一瞬の喜びのために、途方もない困難の道をいこう
3月8日、ついにスペインでデビューすることができた。
相手は今季無敗で首位を独走しているチーム。
対して僕のチームは残留争い真っ只中で、しかも2連敗している。
サッカー的な話が多いのに、サッカーを知らなくても学びがある、そんな文章を目指します。
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前回の最大公約数の話にあったように、この週は「どうチームのやるべきことに自分をアジャストさせるか」がテーマだった。
それを踏まえて、ミーティングや監督との会話と、自分の特長を加味して次の4つをプレー面で意識した。
・ビルドアップにリスクを負わない
・ポジティブトランジション(ボールを奪った瞬間)を可能な限り縦に速くプレーする
・相手の188cmのFWにキープやヘディングをさせない
・味方SBが出たスペースのカバーリング
そして、プレー以外の精神的な部分で意識したのは
・対人守備に全て勝つ
・日本での試合以上に味方と1対1でのコミュニケーションを取る
・無失点での勝利
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試合の結果は、0-1での敗戦。
コーナーキックで自分がヘディングでクリアしたボールを、エリア外からダイレクトでのシュートを叩き込まれた。
会場はアウェイで、横幅が狭いのが特徴的。
この地の利を生かして相手はホームで勝ちまくっていた。
ロングボール主体で縦にも横にも素早く入れてくる。
だからFWを自分が潰し続け、ウイングの突破を阻止することが最低限必要だった。
そして、それはできた。
ヘディングは「せーの」で跳んでジャンプ力を競う必要はない。
地上で相手を落下地点に入れないようにブロックして自分を落下地点に持ってくればいい。そうすればどれだけ大きな選手にも対抗できる。
バスケでもリバウンドの勝敗はジャンプの前にほぼ決まるはず、そのイメージだ。
わからなければ今すぐスラムダンクを読もう。
そこで押し負けないように日々筋トレをしている。
この地上でのポジションの取り合いは、僕のこの2ヶ月の意地があった。
12月のインカレ以降、全く試合をしていなかった。
3ヶ月弱もの間、「試合」というご褒美なしにひたすら練習だけをしてきた。
週末に試合があれば、それに合わせて筋トレメニューを組む。
筋トレ自体の強度もパフォーマンスに支障がない範囲で行う。
でも、僕は試合がなかった。
だからひたすらジムで毎日毎日追い込んだ。
ボールを蹴る時間より、ダンベルを挙げる時間の方が圧倒的に長い。
「スペインに筋トレしにきたのか?」と自嘲する日もあった。
重りよりも、自分との闘いだった。頭の中で、190cmで90kgあるようなFWを想像し、それに対抗できるだけの力をつけるために。
分析ミーティングの中で、相手がロングボール主体で、かつFW頼りなチームだと知り、「この2ヶ月が試されているな」と本気で思った。
開始1分での競り合いで、地上で相手をブロックし、落下地点に入らせずヘディング。
あの時、自分のやっていたことは間違いではないと感じられた。
僕はこの瞬間があるからサッカーをしているんだろう。
勝てなかったり、上手くいかないことばかりだけど、たまにご褒美をもらえてしまう。
だから辞められない。
楽しい、幸せ、生きていてよかった、とさえ思う。
この試合の課題として挙げられるのは、攻撃のシーンが多い。
細かく繋いで前進できるような相手とのパワーバランスでもないし、ピッチも狭いから、相手SBの裏に落とせるシーンが増やせたらチャンスがより多かったはずだし、ショートカウンターのリスクもグッと減らせたはず。
そして、そのために「時間を確保するための動き」を速くしなければならない。
SBにつけた後のポジションの取り直しなどが顕著で、レベルが上がってプレススピードが速くなった時に今のままでは通用しない。
またクロスの対応でも、バックステップを踏みながら守るのと、すぐに戻って前向きに守るのでは全然変わってくる。
それも時間を確保するためのものだ。
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「レベルが違う」という言葉があるが、思うにこれは、「知っているかどうか」の差ではないだろうか。
例えば、Cチームにいたら、Aチームではどれだけのパススピードが必要なのかを知らない。
技術的には可能でも、Cチームではプレスも遅いしトラップの技術も劣るから、比例してパススピードも遅くなる。
下のカテゴリーから這い上がれる人は、Aチームの基準をみて、その基準でプレーし続けられるような選手だと思っている。
同じように僕も今、3部では?2部では?ラ・リーガでは?と高く高く基準を設定しなくてはならない。
慣れてはいけない。
これを「意識を高くもつ」と表現するのは好きじゃない。
意識を変えることは特段難しくない。
自己啓発を読んだり、プロフェッショナルの流儀をみたり、すごい人の話を聞いたり、意識を変える方法はいくらでもある。
難しいのは「行動を変えること」だ。
意識という抽象的な表現ではなく、具体的に行動していく。
例えば、練習のパスゲームで常に最高の体の向きを作れるように今までより速く動くとか。
意識ではなく、行動を変えていこう。
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この試合を通して上がったチームとしての課題は
・細かいライン設定やオフザボールの準備を疎かにしがちなところ
・中点で前を向いたときのバリエーションの少なさ
自分の課題は
・ロングボールでの配給でWGを活かす
・時間を確保する動きのスピードを高める
・セットプレーでの得点
・下半身で当たる、腕の使い方(上半身だけで当たらない)
何かを乗り越えると、また次の課題が見つかる。
悔しさはある。
でも、苦しみの先にまた喜びがあることの味を占めている。
次の試合が楽しみだ。
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今回はアウェイでのゲームだったが、チームのサポーターたちもきてくれていた。
最初は突然やってきたアジア人が最後尾を守ることに不安もあったと思う。
でも徐々に、ヘディングで跳ね返し、ボールを奪うたびに「Shota! Muy bien!!」と応援してくれた。
手を振って答えたらさらに喜んでくれる。
試合後は負けたのにもかかわらずロッカー近くまで来て握手しに来てくれたり、帰るのを待って迎えてくれるサポーターの方々もいた。
また、この試合でベスト11に選出された。
負けた試合でCB。
しかも、コロナの影響で各国でアジア人に対する変なみられ方もある中で、デビュー戦で、突然出てきた僕に対してこのような評価をしてくれたのは素直に嬉しい。
プレーにも結果にも満足はできないが、これからも選ばれ続けられるほど圧倒したい。
想いに応えられるように、もっと、もっと。
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