CSRとCSV
大きな企業と仕事をしている中で、
「ブランディング」という言葉を聞くことが多くなった。
この言葉が厄介で、
クライアントの色んな人が、それぞれが思っている意味での「ブランディング」という言葉を口にし、
各協力会社の色んな人が、それぞれが思っている意味での「ブランディング」という言葉を口にする。
さらに、クライアントも各協力会社も、
ここで使われている「ブランディング」の意味を自身でよく分かっていないのも理解している・・・。
なぜなら・・・会議中のクライアントの発言で、
「いま、我々が取り組もうとしている、ブランディング?の流れでも・・・」
のように、「ブランディング」発言の後に「?」が聞こえるからである。
つまり、
「いま、我々が取り組もうとしている、(よく分からんけど、役員もずっと言っているし、会社の方針でも強化していくことが決まっているし、説明しろと言われてもうまく説明できないから、何か偉そうに言うのは恥ずかしいんだけど。えっと・・・)ブランディング?の流れでも・・・」
と言っているのが行間で伝わる。
■ブランディングとは
私が理解しているのは、
◎マーケティング・・・ニーズに応えて、買ってもらうこと
◎ブランディング・・・期待をつくって、買い続けてもらうこと
という事であり、
多くのクライアントが最重要課題として位置付けている「日本の高齢化・人口減少」という状況において、
新規獲得ばかりやっているのではなく、
CRMを強化して、離反抑制を行っていくという狙いから、
ブランディング(=期待をつくって、顧客に買い続けてもらうこと)という言葉が使われているのだと思う。
事業を継続・成長させていく中においては、
新規獲得とCRMは、どちらかができればOKということではなく、
両方のバランスを保ちながら取り組むことが重要であるため、
もちろん、この時代において、ブランディングはとても重要なのだと思う。
ブランディングとは、ずっと付き合ってもらい、買い続けてもらうために、企業と顧客の関係性をつくること。
明らかに商品機能に差があれば、ずっと買い続けてもらえるだろうが、
コモディティ化が進んでいる業界においては、商品機能も金額も(顧客が有意な差と感じるような)差がなく、
機能価値ではない、「何か」で商品を選択している。
しかも、その「何か」は顧客自身でもよく分からない。
顧客に「何となくいいじゃん」と思われる関係を作れているかどうか。
■ブランドのつくり方
ダイキンの片山さんが言っていたが、「ブランドとは、その商品・サービスかれ連想されるものすべて」。
そして、それが、そのブランドに対する期待となる価値になることで、売上にも貢献する。
ではどのようにブランドを作るのか?
ブランドは、その企業や商品・サービスの接点すべてで作られていくものであり、
◎その商品・サービス自体は最重要の接点で、
◎店舗で買うのであれば、店舗も接客も重要な接点で、
◎情報を仕入れたり購入したりする、WEBサイトも重要な接点で、
◎購入商品が包まれている、包装も重要な接点で、
◎購入後のアフターサポートや情報提供も重要な接点で、
◎コールセンターのオペレーターの対応も重要な接点で、
◎その商品・サービスの周辺サービス・付帯サービスも重要な接点で、
それらすべての体験でブランドが作られる。
これらのブランドを構築する実体あるアクションをブランドアクションと呼ぶ。
広告は、その実体ある体験の「期待をつくり、注目してもらうこと」が役目であり、
実体が伴っていなければ、ブランド広告と呼ばれるようなふわっとしたイメージ広告だけでは、反対に顧客の失望につながる可能性がある。
顧客の中に、その商品・サービスを通じた「実体ある体験」によって、ブランドがつくられていく。
さらに、顧客は、商品・サービスを通じた体験にお金を払っているのであるり、商品だけにお金を払っているのではない。
■提供価値
企業は「商品を売るため」に、顧客に商品を提供しているのではない。
企業は「顧客のニーズに応えるため」に、顧客に商品を提供している。
最近の言い方だと、
「顧客のペインを解消するため」であり、
「顧客のジョブを片付けるため」であり、
「顧客の未充足のニーズに応えるため」である。
企業が顧客に提供したい価値は、
商品を売ることではなく、
顧客のニーズに応えることであり、
商品を使ってもらうことはニーズに応えるイチ手段である。
つまり、商品を通してでなくとも、ブランドアクションはあり得ると思う。
■CSRとCSV
「ブランディング」という言葉がよく使われるようになってから、
商品販売に直接つながっていない取り組みが増えてきた。
社会課題を解決するような取り組みだ。
しかし、これが単なるCSRになってしまっている企業は多いと思う。
CSRは、社会のためになる活動であるが、自社のビジネスには関係ない。
CSVは、自社のビジネスを拡大しながら、社会のためにもなる活動である。
地球環境のためになるゴミ拾いの活動をしている良い会社。
となっても、売上には何の寄与もない。これはCSR活動。
CSVは、その社会課題を解決する活動が、自社のビジネスに直結していることだ。
リクルートの提供する「スタディサプリ」は、
「地方の高校生も、安くて高品質な勉強をしたい」という顧客ニーズに応えながら、
その先の「日本の教育の不平等」という社会課題にも応えている。
そして、事業を伸ばしていくその先にある、
世の中を良くする”ビジョン”を目に見えるように示すことで、
新しい顧客を集まり、
新しい投資家が集まり、
新しい社員が集まってくることにつながる。
さらに、広告代理店の身として実感していることとして、
そのビジョンは協力会社のモチベーションにつながり、
強力なサポートにつながっていく。
みんな、自分の選択や行動に”意味を求める”時代になっているのだ。
■アクションでビジョンを語る
商品を売ることに直接つながっていないアクションであっても、
そのアクションが、企業の根幹を示すような本質的で魅力的なビジョンを示すのであれば、
ステークホルダーの期待をつくり、巻き込み、顧客をつくり、ともに共創して叶えたいビジョンになる可能性がある。
その行動は、ブランドの本質やブランドの精神を表しているか。
GOの三浦さんが言っていたが、
「そのアクションは、半永久的に続けられるくらい本質的なものなのか?」
これが重要な判断基準になると思う。
アクションでビジョンを語る。
さらに、これまたどなたかの引用なのだが・・・
今、求められているのは、言葉や思想だけでなく、
直接的に生活者に訴えかけて、
意識を変えたくなるようなブランドの行動=ブランドアクションである。
生活者にとって当たり前のことを、企業が伝えたからといって何の変化も生まれない。
意識を変えたくなるということは、
生活者が、
・知らなかった、気づいていなかった
・共感し、応援したくなるような価値を感じる
『ニュース』となる企業の実体あるアクションが必要になっている。
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