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インクとケント氏 小説編

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まだ推敲が終わっていない、途中だけれど、見本として。ボクはこういうものを書いている証として。 過去に書いた4本の短編は、有料マガジンへ移しました。
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2016年9月の記事一覧

マスケラを狩る者〈第六章〉置屋

俺達は旦過マーケットを出ると、紫川に注ぐ支流の神嶽川沿いに歩いた。川幅も狭く、このあたりは寺社ばかりで沿道は暗い。
「白 眞一(ぺく ジンイル)の家は馬借町です」
「金 愛淑(キム エスク)もおると話が早いんですがね」
「しかし、なんで白は今日マーケットに来んかった?」
悪い予感がした。

まさか白がマスケラなのでは……だから昨日は俺の前ではとぼけてみせて、逃亡を図った可能性もある。

「岡勢、伊

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マスケラを狩る者〈第五章〉青い男

来ていないと分かってる者が来たかどうかを確認するのは、躊躇われた。だか確認をするのも刑事にとって必要な仕事だ。
「岡勢に面会?来とらんですよ」
受付の警務係は、やはりそう応えた。

「なんか、きさん。被害者に心当たりでもあるんか?」
「……はい」
「頭もないのに、なして分かるっちゃ?親族は小倉にはおらんっち言いよらんかったか?」
「傷痕です……太ももの。留置所にいる王道會の岡勢の女です」
「なんち

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