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21世紀型スキルを知ろう ② DeSeCoを探る

 21世紀型スキルを知ろうシリーズ第2回はDeSeCoです。
 現在、よく言われている21世紀型スキルに最も大きな影響を与えたのは、OECD(経済協力開発機構)が1997年から2002年まで実施したDeSeCo(Definition and Selection of Competencies:コンピテンシーの定義と選択)プロジェクトと、同じくOECDが実施しているPISA(Programme for International Student Assessment:生徒の学習到達度調査)でしょう。DeSeCoによってキー・コンピテンシーという言葉が、PISAによってリテラシーが教育界で話題になるようになりました。

DeSeCoとは

 DeSeCoプロジェクト「Definition and Selection of Competencies (コンピテンシーの定義と選択)」は、1997年12月からPISA調査の協力の下で実施され、2003年に最終報告書を刊行しています。
 その目的は、スキル、知識、およびコンピテンシーとは何か、つまり、何のために教育を行うのかという「義務教育の目標」の設定であり、国際標準の学力とすべき、明確で包括的な概念フレームワークの提示です。
 DeSeCoでは、12の加盟国から、「人生の成功と正常に機能する社会の実現を高いレベルで達成する個人の特性」として今後どのようなコンピテンシーが重要となるかの報告を受け、その結果を教育学から哲学、経済学、人類学など学際的な討議を行い、次の3つのカテゴリーにまとめました。

コンピテンシーの概念

 ここで言うコンピテンシーとは、『単なる知識や能力だけではなく、技能や態度をも含む様々な心理的・社会的なリソースを活用して、特定の文脈の中で複雑な要求(課題)に対応することができる力。』と定義されています。

 

キー・コンピテンシーの定義

 キー・コンピテンシーとは、日常生活のあらゆる場面で必要なコンピテンシーをすべて列挙するのではなく、コンピテンシーの中で、特に、
 ① 全体的な人生の成功と十全に機能する社会という点から、個人的及び社会的レベルで高い価値をもつ諸結果(outcomes)に貢献する。
 ②幅広い(wide spectrum)文脈において、重要で複雑な諸需要や諸難問(demands and challenges)に対処するために有用である。
 ③すべての諸個人にとって重要である。
という3つの一般的な規準を満たすものを、キー・コンピテンシーの概念
としている。


キー・コンピテンシー 3つのカテゴリー

1.相互作用的に道具を用いる
必要な理由:技術を最新のものにし続ける。自分の目的に道具を合わせる。世界と活発な対話をする。

1A.言語、シンボル、テキストを相互作用的に用いる能力
1B.知識や情報を相互作用的に用いる能力
1C.技術を相互作用的に用いる能力
※道具とは、言語・情報・知識等のツールのこと。相互作用的とは、人が周囲の環境と積極的に対話をすること。

2.異質な集団で交流する
必要な理由:多元的社会の多様性に対応する。思いやりの重要性。社会資本の重要性。

2A.他人といい関係を作る能力
2B.協力する。チームで働く能力
2C.争いを処理し、解決する能力

3.自律的に活動する
必要な理由:複雑な社会で自分のアイデンティティーを実現し、目標を設定する。権利を行使して責任を取る。自分の環境を理解してその働きを知る。

3A.大きな展望の中で活動する能力
3B.人生計画や個人的プロジェクトを設計し実行する能力
3C.自らの権利、利害、限界やニーズを表明する能力

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 このOECDの定めたキー・コンピテンシーは単なる知識や技能ではなく、人が特定の状況の中で技能や態度を含む心理社会的な資源を引き出し、動員して、より複雑な需要に応じる能力とされる概念とされています。
 つまり、3つのキー・コンピテンシーの枠組みの中心にあるのは、個人が深く考え、行動することの必要性です。深く考えることには、目前の状況に対して特定の定式や方法を反復継続的に当てはめることができる力だけではなく、変化に対応する力、経験から学ぶ力、批判的な立場で考え、行動する力が含まれています

日本では

 2003年12月26日付けで、新学習指導要領の総則を中心にその一部を改正しました。その趣旨は『学習指導要領に示す基礎的・基本的な内容の確実な定着を図るとともに、各学校の裁量により創意工夫を生かした特色ある取組を行うことによって、児童生徒に、知識や技能に加え、学ぶ意欲や、自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断し、行動し、問題を解決する資質や能力などの確かな学力を育成し、生きる力をはぐくむという新学習指導要領のねらいの一層の実現を図るため』としています。

 また、2008年1月17日の中央教育審議会答申では、

 社会の構造的な変化の中で大人自身が変化に対応する能力を求められている。そのことを前提に、次代を担う子どもたちに必要な力を一言で示すとすれば、まさに平成8年(1996年)の中央教育審議会答申で提唱された「生きる力」にほかならない。
  このような認識は、国際的にも共有されている。経済協力開発機構(OECD)は、1997年から2003年にかけて、多くの国々の認知科学や評価の専門家、教育関係者などの協力を得て、「知識基盤社会」の時代を担う子どもたちに必要な能力を、「主要能力(キーコンピテンシー)」として定義付け、国際的に比較する調査を開始している。このような動きを受け、各国においては、学校の教育課程の国際的な通用性がこれまで以上に強く意識されるようになっているが、「生きる力」は、その内容のみならず、社会において子どもたちに必要となる力をまず明確にし、そこから教育の在り方を改善するという考え方において、この主要能力(キーコンピテンシー)という考え方を先取りしていたと言ってもよい。
 また、内閣府人間力戦略研究会の「人間力戦略研究会報告書」(平成15年4月)をもとにした「人間力」という考え方なども同様である。 

としています。

 まぁ、文科省の「生きる力」がOECDの「キー・コンピテンシー」の先取りかどうかはさておき、日本の文科省もこの流れには乗っていると言うことは確かだと言えますね。この流れは、高等学校での「総合的な探究の時間」へと引き継がれています。
 21世紀型スキルを身に付けるための探究学習。これからの時代に必要な学習方法であり、主流となっていくべき学習方法であると筆者は考えています。


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