「酔客カッパ物語」─#ごちそうさまグランプリ
「あんな、兄さんに食べて貰いたいモノがあんねん」
「ほほう。何でしょうか」
もう10年近く前の話だ。僕の立つカウンターはビストロのウェイティングバー。この方はここではお酒しか飲まない。大体、赤ワインを1本とウイスキーをダブルで2杯。それで毎週欠かさず3日ほど通ってくれているのだから、ありがたいお客様には違いない。しかしたまにはお勧めの煮込み料理くらい口にしてくれたらいいのにと思いながら、こちらはせっせとお酒を給仕する。
「最近この近所に出来た寿司屋でな、そこの”カッパ