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第4章 毒と人間 4-4 毒と暮らす 1.中毒とアレルギー、コラム10 LD50~毒の強さの比較、および、コラム11 中毒と依存症:「特別展「毒」」見聞録 その29

2023年04月27日、私は大阪市立自然史博物館を訪れ、一般客として、「特別展「毒」」(以下同展)に参加した([1])。

同展「第4章 毒と人間 4-4 毒と暮らす 1.中毒とアレルギー」([2]のp.144-145)は、展示物はなかった。

人体には、感染性微生物(例.細菌、ウィルス、寄生虫)や異物などから、身を守るための「免疫」という仕組みがそなわっている。この免疫の働きが、現代文明による環境やライフサイクルの変化によって異常を起こし、くしゃみ、発疹、呼吸困難などの症状を起こしてしまう状態が「アレルギー」である。

アレルギー疾患には、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、薬剤・昆虫アレルギーなどの症状・経過とも多様な疾患が含まれる

アレルギーの原因となる物質を「アレルゲン(抗原)」といい、私たちの身のまわりには、食物、花粉、ダニなど多くのアレルゲンが存在する。このアレルゲンが体の中に入ると異物とみなして排除しようとする免疫機能が働き、「IgE抗体」という物質が作られる。この状態が「感作」である。いったん感作が成立した後に、再度アレルゲンが体内に入ると、IgE抗体がくっつき、マスト細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され、アレルギー症状を引き起こす([3])。

アレルゲンは、吸入性アレルゲン、食物性アレルゲン、薬物性アレルゲン、および、接触性アレルゲンに分類される。子供のアレルギーで特に問題なるものが、吸入性アレルゲンと食物性アレルゲンである([4],[5])。

吸入性アレルゲンには、ほこり、カビ、ダニ、花粉(例.ブタクサ、カナムグラ、スギなど)、および、カビ(例.アルテルナリア、ペニシリウム、カンジダ)がある。

食物性アレルゲンには、卵、乳、小麦、そば、および、落花生などがある。

薬物性アレルゲンには、抗生物質(特にペニシリン系やセフェム系)、鎮痛剤、非ステロイド抗炎症薬、ホルモン剤、酵素製剤、および、造影剤などがある。

接触性アレルゲンには、化粧品、塗料、衣服、金属、うるし、および、ラテックス(ゴム)などがある。

アレルゲン、食物アレルゲンの本体の大部分は、食物に含まれるタンパク質である([6])。

実をいうと、私は子供の頃から、毎年03月頃スギ花粉症([7])に悩まされてきた。しかも、この時は、季節の変わり目ゆえ、風邪にも悩まされてきた。それ故、この時、スギ花粉症と風邪の区別がつかないことに、苛立ちを常に覚えてきた。

しかし、2014年10月08日、鳥居薬品株式会社が減感作療法(アレルゲン免疫療法、以下同療法)薬「シダトレン®スギ花粉舌下液」(「シダトレン®」)を、医療用医薬品として販売したことで、私は地元の耳鼻科で同療法を受けることができるようになった(図29.01,[8])。

なお、2018年06月29日、鳥居薬品株式会社は、スギ花粉症に対するアレルゲン免疫療法薬「シダキュア®スギ花粉舌下錠」(「シダキュア®」)を、医療用医薬品として販売した。そして、2021年03月31日、シダトレン®を販売終了(経過措置期間満了および薬価基準削除)させた([9],[10],[11])。

図29.01.鳥居薬品株式会社 シダトレン®スギ花粉舌下液 一式。
左奥.第01~07日用。右奥.第08~14日用。手前.第15日以降。
撮影日:2014年11月01日。

同療法の完遂には4年の歳月を要したが、「スギ花粉症と風邪の区別がつかないという苛立ちに40年以上も悩まされてきたことを考えれば、たった4年の歳月など乗り越えて見せるわ」という気迫を示すことで、無事完遂できた。その結果、その代表的な症状であるくしゃみ、鼻水、および、鼻づまりを治癒できた(7)。なお、同療法は体力だけでなく、精神力(特に根気)が要求される。

「コラム10 LD50~毒の強さの比較」で、半数致死量(50% lethal dose:LD50)が言及された(図29.02,2のp.146-147)。

LD50は化学物質の急性毒性の指標で、実験動物集団に経口投与などにより投与した場合に、統計学的に、ある日数のうちに半数(50%)を死亡させると推定される量(通常は物質量[mg/ k g体重]で示す)のことである。LD50の値が小さいほど致死毒性が強いことを示す([12])。

多くの強い毒は微生物によって産生され、食物連鎖によって別の生物の臓器に溜められている。

日本厚生労働省では、経口投与した場合、LD50が50mg/kg以下のものを毒物、LD50が50mg/kgを越え300mg/kg以下のものを劇物と定義している([13])。

また、毒物には低用量では、逆に何らかの薬効が認められる場合がある。こうした物質においては、薬効が得られる最小有効量と、中毒を起こしてしまう最大有効量がLD50より低い値として得られる。この両者の間が治療に使用される常用量となる。

図29.02.LD50~毒の強さの比較。

 「コラム11 中毒と依存症」で、中毒と依存症が言及された(図29.03,2のp.149)。

薬物においては、薬物中毒は毒が体内にあり、その毒の作用で体に異常を来している状態である。それ故、その薬物が身体から消えれば治癒する。

一方、薬物依存症は単にもう一度その薬剤を使いたいという気持ちが強いだけではなく、使うことが自分の生活や人生をダメにしてしまうと分っていても、使うことに抵抗ができないような状態である。従って、頭の中がその薬のことで一杯になってしまう。薬がなくなると居ても立ってもいられず、その薬を得るために何でもするようになり、暴力や犯罪、借金などに結びつくこともしばしばある。

薬物依存症は、体内からその薬物が消えても欲求が抑えられず、症状がずっと続くところが薬物中毒と異なる([14])。

図29.03.中毒と依存症。

 「第4章 毒と人間 4-4 毒と暮らす 1.中毒とアレルギー」、「コラム10 LD50~毒の強さの比較」、および、「コラム11 中毒と依存症」の感想の代わりとして、以下の有益なサイトを紹介する。

1.アレルギー

l   一般社団法人 日本アレルギー学会.“アレルギーポータル ホームページ”.https://allergyportal.jp/,(参照2023年08月24日).

l   一般社団法人 日本アレルギー学会.“アレルギーを知ろう”.日本アレルギー学会 ホームページ.一般の皆様へ トップページ.https://www.jsa-pr.jp/html/knowledge.html,(参照2023年08月24日).

l   株式会社 明治.“食物アレルギーとは?”.明治の食育 ホームページ.食物アレルギーを知ろう.https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/food-allergy/about/01/,(参照2023年08月24日).

l   公益財団法人 ニッポンハム食の未来財団.“食物アレルギーとは”.ニッポンハム食の未来財団 トップページ.https://www.miraizaidan.or.jp/allergy/,(参照2023年08月24日).

2.中毒と依存症

l   厚生労働省.“依存症対策”.厚生労働省 ホームページ.政策について.分野別の政策一覧.福祉・介護.障害者福祉.https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789.html,(参照2023年08月24日).

l   千葉県.“アルコール依存症とアルコール中毒の違いは何ですか。”.千葉県 ホームページ.相談・問い合わせ.よくある質問.QA(くらし・福祉・健康).QA(健康・医療).2023年01月30日.https://www.pref.chiba.lg.jp/kenshidou/faq/390.html,(参照2023年08月24日).

l   株式会社サイゾー.“ストロングゼロで「自殺行動」「暴力」も――松本俊彦氏が“ヤバイ酒”に警鐘”.サイゾーウーマン ホームページ.カルチャー.インタビュー.2020年01月24日.https://www.cyzowoman.com/2020/01/post_266793_1.html,(参照2023年08月24日).

関連記事


参考文献

[1] 独立行政法人 国立科学博物館,株式会社 読売新聞社,株式会社 フジテレビジョン.“特別展「毒」 ホームページ”.https://www.dokuten.jp/,(参照2023年08月21日).

[2] 特別展「毒」公式図録,180 p.

[3] 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター.“アレルギーについて”.国立成育医療研究センター トップページ.患者・ご家族の方へ.病気に関する情報.子どもの病気.アレルギー.https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/about_allergy.html,(参照2023年08月21日).

[4] シースター株式会社.“アレルギーとは”.シースター ホームページ.健康情報.https://www.seastar.co.jp/healthcare/allergy/,(参照2023年08月22日).

[5] 中外製薬株式会社.“薬物アレルギーとは”.中外製薬 ホームページ.患者さん・一般の皆さま.からだとくすりのはなし.からだとくすり.https://www.chugai-pharm.co.jp/ptn/medicine/body/body005.html,(参照2023年08月22日).

[6] 一般社団法人 日本小児アレルギー学会.“第3章 食物アレルゲン総論”.食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版 ホームページ.https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_3.html,(参照2023年08月22日).

[7] 鳥居薬品株式会社.“スギ花粉症もアレルギー疾患”.トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ トップページ.アレルギー性鼻炎を知ろう.https://www.torii-alg.jp/cedar/,(参照2023年08月22日).

[8] 鳥居薬品株式会社.“スギ花粉症を対象とした減感作療法(アレルゲン免疫療法)薬 「シダトレン®スギ花粉舌下液」薬価収載および新発売のお知らせ”.鳥居薬品 ホームページ.プレスリリース.2014年.2014年09月02日.https://www.torii.co.jp/release/2014/140902.html,(参照2023年08月22日).

[9] 鳥居薬品株式会社.“スギ花粉症に対するアレルゲン免疫療法薬「シダキュア®スギ花粉舌下錠」新発売のお知らせ”.鳥居薬品 ホームページ.プレスリリース.プレスリリース バックナンバー.2018年.2018年05月24日.https://www.torii.co.jp/release/2018/20180524_1.pdf,(参照2023年08月22日).

[10] 鳥居薬品株式会社.“デジタル版(PDF形式) 6.5MB”.Torii Medical Plaza ホームページ.お役立ち情報.医療関係者向け・患者向け資材.シダキュア.処方いただくための留意点(医師向け).https://www.torii.co.jp/iyakuDB/data/material/tk_slit_dr.pdf,(参照2023年08月22日).

[11] 鳥居薬品株式会社.“シダキュアとは?”.トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ トップページ.シダキュアを服用される患者さんへ.https://www.torii-alg.jp/cdq/whats.html,(参照2023年08月22日).

[12] 株式会社 食環境衛生研究所.“半数致死量”.食環境衛生研究所 トップページ.用語検索.は.2023年08月02日.https://www.shokukanken.com/dic/dic_2389/,(参照2023年08月23日).

[13] 厚生労働省.“参考資料 毒物劇物の判定基準(最終改定:平成29年2月)[PDF形式:230KB]”.厚生労働省 ホームページ.政策について.審議会・研究会等.薬事・食品衛生審議会(毒物劇物部会).薬事・食品衛生審議会薬事分科会 令和4年度第1回毒物劇物部会資料.https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001001870.pdf,(参照2023年08月23日).

[14] 株式会社 メディカルノート.“薬物依存症とはどのような状態?薬物中毒との違いについて”.Medical Note トップページ.病気を調べる.薬物依存症.薬物依存症の記事一覧.2015年04月17日.https://medicalnote.jp/contents/150415-000003-YYVWFD,(参照2023年08月24日).

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