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『弱さをさらけだす勇気』(松岡 修造 著)

『弱さをさらけだす勇気』(松岡 修造 著)

【どんな内容の本?】あの前向きの塊のようにみえる人のさらけだす弱さ

以前noteに記載した「たった2分で、自分を変える本。」にあった「書店の棚巡りをして、ピン!と来た本を買ってみよう。」という言葉に従い、蔦屋で修造さんと目が合った(笑)ので手にとって見た本。モノや本と目が合うってのはあると前から思っていたんですが、リアル書店にあまり行ってなかったこともあり久しぶりの感覚でした。

著者の松岡 修造さんはいまさらここで紹介するまでもない元トップテニスプレーヤー。現役引退後も各メディアでのプロアスリートへのインタビューやレポーターとしての活躍は皆さんご存知の通りかと思います。すごく前向き・ポジティブの塊のような印象の彼がこのタイトルで本を出されている違和感が今の自分に刺さったのだと思います。

【目次】

序章 果たされた4年前の「約束」
第1章 「弱さ」を武器にせよ
第2章 夢は「つくる」もの
第3章 崖っぷち、ありがとう!
第4章 本気になるのはカッコいい
第5章 修造流 心のエクササイズ

本書は、さまざまなアスリートへインタビューする彼ならではの視点で、オリンピアンやパラリンピアンなど日本のトップアスリート達の心の葛藤のストーリーを紹介しています。それにご自身のテニスプレーヤーとしての挫折と成功の経験を織り交ぜて、その都度自分の弱さと向かい合ってきた経緯を赤裸々に書かれています。単純な挫折や壁を乗り越えてみたいな話ではなく、それぞれ一人の人間としてどのように自分と向き合って自分の弱さと「つきあって」きたか。克服ではなく「つきあって」きたというストーリーになっています。

【読んでみて刺さった言葉】

・「人は、出会うべき人と絶妙なタイミングで必ず出会える。ただ、自分の心が求めていなければ、目の前にその人がいても縁は生まれない。」
これは哲学者である森信三氏の言葉を著者が解釈した内容です。「チャンスは日頃から準備しているものにしか掴めない」という言葉にも似ていますよね。渇望して日々想い続けいているからこそ出会いを引き寄せるのかもしれません。

・「ゴールまでの工程を1万個に分けてください」
1万個?! 1万個は初めて聞きました。二刀流の大谷選手のマンダラートの話は有名ですが、それでも64個に細分化されているのに1万個ですよ。この言葉は平昌パラリンピックのメダリスト成田緑夢選手に著者がインタビューしたときに引き出した言葉。1万個までとはいかなくても1000個、とにかく細分化するということ。そうすれば最初の一歩はとても実現性の高いものになる。「グランドスラムで優勝する」が目的だったら最初の一歩は「ラケットを握る」になる。一歩を踏み出しやすくして「目の前の一歩に全力で取り組む」ことだとも。ハードルを下げて達成感も感じやすくする良いアプローチですね。

・「前へ進んでいくための第一歩は、弱さをふくめて、ありのままの自分をまるごと肯定してあげること」
弱さはついつい否定したくなりませんか。フタをしてしまいたくありませんか。でもそのままでは前へ進めない。弱さもふくめて自分なんだと、それでいいんだとまずは認めてあげること。そこから周りの力も借りながら前を向いて、1つ1つ目の前の課題に全力で取り組むこと。そうやって自分の「弱さ」と付き合うことなんですね。

総評:「強さ」の再定義

「強い」というとなにかすべてを克服した、自分に打ち勝ってきた人のイメージが付いていると思います。よくあるTV番組も概ねそんなストーリーで語られることが多いです。でもはじめから強靭な肉体や精神を持っている人はいません。結果的にそれらを手にした人たちは「打ち勝った」のかもしれませんが、そこに至った「強さ」とは、自分の「弱さ」を認めて勇気を持ってそれに向き合うことなのかもしれません。


『弱さをさらけだす勇気』(松岡 修造 著)

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