蠅の王様、空の青さを知る。
本当にてめえ、何したいのかと聞かれると、すっごく考えるよね。まあそれは何でも良いんだ。
でも、永住権らしきものを欲しがろうとしたら、所属とか思想とか思考とか、立場とか、そういうのを色々押し隠してしまうのはやっぱり不義理であると思う。
なので敢えて語ろう。俺はくだらねえガキどもの街の頭領、素敵な蠅の王国の皇帝様です。
具体的に言うと、都内のとある街で3つ店舗持ってる飲食店の幹部。そこ任されているってだけで、外様大名には違いない。皇帝様になってしまったのはただ単純に社員歴長すぎて、他の人間が知らねえこと、出来ねえ事が色々出来るようになってしまったという事と、ガキどもの取り扱いが上手いという、そんだけ。
年収はクソだよ。全然底辺。奨学金という借金こさえてるし、彼女も友達もいねえ方、とにかくガキどもからの支持率が高すぎて引くに引けねぇから、何となくやってるだけ。目的意識が明確なんて、そんな偉そうな事は言えん。
ガキども、こう呼ぶのは軽蔑してる訳ではない。実はすっごい愛している。何が?
ガキどもにも色々ありすぎる。例えば右も左もわからねぇ学生、将来の為に頑張っている学生、パチンコにハマって終わっている学生、役者志望、DJ志望、アイドルヲタ、ギャンブルにハマって終わっているフリーター、社員、アイドル崩れ、美容師崩れ、社会人崩れ、もう本当に色々だ。エブリデイモラトリアム。
夜遅くからの出勤だってのに毎日遅刻してくるど阿呆も居れば、毎日二日酔いで出勤してくるど阿呆もおる。冷徹に見れば社会不適合者の集まりな訳だ。
多分ここだけ俺の違うとこなのかなと思う。
わりかしのんべんだらりと仕事してるなと思う。意識低いなと思う。だけどそういう生活が1ミリも悪いものだって思えないんだよ。底辺である事を恥じてないから。堂々とギャンブルに金ぶっこんで、アイドルにつぎ込んで、そういうのを全部必死になってやった仕事で貰ったお時給で成り立たせている。凄くないか?
けれども時代は変わった。俺はガキどもの生活、人生、尊いと思う、だけど、お前達が自分で自分をクソだと思うようになった。そういう人生が間違っていると言い始めた。この会社はクソで、そこで燻っている自分らもクソで、何も出来ない故にクソだと。ちゃんとしたい、真面目に社会人やって家庭を持ちたい。
OK.蠅の王様が答えてやろう。
そう思うのは間違いではない。自分で向き合い始めた事は間違いではない、偉大なる一歩だ。
同時に、今のお前らも間違いではない。だからそこを否定するな。それはどこかの大企業のお偉いさんがやる事だ。自分でやる事じゃない。
俺はお前らを肯定する。だって、燻ってようが底辺だろうが、自分の為に楽な生き方を選ばなかったから、不特定多数のありふれた幸せを創るために、しんどい道を敢えて進む奴らだから。
説得力がないことぐらいとっくに分かっている。俺は動かないチェス盤のキングだ。
首を取られる事を恐れ、庇護されている中での蠅の王様だ。本当は全方位に動き、盤面を蹂躙する事が、出来るはずの駒だ。
二つの潮流がある。
自分達の生き方を誇ることの2つの潮流。
一つ目は、組織、集団自体が巨大化し、有名になり、その根拠をもって誇ること。実際蠅の王国では今そういう流れが強い。まずはトップ、その後、ナンバー2辺りが自分らの仕事を誇ることを始める。紙面に出る、広告に出る、まあそんな所。
もちろんそれは素晴らしい事だ。そうして欲しい。
だけどガキどもは収まらない。自分達は蠅の王国のモブで、トップではないから。彼等の言葉が、芸能人の言う言葉と何ら変わらなくなってしまう。
もう一つ、蠅の王様、つまり日々おんなじ所で顔合わせて働く、最前線に立つ王が、別の国から言論の力で王国を変えてしまう事だ。
巨大化も、有名人化もせず、同じ所に留まりながら、言論だけでお前らの生活を拾い上げ、誇ってしまったら、世界がそれを肯定し始めたら、どうなる?
今更ながら言うが、結構恐ろしい事をしている。
俺は言葉を持っている、それを傲然と放っている。別に代表者でもない癖に、凄い人格者でもない癖に、だからこういう日を夢見ている。
普段通りの日常、ダレた仕事、そん中で蠅の王様が堂々とガキどもの帝国の話をするその姿をネットなり動画なりで見た瞬間、ガキどもの人生は変わってしまう。
俺たちは、誇れる事をしていると、知ってしまう。
そうしてしまうのが、まず偉大なる第一歩。同じ泥を啜り、真っ正面から嘲笑を受け続け、それすら笑い飛ばす蠅の王様が、別の場所から旗を掲げた瞬間、世界は変わる。
やりたい事は一つ、ガキどもが自分らのくだらない生活を誇れるよう、言論の剣を振りかざす事。やり方はまだ模索中だ。LTすることかも知れねえし、団体立ち上げることなのかも知れねぇ、それが納得出来るぐらい純粋なら荷担してもいいとは思う。
しなくてもいいと思う。もし仮に、これを1人でやってのけたら、もうガキどもは居ても立っても居られないと思う。
本当は何者でも無いんだ。カッコいい大人の男でもなければ、真っ当な社会人ですら無い。スーツなんて何年も着てない。
だが、俺はこの称号を手放さない。
社会不適合者とド底辺の小さな街の、クソガキだらけの帝国の唯一無二の蠅の皇帝。
他にもいっぱい王様いるんだけどさ、少なくともこの称号、一つは獲ってしまったんだよ。
なので言うたる。ガキども、夢を与えてやる。その為に王は荒野を駆けてやる。欲しけりゃ誰かにくれてやる、並の男じゃ獲れねぇ称号だ。だから防衛戦は全力だ。
普通にしたかったけどぜんぜんそうじゃなかった、お前らの頭領、現金掛け値なしの薄情屋遊冶郎、これが俺だ!さあ、戦え!