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あまり読書習慣がなくても読める「建築学生さん向け推薦図書リスト」


あまり読書する習慣がないという建築学生さん向けの推薦図書リストをつくってみました。

外出を自粛せざるをえない今、自宅にいながら視野を広げるのに本はもってこい。おうち時間を楽しくしてくれる読書。いつでも自分のペースにあわせて知らない世界について語りかけてくれます。

これまでにも、いろんな方々が建築を学ぶにあたっての推薦図書をリスト化してくれています。そこで掲げられた本を手に取って読み、そして歯がたたなくても、わかることからこじ開けていくことで、あるときパッと視界が開ける。そんな体験もまた読書の醍醐味。

とはいえ、でも、だいたいリストアップされている本は、必読図書とはいえ硬派なものがほとんど。あまり読書の経験がないと、最初の1ページ目から挫折してしまうことも。

そこで、これまでにあまり読書してこなかった人でも、比較的読みやすい本をリスト化してみました。思いつくままに選んだので、ジャンルにも偏りがありますがご容赦を。

なんとなく気になった本から読んでみる。よくわからないところは思い切って読み飛ばしてみる。図版だけ見るんだっていい。それでも気乗りしなければ、違う本にしてみて、また折を見て再チャレンジしてみる。それを繰り返してみる。

きっと外出自粛が解除され外に出たら、同じ町並みや建物がこれまでとは違って見えてくるに違いありません。そんなこんなで、以下、「あまり読書経験がない建築学生さん向け推薦図書」を独断と偏見のもと思いつくままに挙げてみます。

田中元子『建築家が建てた妻と娘のしあわせな家』

名だたる建築家たちの自邸を、しかも建築家の妻や娘の視点で紹介する本。専門的なお話ではなく、日々の生活や実感にあふれた言葉から、建築の魅力や建築家の思いを知ることができます。

五十嵐太郎ほか『図面でひもとく名建築』

建築図面をもとにしたQ&Aを通して、建築の面白さを知ることができて、しかも、知らず知らずのうちに図面の見方にも親しむことができる本。

中谷俊治『アーキトラベル』

大学卒業後、10年間務めた設計事務所を退職して世界の建築をめぐる旅にでた若き建築家の旅行記。各地の建築に感動しながら、建築とはなにか、自分は何者なのかをさがします。

鈴木博之編『「建築学」の教科書』

安藤忠雄や妹島和世、石山修武、佐々木睦朗といった建築各界のトッププレイヤーが大学1年生へ向けてわかりやすく、でも本当に大事に思っていることを語ってくれる贅沢な一冊。

大塚篤『カタチから考える住宅発想法』

機能や周辺環境といった諸条件から建築を考える通常の流れをあえてひっくり返して、かたちをいろいろと操作してみて、どんな居場所や機能が割り当てられそうかを発想してみるユニークな本です。

青木義次『青木義次の計画発想法』

「みんなで渡るのが怖い」「流行というマンネリ」「問題をつくるな」などなど不思議な見出しを手掛かりに計画とは何ぞやを楽しく学べます。

後藤暢子ほか『中野本町の家』

伊東豊雄のデビュー作は、夫を亡くした実姉とふたりの娘が住む家でした。家族がなぜ家を建て、そしてその家を巣立つことになったのか。家族それぞれの語りから住宅が持つ意味と力が浮かび上がります。

いしまるあきこ『猫と住まいの解剖図鑑』

猫が好きな人はこんな本から入門するのもアリ。猫との幸せな暮らしを実現するな間取りや工夫をわかりやすく図解。猫をケーススタディにした住宅設計入門としても読めます。

後藤連平『建築家のためのウェブ発信講義』

メディアに関心があったら読み進められそう。建築家がどうやって情報発信していくのかを、実際のウェブ事例も参照しながら知れる本です。ますます重要になる「建築」と「メディア」の関係を知れば、大学での学びもまた違ってくるはず。

松山巌『建築はほほえむ』

建築をめぐる言葉が、まるで詩のようにポツリポツリとつむがれます。文章読むというよりも、著者に導かれて一緒に建築を考えるような本です。

三浦展『あなたの住まいの見つけ方』

住まいをめぐる歴史から現在の問題、中古住宅やリノベーションの可能性などが読みやすくコンパクトにまとめられています。

清家清『家相の科学・21世紀版』

1960年代に出版されベストセラーになった清家清の『家相の科学』。家相についてのウンチクを語っているふりをして、実は住宅設計の勘所を語る内容。

宮脇檀塾講師室編『眼を養い 手を練れ』

「設計してみよう」「敷地を読む」「図面を描こう」「住宅を内部から考える」といった一連の住宅設計の過程を、わかりやすい文章と美しいスケッチでたどります。絵だけ見ても楽しい一冊。

増田奏『住まいの解剖図鑑』

住宅設計にこめられた工夫の数々を図解。設計の「定石」がなぜそうなっているのかをわかりやすく教えてくれます。

日本住宅会議編『若者たちに「住まい」を!』

以前話題になった「ネットカフェ難民」や「シェア居住」は学生さんたちと同じ世代に身近なトピック。その背景と実態が簡潔にまとめられています。

ザ・ハウス『良い間取り 悪い間取り』

わたしたちにとって身近な住宅の間取りを、しかも「良い例と悪い例」を対比させて紹介してくれます。一冊読めば、自分の家の間取りの良し悪しも判断できるように。

中村好文『住宅巡礼』

世界の有名住宅を、建築家・中村好文が紹介します。温かいタッチのスケッチと平易でユーモアあふれる文章で、住宅を観察する喜びを学べます。

吉村順三建築展実行委員会編『建築家 吉村順三のことば100 建築は詩』

建築家・吉村順三の文章から一部を抜き書きした吉村語録。短い文章なので読みやすく、でも味わい深い内容です。

さて、「あまり読書経験がなくても読める」と題しましたが、かといって「読める」にもいろんなレベルの「読める」があります。数年後に再読したら「こんなことが書いてあったっけ??」って思うくらい、かつてより深く読めるようになっていることも。

あと、推薦図書のリンク先がAmazonになっていますが、日ごろから建築関連図書の普及に尽力くださってる本屋さんを応援したいものです。地元の本屋さんのほか、建築専門かつ通販対応くださる南洋堂書店さんや古書山翡翠さんを利用するのも建築文化を支えていく上で大切。

読めた本を足掛かりに、さらにいろいろな本に出合ってほしい。そのためにあちこちで紹介されている「建築学生の必読図書」に手を出していってほしい。広大な建築読書沼に進まれることを願います。よい旅を。

(おわり)


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