戦争文化

雑誌『戦争文化』購読をキメて没落する欧米近代文化に差をつけよう!|世界創造社の世界【2】

いま、劇的に世界情勢も日本社会も変わりつつあります。にもかかわらず、政治は私たちに何もしてくれません。そして私たちが判断しようにも正しい情報を手に入れることがとても難しい。そんな時代です。もう間違った情報を得て一喜一憂する生活はやめにしませんか?

そもそも今、世界はどんな情勢にあるのか。今この時代は歴史の潮流のなかでどんな位置にあり、今後どんなふうになっていくのでしょうか。実はそれを考えるためのヒントは私たちが生まれ育った日本にあります。

世界のなかで日本が果たす役割とはなんでしょうか。いま日本には直面する課題が山積みですが、実は未来をつくる可能性もまた山積みになっているのです。

そんな可能性を可視化するため、経済、政治、文化、芸術の最前線を行く豪華執筆陣による論考を毎号掲載するのが月刊雑誌『戦争文化』です(図1)。

図1 戦争文化・創刊号

これまでマルクス主義や自由主義をいろいろ試しても、なんだかちっともシックリこなかった。そんなあなたこそ、この『戦争文化』が新しい時代を生きるための魔法のコンパスとなるはず。

今すぐ定期購読の申し込みをキメてライバルに差をつけましょう。今まさに革命のファンファーレが高らかに鳴り響くラジよ!

月刊誌『戦争文化』創刊!

なにはともあれ、まずは『戦争文化』がどんな雰囲気の雑誌だったのか、雑誌を紹介する広告(図2)と、創刊号(1939年3月号)の内容をご覧くださいマセ。

図2 「戦争文化」の広告

創刊号(第一巻第一号)1939.3
グラビア特輯(撮影・深尾重光)
戦争文化宣言―
日本を繞る世界戦争問題(戦争文化硏究所)
東亜維新戰の日本=支那史的理念―支那人は日本人なり―(アジア問題硏究所)
植民地論(淸水宣雄)
天地の公道に基づくべし(中村光)
日本維新の必然性(奥村喜和男)
躍進するドイツ軍備
日本経済の自信(波多尚)
世界自然科学の動向(泉三郞)
八紘一宇(日本問題硏究所)
日本的青少年運動を確立せよ(渡邊誠)
航空文化論(泉四郞)
シベリア出兵(滿田巖)
世界維新戦の拠点 海南島(支那問題硏究所)
新聞・ラヂオ・大学を突く(編輯部)
ナチスドイツの国民敎育と国防(加藤三之雄)
砂漠の子
支那に於ける所謂「教会学校」の処置(平塚益徳)
帝大経済学部問題(田所廣泰)
蒙古大汗の葬儀
ことむけやはす(志田延義)
日本建築論(大谷龍雄)
日本の鉄道(吉田三郞)
レオン・ブルム渡米するか
世界各国の鉄道延長
賀茂真淵の古道論(山本饒)
ナチスドイツの教育映画(深尾重光)
日本的映画の創建(川添紫郞)
政治的文化闘争の手段としての芸術(シューマツヘル、フンメル)
将軍曉に死す
真理と真理の闘争(斎藤响)
西地中海に於ける仏伊の対立(城戸又一)
イタリーの空軍
独伊の世界政策(ヨーロッパ問題硏究所)
ユダヤ再認識論(難波浩)
イギリス海軍の代用品
反英アラビア人運動(小倉虎治)
イギリス陸軍
海賊東印度会社の先駆(深尾重正)
イーデン西へ行く
戦争音楽(牧定忠)
日本教育改革の目標(伏見猛彌)
支那統治論(今藤茂樹)
勲章フランスへ渡る
コンゴオ紀行(小島威彦)
皇戦年報資料
ユダヤ人問題・赤色ルート・シアム・シンガポール・ビルマ・インド・アフガニスタン・トルコ
編集後記

小島威彦(1903-1996)が仲小路彰(1901-1984)と協働して立ち上げた出版社・世界創造社から出版された月刊誌が雑誌『戦争文化』です。

創刊時、小島と仲小路は別の月刊誌『イタリア』を刊行していましたが、仲小路はその内容にいたくご不満だったそうで、『イタリア』とは別に月刊誌『戦争文化』を立ち上げます。

創刊号は1939年3月号(翌月には『イタリア』も『ファッショ』へ改題されます)。発行元は戦争文化研究所、発売元が世界創造社となっていますが、入り口が違うだけで家は同じみたいなもの。

この世界創造社の設立経緯はよくわからないのですが、「世界創造社」という不思議な社名は、小島威彦の著書『世界創造の哲学的序曲』にも用いられているように、日本が世界の盟主となる「日本世界維新」が「世界創造」になぞらえられているという、なかなかディープな由来です。

創刊号に掲げられた「戦争文化宣言」には、ものすごい鼻息とともに次のように記されています。

本誌は世界の各領域及部門にわたり、日本的世界原理による研究、調査、批判闡明を精密に実行し、真の全面的確信の指標を明示せんとしている。本誌より全世界の一切の部面、問題、方向等に明確なる解明と応答とを与え、ここにはじめて、長期建設、国家総力戦の最も正しき世界史的展開を実現し得るのである。かくして近代の西洋社会文化を否定し、これに代るに日本的世界秩序を強力に確立せんとする。

東亜協同体論が注目されていた1930年代末に、雑誌『戦争文化』は大東亜共栄圏を先取りするどころか、もっと先までぶっ飛んでいた。そんな戦時下の勢いを感じ取れます。

さらに教養を深める『戦争文化叢書』

毎月の雑誌『戦争文化』で満足しきれない御仁には、ぜひ『戦争文化叢書』もあわせてご購読ください。以下、その『戦争文化叢書』(図3)のラインナップ。

図3 戦争文化叢書・第四集

戦争文化叢書
高嶋辰彦『日本百年戦争宣言』,戦争文化研究所,1939
清水宣雄『植民地解放論』,太平洋問題研究所,1939
志田延義『八紘一宇』,1939
小島威彦『独伊の世界政策』,ヨーロッパ問題研究所,1939
アジア問題研究所編『支那人は日本人なり』,アジア問題研究所,1939
丸山熊雄『文学戦争』,映画文化研究所,1939
山本饒『天皇政治』,日本問題研究所,1939
小倉虎治『対英戦と被圧迫民族の解放』,アジア問題研究所,1939
吉田三郎『東亜とイギリス』,支那問題研究所,1939
篁実『東亜協同体思想を撃つ』,支那問題研究所,1939
今藤茂樹『日英支那戦争』,支那問題研究所,1939
満田巖『日本世界戦争』,北方問題研究所,1939
波多尚『日本戦争経済試論』,日本問題研究所,1939
渡辺誠『ファッシズム教育』,1939
西谷彌兵衛『日本戦争貨幣論』,世界創造社,1939
中村光『日本史代の建設』,日本問題研究所,1939
間野俊夫『ルーデンドルフの国家総力戦』,1939
泉四郎『世界航空文化闘争』,航空文化研究所,1940
深尾重光『科学者は何を為すべきか』,1940
堀一郎『印度民族論』,アジア問題研究所,1940
清水宣雄『日本農兵戦争』,1940
伏見猛彌『教育動員計画の書』,日本問題研究所,1940
小倉虎治『インド解放へ』,アジア問題研究所,1940
中岡弥高『皇国臣民の責務』,1940
ヨーロッパ問題研究所編『英国の世界統治策』,同研究所,1940
白鳥敏夫『欧州を繞る世界情勢』,1940
深尾重正『印度侵略序幕』,アジア問題研究所,1940
森昌也『尊皇攘夷論と開国史觀』,日本問題研究所,1940
太平洋問題研究所編『南を衝け』,同研究所,1940
泉三郎『廿世紀人間闘争』,科学文化研究所,1940
牧定忠『音楽戦争』,1940
アメリカ問題研究所編『日米百年戦争』,1940
波多尚『円系通貨を繞る基本問題』,日本問題研究所,1940
泉三郎『時間論』,科學問題研究所,1941
坂本稲太郎『佐藤信淵』,日本問題研究所,1941

『戦争文化叢書』に登場する執筆者の多くは、雑誌『戦争文化』や『ファッショ』、小島威彦が関係した「ナチス叢書」や「スメラ民文庫」、「スメラ学塾講座」でおなじみの顔ぶれ。世界創造社・スメラ学塾おかかえの執筆者でした。

先行き不透明な時代を生きる

雑誌『戦争文化』は、国際情勢、政治、経済、文学、芸術、歴史等々の広範囲に及ぶ学問領域を横断する総合誌。雑誌名にもなっている「戦争文化」。その内容だとか論調は、創刊号の編集後記からうかがうことができます。

「聖戦」によってアジアに新しき秩序をもたらすと称しながら、今日巷間に流布せらる東亜共同体なる欺瞞的理論は、日本を支那大陸の中に民主主義的に解消せしめ、支那をヨーロッパ植民地化せしめるものに他ならぬ!-これが国民が大いなる犠牲を払って獲た「聖戦」の意義であるのか!否!否!

さらにこう続きます。

今やまさに、あらゆる面において「戦争」は要求せられる!戦争と文化を切り離したる敗戦的ヨーロッパ的理論に対し、文化の全領域の人々よ!起て戦に!ここに「戦争文化」生まる!(中略)ここに日本世界主義の理念を樹立し、皇道世界維新の実現に邁進せんとする。ここにこそ、来るべき日本の指導理論がある!日本の来るべき姿を知らんとするものは読め!世界の来るべき姿を究めんとするものは読め!

このギレンの演説みたいな煽りで、「東亜共同体」を否定し、それに対して「日本世界主義」を掲げます。「欧米近代文化」の没落を指摘し、「我が日本は、近代西欧の植民地侵略によって、全く蹂躙され荒廃したるアジア大陸の上に、再び東洋の偉大なる伝統を復興し、我が肇国の大精神たる八紘一宇の新世界創造の段階に進まんとす」と謳う内容。

今となってはなんとも誇大妄想狂な思想ではありますが、世界的規模での覇権争い、そして戦争の時代に生きることは、何かにすがる必要があったのでしょう。

「新世界創造」の担い手として日本を位置づける「日本世界主義」は、いわば先行き不透明な時代に生きる光明だったのかと。「皇道世界維新」、「皇道総力戦」といったフレーズも、全ては日本に生きる自分たちの確たる足場を実感したいがためのロジックに思えてきます。

(おわり)

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