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コロナから一年でロボットの社会実装は加速されたのか?

武漢でコロナが広がった一年前、現地でのロボット活用状況を纏めた記事を書きました。

あれから一年、日本のロボット業界はどう変わったのか?変わらなかったのか?これからどうなるのか?を考えてみたいと思います。

一年前の記事では特に武漢でどんなロボットが使われているのか纏めています。具体的には

・施設内搬送ロボット
・屋外搬送ロボット
・消毒殺菌ロボット
・遠隔コミュニケーションロボット

の活用を紹介。あれから一年、それぞれ日本でどんな感じになっているかをざっくり言えば、

● 施設内搬送ロボット
:一気に活用広がり始めた。爆発的速度で浸透するかも。
● 屋外搬送ロボット
:国がリーダーシップを取って推進中。実証が沢山。まだまだ米中には遅れあるも、課題は世界中で同じか?
● 消毒殺菌ロボット
:20年前半はかなり活動がアクティブ。現在は落ち着いているか!?
● 遠隔コミュニケーションロボット
:ニュースはかなり多い。実導入、活用状況はニュースなどからはよく分からず。

世界的にみても、大きなトレンドは似ているように思います。以下の国の資料なんかをみると、これまでの2,3倍売れているケースが多いみたいです。

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引用:経済産業省 ロボット実装モデル構築推進タスクフォース活動成果報告書

では、それぞれ詳しく見てみましょう。

施設内搬送ロボット

飲食店を中心として一気に導入が進みました。最初は武漢でも活用がされていた中国KeenOnのロボットが日本でも活用が始まったという感じでしたが、20年度後半はソフトバンク「Servi」の商品化が発表されて以来、怒涛の勢いで活用が進んでいっています。スタンダードと言えるレベルまで行くかもしれないというスピードと完成度です。

300店舗以上導入リリースはロボット関係で今年度No.1のインパクトかもしれません(個人的に)。

飲食はコロナで最もダメージ受けたかもしれないからこそ、思い切って施策を打っていくより仕方なかったのかもしれません。ロボット側からしてみると、通路に人がいるとか、そこまで通路幅が広くないというのはありますが、ほぼ運ぶものが同じようなものであり、バリアフリー環境であり、ワンフロアであるというのはやりやすかったのかもしれません。

屋外搬送ロボット

EC増加やフードデリバリー増加により、米国や中国では当たり前にされていた屋外公道の搬送ロボットが、遅ればせながら日本でも公道実証が始まりました

国内の動きの全ては20年6月の安倍総理(当時)のこの発言で一気に動いた気がします。

『宅配需要の急増に対し、人手を介さない配送ニーズが高まる中、低速・小型の自動配送ロボットについて、遠隔監視・操作の公道走行実証を年内、可能な限り早期に実行する』

2020.12月の最新の国の成長戦略実行戦略においても以下のように書かれているので、菅内閣に変わっても方針に変化はおきていないようです。

『ウィズコロナの時期が一定期間続く中で、利用者、従業者の安全につながる非接触型の自動配送サービスを早期に実現する。本年10月より開始した公道走行実証の 結果を踏まえて、遠隔で多数台の低速・小型の自動配送ロボットを用いたサービスが可能となるよう、来春を目途に制度の基本方針を決定し、2021年度のできるだけ早期に、関連法案の提出を行う。』

これまでに2020年だけで日本郵便、楽天、三菱地所、パナソニックが公道での低速小型の配送ロボットを用いた実証を行なっています。最新では、ZMPがENEOSや複数の飲食店と組んだサービス実証を開始したようです。

NHKでもわかりやすく解説がなされています。

今後の課題はやはり多くのメディアでも指摘されていますが、どのようにしてビジネスを回すようにするかという点になってくると思います。

消毒殺菌ロボット

20年度前半はかなりメディアを賑わせていた気がしますが、最近では報道が減っているように感じます。(理由は分かりません)

メトロ、高輪ゲートウェイ駅などなど非常に多くの場所でメディアに多く出ていたのはZMPでしたが、それ以外にもdoog、ファームロイド、サイバーダインなどが出ていましたね。

気になるのはどれくらいの効果があるのかという点です。上述のファームロイドや研究機関などからも既にしっかりとしたデータ【Link】などが提示されていますが、私の理解している限りはCOVID-19に対するロボット活用に関するエビデンスはまだまだ少ないような気がしています。もちろん、ロボットを使って消毒や殺菌をした方が何もしないより有効であるというのはエビデンスは比較的早期に出てくるとは思うのですが、ロボットで消毒したから全て大丈夫というのではなく、ロボットが消毒してもこういう所はウイルスが残るとか、どれくらい効果が維持するのかという限界をしっかりエビデンス化し、現場のオペレーションに役立てていくことが今後大事になるでしょう。

遠隔コミュニケーションロボット

こちらは継続的にリリースが出ているような気がします。代表的なのはavatarin、オリィ研究所といったところでしょうか。

実際の現場で活用されているとは思いますが、(リリースを見ただけでは実証なのか実導入なのかは判断しかねますが)おそらく売り切りというビジネスモデルでも無いと思いますので、これからいかにユーザー数を増やしていけるかというのもポイントになってくるかもしれません。

また、技術的には、身体的な存在感や画像解像度や音声遅延などの強化による存在感、繋がっている感を徹底的に実現していくことで、おそらく競合ともなってくるビデオ通話に対峙していかないといけなくなるでしょう。

このような類いの取り組みは、大型ナショナルプロジェクトであるムーンショットPJの中でも『2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現』とされていますので、日本もしくはグローバルにも研究開発としても引き続き盛り上がっていく領域でしょう。

AI的なコミュニケーションロボットも介護用途や受付用途で定期的にニュースになっていますが、こちらも本格導入具合はよくわからないです。

産業用ロボットなど

コロナ当初の2020年前半は影響が大きいと言われていましたが、中国の回復が早かったこともあり、業界としてはしっかりと回復を維持し、2020年に続き、2021年は前年比4%増の8840億円と予測されています。(産ロボに関しては、2019年が前年比マイナスになっていますが、2020年は前年比増8500億円と既に回復しています)

先日、ファナックも2020年度業績予想を売上高5323億円(前年比4.7%増)、営業利益1058億円(同19.8%増)と大幅に上方修正しています。

また、川崎重工業は産ラボの新たな用途として自動PCR検査に取り組んだりしています。ファクトリーオートメーションの技術をラボオートメーションに展開するという取り組みだと思いますが、この領域はなかなか継続的に事業を成立させるのが難しいとも言われていますので、企業内用途などをどれだけ取り込んでいけるかがポイントになるでしょう。

これら以外にも例えばメディカロイドによる国産手術ロボット上市や農業分野での取り組みや掃除ロボットの活用などのありましたが、コロナ後一年でロボット業界がどうなったかをコロナ影響があった領域を中心として纏めてみました。

総じて見ると、『加速した!』というのが正直な印象です。一方で、飲食店内搬送以外はまだまだ当たり前というレベルには程遠いというのも現実かと思います。

数年後にどうなっているかはわかりませんが、2020年が変化のきっかけであることは間違いないです。コロナにより飲食など多くの業界の方々が困っています。その方々や新しい生活スタイルの中で必要とされるロボットを、早く、リーズナブルに提供する企業が受け入れられていくのでしょう。私も当事者なので、しっかり頑張っていきたいと思います。

では、また来週~〜
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安藤健(@takecando)

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