フィードバックの達人
今日はフィードバックの話です。
WORDSは今年から柿内さんにアドバイザーになってもらっています。
よくnoteの記事や新聞広告のコピーに迷ったときフィードバックをしてもらっています。(ぼく個人のnoteではなく仕事上で作成するnoteです。)
そのフィードバックの仕方がすごく心地よいので、ちょっと紹介したいなーと思います。
ちなみにぼくも肩書きとしては「編集者」ではあるのですが、最近は自ら手を動かして文章を作ることも多くあります。なので、さらに客観的に見てフィードバックしてくれる存在はすごく助かるのです。
柿内さんの説明はここをお読みの方には必要ないかと思いますが、『嫌われる勇気』や『君たちはどう生きるか』など数々の大ヒット作を手がけられてきた有名編集者ですね。
※柿内さんアドバイザー就任のことは以下のnoteでも少し触れています。
「編集者として」というより「読者として」
フィードバックと聞くとどういうものを思い浮かべるでしょうか?
普通は「このタイトル、あんまりインパクトないね」とか「もうちょっとエピソード入れたほうがいいんじゃない?」と言ったりするところを思い浮かべるでしょう。
もしくは細かい部分まで文章を見て「ここに『そして』はいらないんじゃない?」「ちょっと語尾が連続してておかしいんじゃない?」とか、そういうことを指摘するのが一般的にイメージする「フィードバック」です。
柿内さんの場合は(もちろん書き手によってフィードバックの仕方は変えているでしょうが)ざっと読んで「そのときに感じたこと」を伝えてくれます。文章自体に対してフィードバックするというよりは「その文章を読んだ読者がどう思うか?」という感情を伝えてくれるのです。
「ざっと読んだけど、後半はあんまり覚えてないかな」
「やたらあのフレーズが印象に残ったな」
「この人のこの考え方、おもしろいね」
みたいなかんじです。このフィードバックの仕方がすごく助かるのです。
「読者としてこう思った」は反論のしようがない
「文章に対してフィードバックする」のと「読んだあとの感情をフィードバックする」のは似ているようでぜんぜん違います。
「感情をフィードバックする」というのは「仕事として、編集者として」フィードバックをするいうよりも「読者として」フィードバックしているわけです。だからすごく納得度があります。
書き手はがんばって書いているので、細かいフィードバックに対して「うーん、そうじゃないんだよな」などと思いがちです。わかっていてもついついイラついてしまう。「この一文はいらないんじゃない?」とか細かい部分を指摘されると「私はそうは思わないですね」みたいなになりがちです。
でも「読者としての感想」を言われたらこちらは何も言えません。
なぜならまぎれもない「読者」がそう思っているからです。「読んだ人はそう思うよ」というフィードバックを受けると、こちらは直さざるを得ない。そしてポジティブな気分で直すことができます。「より伝わるように、よりおもしろくなるように変えよう」というモチベーションにもなるんです。
文章の向こう側に現れる「感情」を見ている
もちろん「編集者らしいフィードバック」が必要なときもあるでしょう。
特に書籍の編集では、一行目から丁寧に読んで「文法的におかしいところがないか」「辻褄が合わないところがないか」など、細かいところを見ることも大切です。
ただ、ぼくの最近の仕事はインターネットで読む文章がほとんどです。だからそこまで細かく読むような読者は少ない。丁寧に一行一行読む人もいるでしょうが、たいていの人は流し読みをしたり、ざっと読む人が大半でしょう。柿内さんは「そういう読者が何を思うか」を伝えてくれるわけです。
柿内さん自身も「文章自体を読んでいるというよりは、文章の向こう側にある感情を見ている」という言い方をしていました。「文章そのもの」ではなく「文章を読んだ先の感情」にフォーカスする。だからこういうフィードバックができるのだと思います。
「ようするに、誰に何を伝えたいんだっけ?」
あと「これって、誰に何を伝えたい文章なんだっけ?」というのもよく聞いてくれます。
文章において「誰に何を伝えるのか」というのはかなり重要です。というか、基本中の基本。一丁目一番地です。ただ当事者になると案外忘れてしまうものなんです。
最初は「こういうことを伝えよう」と思っていても、何度もやりとりをし、文章をこねくり回していくと、そこがボヤけていってしまうことがある。そこを指摘してもらうことで「原点」に帰ることができ「ストレート」に伝わる文章にすることができます。
削る部分も明確になります。
自分が書き手だとついついもったいなくて削るのを躊躇してしまうのですが、余計なことを書いて逆に伝わらなければ本末転倒です。 そこで「そもそも誰に何を伝える文章だっけ?」に立ち返る必要があるわけです。
おまけに「誰に何を伝える文章なのか?」を口頭で端的に説明しようとしているといいフレーズが出てきたりもします。「ようするにこういうことなんですよ」と伝えたときに「あ、今のいいフレーズだから、それタイトルでいいんじゃない?」ってことが起きる。
考えすぎていると、凝ったタイトル捻ったタイトルをつけがちなのですが、案外そこでパッと出てきたひとことが「強い言葉」だったりするのです。
フィードバックは書き手自身が忘れていたことを思い出させてくれる。文章の輪郭をハッキリさせてくれる。だから、ものすごく助かっています。
*
今年は社員が入って、ぼくも教える立場になりました。また今後も人を増やしていきたいと思っています。ぼく自身も編集者として「フィードバックの達人」になりたいなと思っています。
というわけで今日はフィードバックをテーマにお話ししてみました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?