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ビジネスエピソードが好きな方なら、絶対に満足できるこの本を勝手に大推薦したい

契約書は、ビジネスの理解の上に成り立つもの。自分がすべてのビジネスを経験することはできませんが、どんなビジネスでもヒアリングできるよう、すべてのビジネスへの理解力を磨いていたいものです。

ところで、電車移動中にはスマホに没頭するのではなく、(紙の)ビジネス書を読みたい僕はいつも、手に取りやすいサイズで、さがわしさの中でも集中して読みやすい(あまり難しすぎない)、なおかつ話の新鮮味もあっておもしろそうな本をいつも探しているのですが、こうしたこだわりの基準を難なくクリアし、なおかつ早くも今年ベストワンといっていいほどに興味深かった、最高にクールな本に出合ったので、勝手に推したいのです。

というわけで、ネタバレを一切させずに感想だけ書きます。いわゆる「ビジネスエピソード」の類が好きな方なら、絶対に読まれた方がいいおすすめの本です。

その本とは、
著者:川内イオ
タイトル:農業フロンティア 越境するネクストファーマーズ
(文春新書 定価880円+税)
です。

読みやすくて面白い

まず、適度にエモい文体といい、どんなに複雑なビジネスのストーリーでも時系列を適度に組み替えるなどしてあざやかにまとめあげることで、一瞬も読み手を飽きさせることがない構成の技術といい、とにかく読みやすい本です。

そして登場する経営者の「人生の濃さ」ともあいまって、まるでガイアの夜明けと情熱大陸の後に大ヒット映画を立て続けに何本か観たかのような、余韻にしびれる読後感が待っています。

農業って面白い

農業のことはほぼ何も知らない僕でも、難しい技術や統計の話ではないので心配無用。理系、文系、誰もが問題なく読めるはずです。

「越境するネクストファーマーズ」というサブタイトルの通り、根底に流れるテーマは「越境」、つまり分野、技術、国境などを「越え」てきた登場人物たちが(異分野から新規参入して)農業に挑戦し、さまざまな壁を突破していくエピソードが、スピード感をもって紹介されています。

農業といえば、ご多聞にもれず「高齢化」しており、統計的には新規就農者の7割以上が「食っていけない」といわれるいわゆる「稼げない」職業の代表格といっていいでしょう。実に課題山積み、疲労感、硬直感でいっぱいの、まあ素人目に見ても十分危機的分野なはずなのですが、そこに「農業フロンティア」たちは自ら、あえて、果敢にダイブしていきます。

新しさが面白い

こう書くとどこか「プロジェクトX」的な苦労や、苦節〇〇年、血のにじむような努力の末にようやく・・・みたいな話を連想しそうですが、どのエピソードにも不思議と悲壮感はありません。いや、もちろんご苦労はいろいろあってのことなので、時流にのったとか簡単に成功したとかそういう意味ではないのですが、大変なんだけど視野を広げると面白さが圧勝している絵ができあがる感じで、読んでいて気持ちは高まるのです。

もちろん農業は農業でも、従来通りの典型的なそれではなく、本書の登場人物たちがその異分野の知識や経験とアイデアをもって、あらたな商品化、ブランド化、流通の改革、あたらしい技術の導入、・・・等々を経て切り拓いている「ネクストファーマーズ」だからこそのおもしろさです。この、新旧の接触と摩擦熱みたいなものが、あるときは挑戦者の行く手を阻むことで苦労を生み、またあるときは痛快なイノベーションや、いわゆる「成功」をもたらすんじゃないかと思えてきます。(しかし本当に大切なことは、登場人物たちの経済的社会的成功だけにあるのではなく、いまや枯れた大地のようにも見える農業の世界に、未来から希望をたぐりよせた熱意と行動力にこそあるように感じられます。)

知らなかったから面白い

もうひとつの本書の魅力は、農業について「知らなかったこと」の多くに、ページをめくるたびに次々と気づかされる、発見のたのしさです。農業とは、食料生産でもあり、環境整備でもあり、肥料化学や生命科学でもあり、ロジスティクス、ロボティクスを含めた工学でもあり、もちろん歴史、地政学、人類学、ときには哲学やアートでもあるものだと思います。

本書に出てくる農業は、品目も多種多様なうえに新技術や新アイデアが満載で、飽きないどころか「知らなかった新知識」の宝庫です。商談の合間にはさみたい、ちょっとした話題のネタというレベルじゃなくて、各分野に興味が湧いて、本書がきっかけになってのめりこむ方も出てくるのではないでしょうか。

良書はこうやって、自分の内面世界を広げてくれます。本書を読んで、「農業」という多数の分野と人類の叡智の交差点を、今日も未来の方向にべた踏みで突っ走っておられる本書の登場人物たちを想像して、心の中で強く応援せずにはいられませんでした。

以上、最近読んだ本のおすすめでした。


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