緊急事態宣言下の住まいづくり|オンライン相談、セミオーダー、WEB住宅展示場
新型コロナウイルス感染症の急速な感染拡大を受けた緊急事態宣言。「不要不急の外出自粛」が要請されたことで、さまざまな活動が休止されるなか、大手ハウスメーカー各社も対応に追われています。
各社のホームページを訪れると、それぞれに「新型コロナウイルス感染拡大予防の対応について」などのお知らせが掲出されているのが目につきます。住まいづくりを検討したい人も、それに対応する社員さんたちもともに安全・安心であるための試行錯誤が続きます。
また、コロナ対応に関するお知らせだけでなく、すでに一部のハウスメーカーでは「不要不急の外出自粛」に対応した新規サービスも導入しはじめているようです。現在進行形のこの状況を記録にとどめる作業として、その第一報をまとめてみました(随時、加筆・修正していく予定です)。
▲ヤマダホームズの場合(同社HPより)
大手ハウスメーカーの対応いろいろ
各社のホームページを巡ってみて、その対応をいくつか拾ってみますと。
ミサワホーム
(2020.4)新型コロナウイルス感染拡大防止の対応について
ミサワホームグループでは、住宅展示場・分譲地・各種イベント会場等での感染予防対策を徹底の上、ご来場が重なった際にはご見学時間を調整させていただき営業しております。なお、イベントによっては会場の変更や中止・延期などの対策を取らせていただく場合がございます。お客さまならびにスタッフの健康と安全を考慮したものでございますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
旭化成ホームズ
(2020.4)新型コロナウイルス感染拡大防止の対応について
当社が運営致します住宅展示場及びヘーベルプラザにつきましては緊急事態宣言で指定された地域及びそれに準じる発令がなされた地域の展示場においては、当面の間、平日を含め土曜日・日曜日も休業しております。
ご来場予約を事前にいただいたお客様に関しては、改めて営業担当より、ご連絡させていただきます。また感染拡大防止への対応により、お問い合わせ・資料請求へのご対応が遅れる場合がございます。ご迷惑おかけいたしますが、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
トヨタホーム
(2020.4.8)新型コロナウイルス感染拡大防止の対応について
トヨタホームグループでは、お客さまならびにスタッフの健康と安全を考慮して、住宅展示場・分譲地・各種イベント会場などでの感染予防対策を徹底すると共に、イベントによっては会場の変更や中止・延期などの対策を取らせていただいております。なお、政府による「緊急事態宣言」を受け、対象地域※の住宅展示場・分譲地の「事前予約」があった場合は、ご見学・ご相談の対応をさせていただきます。お客さまには大変なご迷惑とご不便をお掛け致しますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
※対象:東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県(2020年4月8日現在)
パナソニックホームズ
(2020.4)新型コロナウイルス感染拡大防止の対応について
パナソニックホームズグループは、お客さま、ならびに従業員の安全と健康を考慮して、展示場や分譲地、工事現場における感染予防や拡散防止に努めると共に、イベントによっては会場の変更や中止・延期などの対策を取らせていただいております。なお、緊急事態宣言対象地域※の展示場・分譲地・情報館では「事前予約」のみでのご見学・個別ご相談対応とさせていただきます。お客さまには大変ご不便をお掛けいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
※対象:東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県(2020年4月8日現在)
ヤマダホームズ
(2020.3.9)新型コロナウイルス感染拡大予防の対応について
ヤマダホームズでは、厚生労働省より令和2年2月25日発表の「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」に鑑み、 お客様と弊社従業員双方の健康と安全確保のため、弊社従業員がマスクを着用して接客・ご案内をさせていただく場合がございます。お客様におかれましては、ご不快に感じられることかと存じますが、何卒ご理解賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。
三井ホーム
(2020.4)2020年4月7日の緊急事態宣言の発表を受け、
お客様、ならびに従業員の安全と健康を考慮して、モデルハウスや工事現場における感染予防や拡散防止に努めております。なお、弊社では「モデルハウス来場予約」のほかに「オンライン相談」を実施しております。下記「オンライン相談・モデルハウス来場予約」からお申し込みください。
各社ともに、いわゆる三密を避けるべく、来場者が重ならない配慮をとっているようです。そんななか、最後に掲げた三井ホームが、モデルハウスの来場予約のほか、「オンライン相談」を掲げ、具体的にその窓口に誘導しています。いったいどんなサービスなのでしょう。
おうちで住まいづくり
三井ホームのホームページによれば、「オンライン相談」とは、「モデルハウス等にご来場いただくことなく、WEBを使って営業担当者とご相談いただける仕組み」だそう。
▲三井ホームの事例(同社HPより)
このサービスは現在(2020年4月13日)のところ、緊急事態宣言で指定された7都府県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、福岡県)と愛知県(!)に限定だそう。このことからも「オンライン相談」が新型コロナウイルス対応として登場したことがわかります。
では、この手のサービスが三井ホームだけかというと、そうではありません。目についたものをいくつか紹介してみます。
積水ハウス「おうちで住まいづくり」
▲積水ハウスの事例(同社Facebookより)
謳い文句は「さあ、おうちにいながら住まいづくり。」これって、森本レオを起用した昔のCM「さあ、コンサルティング・ハウジング」のパロディ?それは置いておいて。
住まいづくりを、どこでもいつでも、もっと気軽に始めていただきたいから。おうちにいながら、積水ハウスの家をバーチャル体験したり、設計プランを組み立てたり、家づくりについて学んだりできるプレゼントを無料で特別にご用意しました。さらに、電話やWEB会議で、住まいづくりを相談いただけます。さあ、あなたも、おうちで住まいづくり、始めませんか?
(積水ハウスHP)
おススメ対象としては「まずは、対面せずに相談したい」「子育てが忙しく打ち合わせができない」「昼間は仕事で時間がない」といったニーズを掲げていて、特に外出自粛に対応したとは記されていません。とはいえ、サービスのスタートは4月6日。キャンペーンの期限が月末と設定されていることからも、事実上、新型コロナウイルス対応になっているのは言うまでもありません。
▲積水ハウスの展示場案内動画(同社HPより)
サービス内容は三本立て。①VRでバーチャル住まいづくり体験、②おうちで設計体験、③おうちで学習体験。いずれにせよ、自宅に居ながらにして実例、無料プラン、資料請求が受けられるわけです。
これらサービスを受けつつ、電話やwebTV会議などを使い、自宅にいながら住まいづくりを相談できる。営業マンも外出する必要がなく、利用者も対人接触を避けられる仕組みです。
パナソニックホームズ「くらしラボラトリー MY PAGE」
パナソニックホームズは「住まいづくり・住まい探しの情報ガイド」と題して「くらしラボラトリーMY PAGE」というサービスを展開しています。サービスの一つ「バーチャル住宅展示場」は全国のモデルハウスを360°のパノラマで見渡しながら体験できます。
▲パナソニックホームズの事例(同社HPより)
また、最新物件・特別販売情報、住まいづくりの実例、プロ視点のアドバイス、先輩たちの声、強さ・暮らしやすさの秘訣、といったコンテンツを得られます。
このサービスは、新型コロナウイルスへの対応として開発されたわけではなく、すでに昨年11月から提供されています。在宅のままで住まいの検討が可能な仕組みは、以前からつくられていました。
旭化成ホームズ「my DESSIN」
旭化成ホームズは特にサービス名称を謳っているわけではありませんが、公式ホームページに飛ぶと、真っ先に「電話・メール、TV電話でのご相談受付中」と表示されます。
▲旭化成ホームズの事例(同社HPより)
また、「5/31(日)までにWEBで無料間取り相談にお申込みいただいた方には、あなただけの住まいの模型をプレゼント!」といったキャンペーンも展開中。
▲旭化成ホームズの事例(同社HPより)
そして、こうしたサービスを併用しつつ、バーチャル上での住まいづくり検討に特化した商品を発表しています。それはセミオーダー住宅「my DESSIN」。
▲旭化成ホームズの事例(同社HPより)
公式ホームページ曰く「これまでに建てた住まいを分析して誕生したmy DESSIN(マイデッサン)は、暮らしやすい住まいのノウハウが詰まったセミオーダースタイルの家づくりです。本来なら住み始めた後に気付くスイッチの最適な位置なども、一級建築士の計算しつくされた間取り、仕様により、
初めから「欲しいところにあってよかった」という満足のいく住まいをご提供いたします」とのこと。
セミオーダーとWEBの良い相性
規格プランがベースにありつつ、多少の要望・変更も受け付ける。選択肢が狭いというデメリットは次のように読み替えられます。
my DESSIN が選ばれる理由
1 家づくりのプロによる計算しつくされた間取り、収納、人気設備で住み心地◎
2 厳選された中から選べる満足感の高い家づくりができます
3 家を守り抜く強さに加え、最長60年間保証。普遍的なデザインや間取りにより買取保証をお約束
特設ホームページ上には、my DESSIN townと名付けられたバーチャル・タウンが設けられています。
▲旭化成ホームズの事例(同社HPより)
街中に点在する9つの住宅(2階建てモデル5種、3階建てモデル4種)は、それぞれに間取りや内外観CG、そしてVRでの仮想体験ができます。それは現実空間ではないわけですが、実のところ現実空間(=住宅展示場や施工・竣工現場)は、モノとしてはリアルですが、規模も違い、仕様・設備もオプションだらけで、そもそも商品モデルも違っていて、自分たちがこれから建てるであろう住宅としては、リアルでないどころか全くの別物。
だと思うと、もはや仮想現実こそが最もリアルに近いことになる。「おうちで住まいづくり」は、新型コロナウイルス対応、緊急事態宣言下ゆえの、やむをえない選択ではなく、むしろ、平時においても選ばれるべき住宅検討の方法。非常時という状況は、踏み出すことが躊躇われた一線を越えるきっかけ、と言えないこともない。
WEB上にバーチャルな住宅を設けて、それを検討するとした場合、選択肢が限られたセミオーダー型住宅であることはとても親和性が高い。しかも、住宅資金が潤沢でない状況にあって、コストを低く抑えたプランであることは重要です。そして、「自分でなんでも選べる」という利点は前時代的なものとなり、プロによって厳選された仕様・設備が魅力となります。
こうしたmy DESSINの特長は、特段に旭化成ホームズの新発明というわけではなく、十数年前から試行されてきたネット住宅販売にルーツを持ちます。
ネット住宅販売の老舗としてはミサワホームの「ウェブダイレクト」。ネット専用の住宅商品を提供し、あらかじめ選択肢が絞られた住宅をネット上で検討・購入する仕組み。間取り・仕様・設備・価格が明快に出ることや、いつでも自分の都合で検討できるメリットが好評に。
ちなみに、ネット住宅販売に投入されたセミオーダー型住宅商品は、東日本大震災や熊本地震の被害を受けて「震災復興支援住宅」として特別価格で提供されました。
▲ミサワホームの事例(同社HPより)
そして最近参入し、それゆえ完成度の高いネット住宅販売としては大和ハウス工業の「Lifegenic」が。従来のネット住宅と異なり、まずWebサイトで6つの質問に答えるライフスタイル診断から始める。診断結果に基づき、5つの外観スタイルと5つのインテリアデザインを組み合わせて提案。打合せ効率化は同社の働き方改革とも連携しています。
▲大和ハウス工業の事例(同社HPより)
そういえば、1960年代、住宅の大量需要に対応するためのシステム構築に注力していたRIAにて、カウンセリング・システム「RIAホームカウンセラーズ」の開発にかかわった建築家・近藤正一氏が、住宅のカウンセリングについてこう語っていました。
要するにカウンセリングは誘導なんですよ。質問をしながら、どういうふうに誘導するかによって、プランニングでもなんでも案が決まるんですよ。誘導の技術、それがカウンセリングなんですよね。
※この「RIAホームカウンセラーズ」については、下記の本がくわしいです。ご参考までに。
1960年代に試みられたRIAのカウンセリング・システムを、建築学者・西山夘三はこう評しました。
設計は「イージーオーダー」であるが、住宅はオーダーメードという形をとり、公庫クラスの中級個人住宅需要階層に対して、自己所有住宅の居住者にふさわしい独自の要求を適当にもりこんで、一応適切な個別解決による満足感をあたえつつ、住宅をつくりあげてゆくプロセスとして、注目に値するものといえよう。
(西山夘三『日本のすまいⅡ』勁草書房、1976)
この妙に皮肉の混じった評価も、近藤自身の「要するにカウンセリングは誘導なんですよ」という発言を聞くと、ズバリ的中な指摘だったとわかります。時代は移り変わって2000年代。「自己所有住宅の居住者にふさわしい独自の要求を適当にもりこんで、一応適切な個別解決による満足感をあたえつつ、住宅をつくりあげてゆくプロセス」は、大和ハウス工業のライフスタイル診断に着地したのかもしれません。
さて、新型コロナウイルス感染症対策として大いに活用されようとしているVR体験型WEB展示場にせよ、ネット上で検討できる間取り・仕様にせよ、ネット上で住まいづくりの知識が得られる動画含む各種コンテンツにせよ、実のところとっくの昔にすでに活用されてきたものです。
今回の新型コロナウイルス対応によって、それらサービスが再パッケージされたに過ぎません。せいぜい、TV電話の活用に本腰入れたことが新規性あるくらいかも。ただ、TV電話で「カウンセリング=誘導」がことたりるとなると、それはそれで大きな転換なのかもしれません。
いずれにせよ、対面販売が鉄則だった「住まいづくり」の現場に「ネット住宅販売」が入り込んできたこれまでの動きを、今回のコロナ禍が加速化させるのは間違いないでしょう。新型コロナウイルスの猛威は、きわめて保守的だった家づくり(あと、学校教育)の現場にも大きな影響を及ぼしつつあります。
(2020.4.13)
トップ画像:クリエイター:こてつんさん提供(写真AC)
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