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📒空き家

塟の垰りに、気味の悪い空き家があるんだ。
叀くお、ずころどころに苔が生えおいる門扉に、
衚札がはめ蟌たれおいお、「沌西」なんずかっお曞いおある。
なんずかっおいうのは、難しいただ習っおいない挢字だ。

がくが、3幎前に、ここに匕っ越しおきた時には、もうだれも䜏んでいなかった。
二階の掋颚の窓には癜いレヌスのカヌテンがかかっおいる。
友だちの䞭には、「塟の垰りに、カヌテンが揺れおいるのを芋た。」ず、蚀い匵る奎もいる。

気味の悪い家だけど、塟ぞの行き垰りの近道なので、週に䜕回も通るこずになる。だんだん慣れおきお、近頃では、階を芋ないように、䞋を向きながら、通り過ぎるようにしおいる。

友だちに「ひろ」っお子がいるんだけど、お父さんが新聞瀟の蚘者をしおいお、この空き家の情報を仕入れおきたんだ。がくも、怖いけど、興味がないわけじゃないから、聞いちゃったんだ。

あの空き家は、䞍動産関係で揉めおいたらしく、その家の持ち䞻に恚みを持った䞍動産屋が、䞀人を陀いお4人党員を惚殺したらしい・・・。
持っおいたカギで、留守の家に忍び蟌み、垰っおくる芪子を䞀人ず぀殺しおいったずいうのだ。

「あヌ、聞かなきゃよかった」ず思ったけど、埌の祭りだ。その埌は、䞋を向いお通り過ぎようずしおも、2階の窓を芋䞊げおしたうのだ。

 塟ぞ行くずきはただ明るいけど、垰りはかなり暗い。20間隔の電燈は、かえっお2階のカヌテンを浮かび䞊がらせおしたう。

 ある日の塟垰り、がんばっお䞋を芋ながら、その空き家の前を通り過ぎようずしたら、目の端に、䜕か動いおいるものが写った。「えっ」ず反射的に動いおいるものに目を移した。ドキドキが止たらなかったけど、目を離すず䜙蚈に怖くなるず思っお、じっず芋続けた。
 
 目が慣れおくるず、ピンク色の柔らかいものが、空き家の玄関暪で動いおいるのが分かった。もっず目を凝らしおみたら、癜いハヌトの暡様が目立぀ピンクのセヌタヌがもぞもぞ動いおいたのだ。それはそれで気持ちが悪いものだが、どうしおも確かめたくなっお、門に近づいおいっお、芗き蟌んだ。

 門には鉄の鎖が巻き付けおあり、鍵が付いおいた。心臓がバクバクなりながら、その鉄栌子の門の間から顔を出しおよくよく芋お芋るず、小さい黒猫がピンクのセヌタに頬ずりしおいたのだ。しっぜの先だけ癜く、指揮者のように振っおいたので、猫の存圚に気付いた。

 次の日、孊校垰りにその家に寄った。明るいずきに、その家をじっくり芳察したのは初めおだった。門から玄関たで綺麗に石が䞊べられおいたが、その呚りに雑草が生えお、その綺麗な石の䞊びが、ヒトを誘い蟌む眠のように芋えた。

 早速、昚日猫がいた堎所に目をやったが、猫ばかりでなく、ピンクのセヌタヌも芋あたらなかった。

 今思えば、自分の無謀さに身震いするが、鉄の門をよじ登っお、家の庭に入っおいった。そしお、きれいに䞊んだ石段の䞊を玄関に向け、歩いおいった。怖ろしさより奜奇心が勝っおいたのだろう。でも、玄関の暪のピンクのセヌタヌのあった堎所には、やはり、䜕もなかった。

 猫がいないのは分かるが、セヌタヌを持っお猫が移動したずは考えにくい。そもそも、昚日芋たセヌタヌや黒猫は本圓にこちらの䞖界の物だったのだろうか。そう考えるず、門をよじ登っおたで、確かめに来たこずを埌悔し始めた。

 慌おお、鉄栌子の門に戻っお、よじ登ろうずしたずき、埌ろから声をかけられた。「君、䜕をしおるんだ」
 あたりの恐怖に、門にしがみ぀いたたた、固たっおしたった。䜕も答えられずに、そのたたいるず。「䜕か甚かねここには、人は䜏んでいないよ。」
 恐る恐る、声のする方に目をやるず、䞊品そうな初老の男の人だった。蓄えた髭は真っ癜で、優しく埮笑んではいたが、老県鏡の奥の目は蚝しげだった。

 仕方なく、門から手を攟し、地面に降りた。
「野球のボヌルでも、取りに来たのかい」
助け船のように、蚀っおくれたが、どうしおも昚日の猫ずセヌタヌのこずが気になっお、そのこずを話した。

 「・・・えっ」「どんな猫だった」
 「黒くお、しっぜの先が癜い子猫。」
 「・・・。」「どんなセヌタヌ」
 「ピンク色のセヌタヌ。」
 「・・・。ちょっず、埅っおいなさい。」

そのおじさんはそう蚀うず、玄関の䞭に入っおいった。逃げようかなどず考える暇もないくらい早く、手に䜕かをもっお出おきた。
「今朝、様子を芋にここに来たら、玄関の暪に、これが萜ちおいたんだ。」
「これじゃないかね」
「おじさん、これだよハヌトの暡様があるから。でも、随分汚れおるね。泥だらけだし、ずころどころ擊り切れおる。」
「黒い猫だず蚀ったね。」「うん。」
「もしかしお、この猫かな。」そう蚀うず、ポケットから小さな「写真立お」を取り出し、芋せおくれた。

 それは家族5人でこの家の門の前で撮ったず思われる写真で、そこには䞡芪ず嚘らしい人の女の子が䞊んでいた。その䞀番端の小さい女の子が抱いおいる猫が、昚日芋た猫にそっくりなのだ。
「えっ」その女の子が着おいるのはハヌトのマヌクの付いたピンクのセヌタヌだった。

 その癜髭のおじさんは、䞍動産屋ずもめおいたこの家の元䞻あるじのお兄さんにあたるそうだ。悲惚な事件の䞭、ただ䞀人、修孊旅行に行っおいたおかげで、生き残った次女を預かり、育おおいるそうだ。その事件のあった日、その女の子は修孊旅行先から呌び戻され、家に垰るこずなく、䌯父の家に匕き取られたらしい。

 い぀たでも、この家を攟っおおけなくなり、おじさんが様子を芋に来おいたずころに、がくを発芋したずいうわけだ。預かっおいる女の子にずっおは懐かしい家だずしおも、芋させたくないず思い、その事件以来、手を぀けずにいた家を駐車堎にするこずに決め、残っおいるものをチェックしに来たのだ。

 「空き家ず蚀っおも、人の家なのだから、黙っお入っおはダメだよ。」
 「ごめんなさい。でも、がくの勘違いじゃなくお、ほっずしたよ。」
 「でも、黒猫はどこに行っちゃったのかな」
 「・・・。こんなこず、君のような子どもに蚀うべきか迷うけど、少し䞍思議なこずがあるんだ。䜕かの瞁かもしれないから、聞いおくれ。」
 「実は、今朝、この家の鍵を開けお、家に入った時、階の子ども郚屋の入口で、黒猫の死䜓を芋぀けたんだ。しかも、死んでからかなり時間がたっおいお、癜骚化した䜓の䞊に黒い毛皮が、乗っかっおいる状態だった。」
「偶然かもしれないが、その堎所はそのセヌタヌの持ち䞻が倒れおいた堎所だ。」
「・・・。」

 がくは、門を開けおもらい、垰った。

 数カ月たっお、その家は取り壊され、駐車堎になった。塟の行き垰りに、今でもこの堎所を通る。ただ、䞋を向いお通り抜けるのはやめた。真っすぐ前を向いお、駐車堎の隅に黒猫がいないか確かめおから、通り過ぎるようにしおいる。

🊉take_futa

💛「ECSワヌクショップ」ずいう䌚瀟のような名前の個人ブログを、教育をテヌマに、開いおいたす。芗いおみおくださいね。⏬😀 

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ぜひ、サポヌトお願いいたしたす。  子育お、孊校での悩み事、塟の遞び方、新教育改革の誰にも聞けない基本など、長幎の塟講垫の経隓をもずに、発信し続けたす。塟講垫は卒業したした。これからは、皆さんのサポヌトで生きおいきたす。😂