大人になってからジョジョと出会い、人生観の答え合わせをした話

ジョジョを読んだ。基本的に自分は布教にはあまり靡かない硬派なオタクであるつもりなのだが、付き合いが長く価値観を信用できる友人に読む事を強く勧められた上に全巻貸してくれるとの事だったので、重い腰を上げて読む事にした。おまけに当時の自分には訳あって時間があった。

これがめちゃくちゃ面白かった。クセのある絵柄だとか台詞回しに抵抗は無く、むしろドハマりして第1部から第8部まですぐに読み終えた。ミーム化した名言を作中で見かけると聖地巡礼しているような気分にもなって楽しかったのはさておき、借りてた1.2ヶ月程度の間に全部で100冊以上、なんなら気に入った2部と5部と7部は2周してから返した。

ちなみに1番好きになったキャラは岸辺露伴、ジョルノ、ジャイロ、ワムウ、ジョセフ、プッチ神父です。




なんだ?文句あるか?






いざ読み終えてみると、自分にとってのジョジョは言うなれば模範解答だった。青春時代をジョジョと共に過ごし成長してきたらしいかの友人は人生の教科書だと言っていて、そう表現するのも理解できたが、そうでなかった自分にとって読み進めながら学びを得ていく教科書とは少し違う感覚があって、教科書というよりは人生の模範解答という方が的確だった。

現在20代半ばの自分は少し前に芸術学部の大学を出ている。恥ずかしながら、自他共に認めるすごい作品を作り上げる事は叶わなかったが、まぁそんなものだと自身の凡庸さに諦めはついている。しかし、講義には真面目に出席してそれなりの成績を修め、著作権やらの実用的な知識を齧ったのみならず、人並みかそれ以上には自分なりの美学について考え、美的感覚を研ぎ澄ませるには良い機会だったし、そうしてきたつもりではいる。

自分語りが続いて申し訳ないのだがそういう趣旨の記事なので許してほしい。

今の自分には倹約家の側面がある。学生時代のソシャゲ課金やアルバイトによって金銭感覚が狂いに狂った反動が今になって自分に覆い被さっているのだが、税金やら生活費やら愛車の維持費やらの固定費を除き、使い道が自由で好きに使う分の金は平均して月に1000~10000円程度に留まっており、残りは貯金に回している。お菓子や酒、外食などを嗜むのが嫌いなわけではない。しかし、そういう贅沢は日常に落とし込まれると贅沢ではなくなる。頻度が低いからこそその有難みを噛み締めることが出来るので、そういうのはたまにでいいと思っている。出費の少なさは単なる結果に過ぎない。

そんな生活を省みるとどうやら自分は無駄を切り捨てる事に美しさを見出しているらしい。何かしらの作品や製品、システムなんかを見てみると、自ずと無駄の無いデザインかどうかとかそういう見方になったりもする。無駄とか必要最低限とか言ってるとミニマリストなのかと言われる事もある。ミーハーな感じがしてなんか嫌なのだが、そういう性質を抱えている気はする。質素な生活にマイナスなイメージを持つ人もいると思うので補足しておくと、決して必要なものまで切り捨てるような貧乏ではないし、今の生活には満足している。
もちろん金や時間は必要とあらば惜しみなく使う。しかしそれはコストとパフォーマンスが釣り合った場合のみで、無駄遣いだと認識すると途端に1円も1分も惜しくなる。当たり前の感覚ではあると思うのだが、自分はおそらくそこに対する往生際がかなり悪い。譲れないものは譲れない。費用対効果だとか効率を考慮して自分を納得させるハードルを超えなければ、金も時間も、またそれらに限らずあらゆるリソースを割く事が出来ない性格なのだ。そしてそれが厄介にはたらく場面もこれまでに何度も遭遇してきた。だが今更矯正できる気はしないしとうに諦めている。自分でわかってさえいればそういう場面を避ける道を選ぶ努力だって出来る。諦めとは、拭いきれないそれと付き合って生きていく覚悟だと思う。

自分はジョジョを読んで、無駄を露骨に嫌ったジョルノや、納得するために走り続けたジャイロの生き方に対し、勝手ながら自分のこれまでの生き方と重なる部分があると感じたし、覚悟があるから幸福なのだというプッチ神父の主張には強く共感した。それはまるで答え合わせで、これまでの自分の生き方がジョジョに肯定されたような気がした。

実のところ最近、転機があって生活が大きく変わって、それに順応すると共に自分の軸が揺らいでしまうのではないかという感覚に怯えていたけど、そういう時にジョジョの世界でエゴを強く持って突き進む男たちを思い出すと勇気が湧いてくる。自分もそうやって自分の美学とか信条と呼ばれるようなヤツを捨てずに生きても良いのだと奮い立たせてくれる。これは創作とか芸術の分野ではよく言われている謳い文句だが、人生においても間違いというものは無くて、自分が正解だと思った道を進み続ける事が正解なんだと思う。DIOと戦う前の花京院のように恐怖を乗り越え、これから起こる事柄に後悔なんてないと信じてみる事にした。

タイトルには大人になってからと書いたけど、自分はまだ大人になりきれない部分もある。それにこれを見た人が歳上か歳下かも分からないし、何を以てして大人なのかの問いに正しい答えを出せる自信は無い。
でも自分は自分の周りと比べるとジョジョと出会うのが遅かった方で、青春時代をジョジョと共に過ごした友人とは似て非なる感覚を得たような気がしたから書いておきたかった。

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