9価HPVワクチンの定期接種開始:これが、私を含む医療翻訳者、医療ブロガー、および、医療従事者の勝利である

2022年10月04日、厚生労働省厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会は、9価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを定期接種の対象とする方針を了承した。ワクチンの安定供給および自治体などでの接種体制の準備に要する時間を踏まえ、2023年度早期から定期接種を開始する予定とした([1],[2],[3])。

一方、それ以前の2022年01月27日、厚生労働省は厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会を開催し、HPVワクチンの積極的勧奨の差し控えにより接種機会を逃した人へのキャッチアップ接種の実施方法について、HPVワクチンの接種歴があり、かつ長期にわたり接種を中断していた場合でも、初回から接種をやり直すことなく残りの回数を接種できることや、過去に接種したワクチンの種類が不明な場合は、異なるワクチンを接種する「交互接種」を実質的に認めることを了承した([4],[5])。

その結果、厚生労働省はHPVワクチンのキャッチアップ接種を呼び掛けている([6])。

私はノンプロ医療翻訳者兼医療ブロガーとして、主に「ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus:HPV)関連記事まとめ 第02版」を執筆することで、HPVワクチンやその接種の啓発に携わっている。

私を含む医療翻訳者、医療ブロガー、および、医療従事者の奮闘が、HPVワクチンのキャッチアップ接種、および、9価HPVワクチンの定期接種の開始を実現させたことを、私、むしろ、私たちは嬉しく、かつ、誇りに思う。

一方で、HPV関連がん治療に関する研究も紹介する。

l  国立研究開発法人 国立がん研究センター 先端医療開発センター.“主な研究内容”.先端医療開発センター トップページ.グループ紹介.HPV関連がん予防・治療プロジェクト.https://www.ncc.go.jp/jp/epoc/project/hpv/research_summary/index.html,(参照2022年10月10日).

斎藤泉 東京大学名誉教授(現:成育医療研究センター共同研究員)と中西友子博士(微生物化学研究所)は超多重gRNAとCas9ニッカーゼを搭載したアデノウイルスベクターの開発に成功し、このベクターを用いた治療法開発のための共同研究を進めている。Cas9ニッカーゼを用いたdouble-nicking法により臨床応用で大きな問題となるoff-target切断を回避しつつ、8個のgRNAを同時に発現させることでE6E7領域を4か所切断できるベクターが開発可能である。

l  国立大学法人 京都大学.“濵西潤三 医学部附属病院講師らが「子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)に対する医師主導治験」を開始しました。”.京都大学 ホームページ.NEWS.2019年06月06日.https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2019-06-06,(参照2022年10月10日).

濵西潤三 医学部附属病院講師(産科婦人科)、萩原正敏 医学研究科教授(形態形成機構学)、万代昌紀 同教授(婦人科学・産科学)らの研究グループは、子宮頸がんの前がん病変である子宮頸部上皮内腫瘍(CIN 1もしくは2)に対する低分子化合物FIT039の有効性と安全性を検討する医師主導治験を開始した。

l  株式会社 キノファーマ.“ニュース一覧”.キノファーマ ホームページ.https://www.kinopharma.com/news/,(参照2022年10月10日).

株式会社 キノファーマは子宮頸部異形成(CIN、子宮頸がんの前病態)を対象とする第I/II相臨床試験を実施している。



参考文献

[1] 厚生労働省.“厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会)”.厚生労働省 ホームページ.政策について.審議会・研究会等.https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_127714.html,(参照2022年10月10日).

[2] 厚生労働省.“第49回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 資料”.厚生労働省 ホームページ.政策について.審議会・研究会等.厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会).2022年10月04日.https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000192554_00024.html,(参照2022年10月10日).

[3] 株式会社 日経BP.“9価HPVワクチンの定期接種化を了承”.日経メディカル Online ホームページ.医師TOP.シリーズ◎どうなるHPVワクチン.2022年10月05日.https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t354/202210/576890.html,(参照2022年10月10日).

[4] 厚生労働省.“第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 資料”.厚生労働省 ホームページ.政策について.審議会・研究会等.厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会).2022年01月27日.https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000192554_00017.html,(参照2022年10月10日).

[5] 株式会社 日経BP.“HPVワクチン、キャッチアップ接種の方法固まる”.日経メディカル Online ホームページ.医師TOP.シリーズ◎どうなるHPVワクチン.2022年10月05日.https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t354/202201/573741.html,(参照2022年10月10日).

[6] 厚生労働省.“ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~”.厚生労働省 ホームページ.政策について.分野別の政策一覧.健康・医療.健康.感染症・予防接種情報.予防接種情報.ヒトパピローマウイルス感染症(HPVワクチン).https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_catch-up-vaccination.html,(参照2022年10月10日).

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