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すべての母親にYESと言おう。「スゴ母列伝~いい母は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける~」堀越英美

育児と介護で最大のタブーは、金も手も出さないのに口だけ出すこと

ネットやSNSには、ありとあらゆる育児情報が溢れている。悩める母親を救う情報もたくさんあれば、もちろん追い詰める類の情報も。
インスタを覗けば、美しく飾られた食卓でバランスの良い食事を家族で囲み、掃除の行き届いた部屋でセンスの良いインテリアが映り込んだ写真にいいね!の嵐。
乳幼児が2、3人いて夫婦共働きでも心に余裕をもって常に愛情深く子どもに接し、休日にはむしろちょっと早起きして豆から挽いたコーヒーを飲んで至福の一人時間・・・動悸がしてくる。いや胸やけか?

子供が少食だ、歩かない、しゃべらない、などとちょっとネットで相談しようものなら、四方八方から瞬時にアドバイスが矢のように飛んでくる。芸能人の育児に関するSNSのちょっとした投稿が炎上する。育児警察か?

もちろん情報に救われる人もいるだろうが、この息苦しさは何だろう。

環境は変わったのに意識が変わっていない。

ネットとSNSの普及で、育児環境は確実に変わった。
でも、社会が求める滅私で子に尽くす「理想の母親像」は、たぶんそんなに変わっていない。
もうね、無理だって、と多くの人が薄々気付いているのだけど。

保守たちよ、偉人たちの母親を見よ

岡本太郎の母・作家の岡本かの子は、小さな太郎を柱に縛り付けて仕事に励んだ。
モンテッソーリ教育の創始者として名高いマリア・モンテッソーリは、未婚の母で自分の子を自分で育てることが叶わなかった。
ノーベル賞を受賞したキュリー夫人は、娘の数学の出来の悪さにキレて窓からノートを投げ捨て、仕事に邁進しつつ不倫もしていた(娘ものちにノーベル賞を受賞する)。
ほかにも、養老孟司の母親・静江、山川菊栄の母・青山千世など、日本を含め世界の偉人たちの母親が、どんな育児をしていたかが紹介された本である。

このお母さんたちが現代でSNSをやっていたら炎上必至だっただろうな、と過激エピソード連発である。燃料投下しすぎ。

過激すぎる教育ママ(鳩山一郎の母・春子)も登場する。幼稚園児を朝3時半に起こし、2時間勉強させるなど、今なら「教育虐待」としてこれも大炎上しているだろう。
しかし母たちは自分の信念を貫き、周囲の目なんて気にしない。
そして共通するのは、そんな母親を子供たちは心から愛したということ。
母親の個性が爆発しており、聖母のような母親像に合致した人が皆無である。特に子育て中の親は勇気づけられることこの上ない本である。
テンポの良い文章で、さくっと読めて元気になれ、現代の育児の閉塞感を打ち破ってくれる。

育児に正解はない。
ないのなら、やっぱり自分の好きなように、自分の人生を楽しんで思い切り育児をしよう。



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