DAZNバスケ担当の1年間 vol.④
ついにvol.④がシリーズ最終章になります。これまでVol.①~③では、
日本代表史上初の密着ドキュメンタリー"THE LOCKER ROOM"、
日本バスケの歴史に迫る"IN FOCUS"、選手に焦点を当てた"THE FOCUS"の制作話や企画した背景などをお伝えしてきました。
どれもこれもこの1年間に手掛けたコンテンツであり、
正直今自分自身で振り返ってみても良く出せたなと感心しております。
noteに残そうと思ったきっかけはそれだけ夢中になれた1年間だったから。右も左も分からない所から遮二無二になって時間もパワーも注いで、
なんとか形にすることができて、シャンと胸を張れる経験にできたから。
少し話が脱線すると、最近学生青春ものコンテンツに涙腺が弱いんです。
自分の全エネルギーを注いで野球やサッカーに打ち込み、全力で青春してたあの時期がたぶんどこかで恋しくて、画面の向こう側にいる学生達に嫉妬心があるのだと思います。
大人になるとあんな風に感情表現を前面に出して、自分に正直に行動する事が少なくなってるように感じてて、仕事では特に。
ところがバスケ担当になってからのこの①年間の経験を通して、
「青春」って若かれし時代だけを指すのではなく、
"主体的に何かに没頭して自分の全エネルギーを注いだ期間"
の事を指すのかなと。
何を今さらではありますが、僕は改めて気付けました。
最終章も自問自答スタイルで
前回のvol.③から自分で自分をインタビューする形式をとっています。
構成するのが苦手なので書きたい内容を整理できるし。
(構成下手なディレクター?)
いつぞや来ると信じる取材の為に、最終章も同様スタイルでお届けします。
以下、語り手・取材・編集/市来健
Q"Road to World Cup and Beyond"とは?
分かりやすく言うとvol.③に書いた"THE FOCUS"のチーム版です。
代表合宿やコート外の部分にカメラが潜入し、W杯へのチーム作りの過程やチームの戦い方などを一歩踏み込んだ視点で見せる事を心がけました。
このコンテンツは#1~#6までのシリーズで配信しました。
#1と#2はWindow5直前、がけっぷちにいたW杯予選を戦う日本代表。
#3はHCや選手の証言から振り返るW杯予選12試合の軌跡。
#4と#5はW杯を1カ月後に控えた日本代表のチームビルディング。
#6はW杯を戦った12戦士の言葉から見るそれぞれのストーリー
意識したのは、彼らのリアルな声に忠実になる事でした。
▼お時間ある時にご視聴ください
Q.そもそも密着しないと作れないの?
そんな事はありません。
構成の仕方は何十通りとあると思うので、試合映像を徹底的に分析したり、OBや現役選手にインタビューして、多角的に日本代表を掘ってもらったり、それぞれの見せ方でメリット・デメリットがあると思います。
ただ、今回実際に密着カメラという事で"中"に入らせて頂き、"外"からでは気づけなかった情報密度の違いがあると思いました。
Q.情報密度とは何でしょうか?
まず当たり前ですが、知れる量が違います。
代表合宿中の公開取材は多くて2~3回。その中でチーム作りの過程や戦術を汲み取る事は容易ではありません。加えて、取材機会は限られてるので、その上で中身の濃い記事や映像コンテンツをアウトプットするのは難しく、ニュース性のある形で世に出ていくのが大半かと思います。
そしてもう一つ、知れる濃度が違います。
密着取材の場合、その場に居るのはチームや協会スタッフとクルーだけ。
その中で見せる彼らの表情は素そのものに近く、行われる練習や発せられる言葉一つ一つも公開取材の時よりも"本質に近い"と思っています。
例えば調子が上がらない選手がいたとして、何十社といる公開取材の場では「順調です」と答えても、密着取材のふとした瞬間に「実は今調子が上がらなくて」と本音を打ち明けてくれるかもしれない。
この情報差が、時には本意とは異なる形で報道されてしまうかもしれない。
そこを僕らは限りなく本質に沿って届けられるメリットがあります。
Q.だけど密着ってそんなに出来るんですか?
これはタイミングとしか言いようがありませんが、
Vol.①の"THE LOCKER ROOM"で初めてDAZNの密着クルーが入りました。
この実績と経験、あとは幸いにも選手達やスタッフ陣から信頼を得られた、この事実がその後の合宿取材がやり易くなった要因だと思います。
それは協会広報の新出さんの尽力なしでは到底実現できなかったのですが(vol.①参照)、最初の密着カメラが他のメディアクルーだったとしたら、企画を提案してもここまで実現出来ていなかったと思います。
実際にテレビ東京さんが8月に「Humanウォッチャー」というコーナーで、素晴らしい日本代表のドキュメンタリーを制作したのですが、チームの合宿映像部分はDAZNが取材した素材を提供させて頂きました。
Q.密着中の印象深いエピソードを教えてください
個人的に特に印象深いのは、8月に行われた名古屋合宿取材。(#4参照)
八村選手や渡邉選手がアメリカから帰国し、初めてチームに合流したタイミングで、8月に控えていた強化試合に向けてもまさにチーム作りが本格化するとあって、和気あいあいの中にも独特の緊張感を強く感じました。
この独特の緊張感はなんとも表現しずらいのですが、僕自身過去に取材経験はあったとは言え前回からは半年以上経過し、ほぼイチから信頼関係を取り戻さないといけませんでした。
しかし、最初の三日間はインタビューするのはやめたんです。
Q.それはなぜですか?
合宿期間は一週間。
当然、早い段階で打ち解けて色々な事を聞き出しい気持ちはありました。
単にその緊張感に呑まれたというのもありますが、いくら密着取材とはいえ「人」と「人」の関係性ですから、少なからず選手達も僕がどんな人間なのかを判断します。期間が空いていれば尚更です。
意識しすぎと言えばそれだけの話かもしれませんが、最初からこちら主導でガツガツ行き過ぎて信頼を失う事はしたくなかった。
いかに空気のようにその場に居ながら自然に撮影できるかを目指しました。
練習を見る中で気になった事を頭の中に蓄積していき、公開取材を皮切りに各選手へのアプローチを始めていきました。
しかし、人間「慣れ」が出てしまうと怖いですね。
Q.何かあったんですか?
ラマスHCを怒らせてしまった・・・
合宿も終盤に差し掛かった頃、ハーフコートでの練習中にもう片方のコートに入ってカメラを回してしまったんです。あれだけ慎重だったのに!です。
普段は絶対にそんな事はしませんが、近くで色々な角度から撮りたい欲と、合宿終盤での気の緩みが原因だったと思います。
そんな時、ラマスHCの怒りの矛先が真っ先に行くのは自分ではなく、チームスタッフの方。それまでスタッフの方々の完璧とも言えるサポートも目の前で見てましたから、本当に申し訳なさに襲われました。
また、そういう異変は選手達も気付くんですね。その日の練習後に田中大貴選手にお話を聞きに行った時に、「色々大変ですね、メディアの方も」と、優しくイジって頂きました。
ラマスHCには、最終日に取材のお礼と共にきちんと謝罪させて頂きました。
「日本のメディアからはリスペクトを感じるし、リスペクトもしている。
ただし!もうコートには入って撮影しないでくださいね笑」
大海原のような懐の深さで許してもらえましたが、これは特に最近チームや選手との距離が近くなってきたからこそ気を付けている事で、質問一つするにしても、今聞く必要があるのか、この選手である必要があるのか、この聞き方でいいのかを割と直前まで考えます。
発言や行動一つで信頼は失うのは一瞬です。
もちろん良い画が撮れたり言葉を引き出せる事に越した事はありませんが、僕としてはまだまだ発掘しきれてない代表コンテンツをこれからも長く長く作っていきたい。
それを可能にするのは"信頼"。
W杯で一旦、"Road to World cup and Beyond"シリーズは終了しましたが、今後もDAZNならではと思われる素敵なコンテンツを作っていけるよう頑張ります。
▼お知らせ
現在DAZNでは、毎週BリーグのスーパープレーTOP10をランキングにした、
「Bリーグカウントダウン10」を配信中です。
選手やチームの特集コーナーも設けており、12月からはブースターの方達が撮影したベストショットを紹介するNewコーナーも企画中です。
普段はtwitter(@4take3)で気ままに呟いているので、覗いてみてください。
ありがとうございました。
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