べれない人でも、このガーリックは食べれます。加えて、ロシアン・ガーリックは北米では高級食材として扱われています。
下の写真をみたら、その違いが判ります。普通のガーリックと三徳のロシアン・ガーリックを並べて比較しました。ホッチキスを見たら、その大きさがわかると思います。
次の写真は、Vancouverでは有名なグロセリー・ストアーでChoicesという店で、オーガニックや健康食品を扱った店です。ローカルのお客さんが多く、健康に気を付けている人たちが利用するコミュニティーマーケットになっています。そこで売られているロシアン・ガーリックは、量り売りで$19.98/lb($19.98/450g $44.05/kg)で売られています。だいたい1個280円の計算になります。結構な値段です。
ちなみに、三徳ガーリックは普通のガーリックの2.5倍~3倍ぐらいの大きさになり、150~170gぐらいになります。一粒がとても大きいので、三徳ファームでは1個$10でドネーションというカタチで取引をしています。シーズンになると、このガーリックを欲しがる人は後を絶ちません。
次回は、どのような行程で栽培から収穫までを書いていきます。私が提案している、北米で産業として日本農法を体系化することの意味を書いていきます。日本人の丁寧な仕事が、高品質をつくることができ、誰でも自分の理念と意志と行動で日本農業を海外ですることが出来ます。いまの日本の農業は、国内での生産と国内需要ばかりに目を向けていますが、世界に視点を移すだけで、まったく景色が変わってきます。これから世界は、混沌として社会に進んでいきます。さらに、世界は食糧不足の時代になるとも言われています。そのときに、日本農法が世界の中でどのような立ち位置になっていくのかを、北米で研究をしたいと思っています。
日本農法プロジェクト ー北米で実現させるー
このプロジェクトは、いまは日本農法が通用するのか試験的にしてますす。ただし、数年後には産業ベースにのせることを前提としています。現段階は、商業ベースにするのではなく実験農園として、多角的なデータを取得して未来に繋げていくことをしています。そのために、小さなスペースで収穫量・収穫の品種・取引金額を中心にしながら、年間どれくらいのキャッシュフローが出来るのかを調べています。加えて、北米で日本の野菜が育つのかを、土壌・気候・水質に別けて検証をしています。
いくつかの検証データが出て、日本農法が商業化として出来る見通しがたった時点で、農業ライセンスを取得し農業法人を立ち上げること前提にしています。
現段階では、農業法人を立ち上げるには幾つもの課題と、審査規定に満たしていないため農業法人の申請をすることは出来ないません。その審査をクリア―にするために、収穫量とキャッシュの安定化をしていかないといけない課題があります。それが出来るようになれば、農業法人の取得ができます。
いまは、農業法人としての立場でないので、特定の人たちにドネーションというカタチで、モノとお金の交換をしながら運営をしています。
プロジェクトの課題
何を主力の作物にするのか。
Vancouverの土地を活かした農業はどこにあるのか。
日本の作物を北米で育てることは可能か。
日本農法が世界で戦える産業になるのか。
次世代の日本人の産業に出来るのか。
この5つを検証しながらが、どの方法で日本人の産業にしていくかを検証し、同時に日本農法を各国で出来る土台ができるのかの検証をしていく。いままでの日本の食文化は、日本国内で作られたモノを輸出することが第一にありました。次の時代は、日本人が自分たちで現地生産をして、販売をする時代だと考えています。これまでの日本食の物流は、外国の人のバイヤーに丸投げをして一番いい利幅を外国人に渡し、日本の生産者が利益が出ない構造を作ってきました。このことを知らずに、日本の食文化は「啓蒙」と称し官民が一体となって世界に進出していきました。しかし、実体は大半が利益にならなく世界にバラ巻きをして、日本人が損をする仕組みを作ってきました。その実態は、包丁業界に携わっているので、手に取るようにわかります。(日本の包丁を、世界に出す事業を比較的早い段階からしていた経験から、官民が間違ったモデルを作ってしまっている。)
その構造はいろいろな業界に通じていて、日本食材や日本酒は他民族の供与になっていて、外国人の懐が温かくなる仕組みがいまも続いています。
これまで日本は、文化の安売りを官民が一体になり、自らの手で自分の首を絞める構造を作ってきました。その結果、日本のもの作り世界を衰退させてしまいました。この流れをどこかで変えないと、日本はさらに貧困になり民族の技術は衰退していくでしょう。
このプロジェクトは、その構造を止めるのではなく構造を作り変え、日本人が海外に出ていく窓口兼研究機関にして、海外のマーケットを勉強の場にもしていく。最終的には、日本人が現地で生産者になり次世代の仕事にしていく。
そのためには、現地の事情を知ることと、現地のネットワークを作って販売していくことです。このVancouverで、モデルケースが出来たら世界各地でそのモデルを基本にして活用することが出来ると見ています。まずは、20~30代が現地でどのように日本文化が浸透していくかを、知ることからはじまると思います。
ー発想を変えるだけで、日本農業は世界の中心にるー
日本の農業は、「なぜ、ここまで衰退しているのか?」。それは、GHQによって作られた戦後体制から抜け出せないことが、大きな要因になっています。農協をはじめ農業利権が、政官民の3つの利益供与で回り、70~80年前の古い体質が日本農業を駄目にしています。いまの体制は、10~20年先を見ない農政が日本の農業の力を弱体化させて、本来の日本農業のポテンシャルに蓋をしている体質になっています。加えて、次世代の人たちが新規参入しにくい農政村を作って、古い既得権益を守る構造になってしまっています。農業利権の中心は、高齢化になり未来の日本農業の姿を描けず過去のしがらみで、組織を動かしているのが日本の農業の姿だと見ています。
その古い体質の流れを変えるには、発想を変えるだけで日本の農業は大きく変わります。農業に携わっている人たちは、トンチンカンな言葉に聞こえまると思いますが、多くの日本人は農耕文化の歴史観がないところからスタートしているからです。
いまの日本農業は、第二次大戦後の民主化の一環としてアメリカ占領軍(GHQ)が、農地改革(1946-48)をして、それが農政村を作り政官民のサイクルを作ってきました。敗戦後直後に大地主を解体して、小作人に土地を分配する農地改革をしました。その体制が、いまだに改革されず引き継がれています。(大地主から土地を分割することによって、地主に納めていた小作農が独立して、地主との格差を縮めることをしました。 これによって、農地改革に関する法律は、GHQ主導の下で作られて日本農業は解体されました。その当時は、農地を耕作農民に解放し喜ばれました。一世帯が所有できる農地は、家族で耕作できる面積に制限して農家の平等化をしました。)
当時の日本は、貧困と仕事のない社会であったため、モノがない極貧国でもありました。そのときに小作農に分割さたことで、多くの人が仕事にあり付け食料を供給したことで、日本の復興の大きな起爆剤になり基幹産業になりました。しかし、60年代ごろには工業化と都市化が進み、農業は利益にならない産業になっていきました。そこで、農政村は政治と法とお金のトライアングルを強化して、モノ作りに比重を置くよりお金を地方に引く政治色が強い産業になっていきました。この構造が、大きな改革が出来ずにGHQの小作農システムによって、いまだに農家はその骨格になっています。
GHQによって作られた農業体質は、戦後直後の闇市時代には成功したモデルでした。しかし、現代においては個人農家が経済的に自立が出ない仕組みになっています。ここの歴史観を理解しないと、いまの日本の農業は改革できないと思います。
まずは、どのように改革をしていくのか?
キーワードは、2つあると考えています。それを柱にすることによって、日本の農業は飛躍的に変わり、新たなステージに立つことが出来ると見ています。抽象的に見えますが、実は核心的だと見ています。
もの作り文化 ー勤労精神・文化ー
世界は日本人の味覚に向かっている
世界は日本人の味覚に向かっている
1)もの作り文化 ー勤労精神・文化ー
もの作り文化は、日本民族の伝統と産業の一体の中で、長い歴史と文明の進化によって、完成されたてきました。その1つが、日本農業です。そして、日本民族は農耕を国体の中心にしながら文明を発展し、他民族とは違う農業史観の中で農業を進化させてきました。そこには、もの作りに誠実に向き合う勤労精神と命を育てる仕事を、社会に入れながら育んできました。
そこは、西洋の奴隷文明で奴隷+農業(農奴)という歴史からスタートした民族とは、まったく違う世界観から社会がはじまっています。ある意味、人の精神界の世界に通じる仕事であり、宗教観に通じるものが農業の中心にあります。
日本は独特の文化を持ち、仕事を精神と一体化させて勤労精神という世界観を持った特殊な民族です。他民族とは違う歴史観と人生観を持っています。そもそも、多民族は労働を悪として身分が低い者(労働=奴隷)がするとされてきました。日の本農耕文化には、ただの産業という側面よりも人の精神に通じる世界があるということ。
実は、「もの作り文化や精神」は伝統文化にも繋がり、日本製が世界トップになるのは根底には勤労文化(勤労精神)が宿っているからです。
2)世界は日本人の味覚に向かっている
「発想を変えるだけで、日本農業は世界の中心にる」核心は、ー世界は日本人の味覚に向かっているーこの現象だと思っています。1番目は、過去からの人知だとすると。2番目は、未来に向かっていく人知であるということ。そして、日本農業はこれを柱にすると未来に繋がっていきます。この事実を知っている日本人は、ほとんどいないと思います。いま、多くの日本の外食産業や食品関係の人たちは、日本食がブームだから海外では売れると見ていますが、本質はまったく違います。実は、世界の人たちは味覚脳が幼稚味覚であったため、日本人の食文化によって覚醒されたと言っていいかもしれません。
この事実を捉えると、日本人に生まれただけで特殊な技術を持っていることになるのです。料理のプロの世界は別にして、他民族の味覚の幅の狭さは驚くほどです。日本人の味覚脳を持って世界に出れば、必ずその地域で一番の味覚脳を持つ人になれます。
その能力を使って、世界各地域で農耕をしたら必ず美味しいモノを作ります。なぜなら、不味いものを作らない特質を持っているからです。
この思考をわかりやすく経済的に言えば、「技術」と「世界市場」の組み合わせと言ったほうがわかりやすいかもしれません。その技術を、世界市場に持っていけば、産業として成り立つということです。
技術: 先代から受け継がれた技術は、その人の仕事の姿勢や精神です。高い技術は、単純にマニュアルだけでは伝達できません。その個人が持っている生き方や姿勢が、技術に反映し個人の精神の世界に通じる匠の世界観に繋がっています。刃物の世界や料理人の世界や宮大工は、すべて匠の世界です。農耕世界も匠の世界に繋がっています。
世界市場: 日本の農業や外食産業は、国内競争の中で身を削りながら切磋琢磨して、生き残りの死闘を繰り広げています。その国内市場から、世界市場に視点を変えるだけで、ブルーオーシャンの中で市場を広げることが出来ます。世界は日本人の味覚に向かっていると言うのは、農業や食品産業が世界市場に出て行っても、現地で受け入れられることを意味します。
この発想を柱にして、世界に日本農法を輸出するだけで、日本の農業はすごく変わります。そのときに必ず必要なのは、現地で日本人が農業をすることです。勤労精神と匠の世界を日本人がするから、意味があるのです。
日本の農業技術は、世界トップクラスの農法と生産性を持っています。その技術を他民族に渡すのではなく、現地で日本人が地域に根ざした産業を作り、生産から物流に至るまで日本民族の仕事にすることで次世代の未来が描けます。日本の農業が世界に出ていけば、すそ野が広がり外食産業や食品加工の分野まで進出でき、次世代の仕事のフラットフォームにもなります。
この大きなグランドデザインで日本農業の設計を作り変えれば、人と技術と文化が一緒になって世界に出ていけます。これは、国益にも繋がり日本の農業は、世界で巨大な産業を作ることが出来ます。