【受験ノート】芝浦工業大学

 芝浦工業大学の本部キャンパスは、豊洲にあります。周囲には、タワーマンションが林立し、かつて湾岸の工業地帯だった豊洲は、タワマンセレブが集う、こじゃれた街に変身しています。最先端のこじゃれた街と、理系オタクの芝浦工大とのマッチング‘って、どうなんだろうと、思わなくもないんですが、学生たちは、人工的なメタリックな街で、さほど不満もなく過ごしている様子です。新宿や池袋のような便利な繁華街ではありませんし、中野ブロードウェーやアキバのような、オタクの聖地からも速いので、結局、勉強するしかないと云う状況に、豊洲キャンパスの学生は置かれているわけです。

 結構、名前を知られていた武蔵工業大学が、東京都市大に名称を変えて、「そんな大学、知らんわ」ってことで、偏差値を下げ、最先端のぴかぴかの街である豊洲に、本部キャンパスを移して、受験生の注目を集めた芝浦工大が、理系私大のNo2にのし上がりました。(理系私大のNolは東京理科大)。

 芝浦工大は、理系にしては授業がゆるく、単位取りも楽で、サークル活動にも打ち込めると云った風な大学でしたが、本部キャンパスを豊洲に移してから、ハードなカリキュラムで学生に負荷をかけるようになりました。理系の学生は、明らかに学ぶことが増えています。大学院に進学しない学生に、4年間で専門分野の必要な知識を会得させるためには、自由でまったり、のびのび過ごすと云った風なキャンパスライフはNGだと、大学側は判断したわけです。

 工学部は、全員に高校で習う内容を「基礎科目」として、必修で履修させています。習熟度別クラス編成をして、数学や英語の基礎学力も身につけさせています。高校の教科書レベルの数学や理科が解ってないと、大学の専門科目のカリキュラムはこなせません。

 他校とのお付き合いもないし、周囲に安い居酒屋があるわけでもないですし、リア充とも無縁ですから、勉強をしつつ、二次元のオタクにならざるを得ない環境です。学生は、オタクばかりですから、ファッションに気を遣う必要もなく、毎日、ユニクロを着て、豊洲に通い、地道にコツコツと勉強しています。

 工学部とデザイン科の1、2年生と、システム理工の学生は、大宮キャンパスです。サークル活動は、大宮キャンパスじゃないとできません。有名な鳥人間の飛行が、高層ビル街の豊洲でやれる筈ないです。鳥人間は、つまり人力飛行機ですから、それを飛行させるだけの広いspaceが必要です。芝浦工大の鳥人間は、OBが「トリガール」と云う青春小説を書いて、それが映画になりましたから、このへンも芝浦工大の人気を押し上げた、ひとつの要因です。

 大宮キャンパスは、明らかに田舎です。最寄り駅は、JR宇都宮線の東大宮駅。そこから徒歩で20分です。スクールバスも出ていますが、朝夕は混雑していて、乗車できなかったりもします。東大宮には、無論、安い居酒屋などもあります。周辺の定食屋などもリーズナブルで、家賃も安く、大宮キャンパスの近くで、一人暮らしをするのもありだと思います。まあ、どっちかと云うと、大宮キャンパスの方が、理系の大学っぽい雰囲気です。豊洲キャンパスは、背伸びして、無理やり意識高い系のキャンパスを、演じようとしているといった風なとこもあります。システム理工は、全学年が大宮キャンパスなので、古き良き時代の理系のキャンパスライフを、enjoyすることが可能です。

 芝浦にもキャンパスはあります。ここには、デザイン工学部の3、4年生が学んでいます。大宮キャンパスに残すことも可能だったんですが、芝浦工業大学と云う名称の大学ですから、芝浦から離れることは、さすがにできないと思われます。芝浦キャンパスは、山の手線の田町駅から、徒歩で5分です。便利な土地柄ですが、理系の学生は、別段、便利さをさほど求めてないし、都心回帰も望んでなかったと推測できます。芝浦に回帰したのは、デザイン工学部が、産学協同をウリにしているからです。産業界とのつながりを保つためには、キャンパスは、やっぱり都心にあるべきだと、判断したわけです。

 芝浦工大は、Globalへの一歩も踏み出しています。やれGlobalだ、Diversityだ、Word Cafeだなどと、わさわさ騒いでいるのは、基本、文系の学部です。理系で本気でGlobalに取り組んでいる私立大は、芝浦工大だけです。半年とか1年間の留学は、さすがにカリキュラム的にきつすぎるので、2週間~ 4週間くらいの単期間、PBLスタイルで、海外に送り出しています。PBLと云うのは、Project Based Learningの略です。与えられた課題に対し、学生のグループがプランを立てて、解決を図る課題解決学習のことです。これを、海外の大学と提携して、海外大学の学生と、混成チームを作って、実施しています。たかだか、2週間~ 4週間くらいの短期間ですから、さほどの成果は期待できませんが、テーマを与えた方が、出て行き易いし、英語力のなさを痛感するきっかけにもなります。この海外PBLがきっかけで、本格的な留学をする学生も出て来ています。PBLも含めて、海外への学生派遣数は、この10年間で、40倍以上に増えて、去年は、1000人を越えています。そう大きい大学ではないので、相当数の割合の学生が海外に出かけています。

 芝浦工大は、工学部の建築学科とは別に、ニュースタイルの建築学科も立ち上げました。ただ、建物を作るだけではなく、建築を通して、災害復旧や地域再生、エネルギ一、環境と云った諸問題に取り組んで行こうとするスタンスの学部です。これが求められている次世代の建築スタイルだと云う自負心が、カリキュラムを通して、垣間見えて来ます。卒業生を出してないので、このニュースタイルの建築学科の評価をするのは、まだ時期尚早ですが、新しいことにchalegeして行こうとしている、進取のspiritは、伝わって来ます。

 理系版のLearning Commons (学びの広場)と云うべきテクノプラザも開設しています。そこには、30万倍まで拡大して観察できる電界放射型電子顕微鏡や、ドローンの動きを測定できるモーションキャプチャーシステム、物質の種類を二十万以上のリファレンスの中から特定できる粉末X線解析装置、小さな針で物質の表面をなぞりその形状や性質を観察できるプロープ顕微鏡などが、設置されています。

 理系ならではの部やサークルもあります。鳥人間の部の正式名称はTeam Birdman Trialです。他校との差別化を図るために、このチームでは基本、二人乗り機を制作しています。

 SRDC (Shibaura Robotics Development Circle)は、ロボットの機体設計、製作を行っていて、二足歩行のロボット大会では、三度、全国優勝をしています。

 無線研究部は、つまりアマチュア無線(ハム)で通信をする部活です。スマホ全盛のこの時代に、どういう存在意義があるのか、不思議ですが、ライブやステージイベントの音響なども担当したりして、活動しています。

 レーシングカーの企画・設計・製作をやっているFormula Racing と云う部活もあります。小人数のマイナーな部活ではなく(小人数ではレーシングカーは製作できません)人数の多いメジャーな部活です。その他、鉄道研究会、天文同好会、SF同好会、RPG同好会、将棋同好会など、オタク系の部活・サークルは、それなりにそろっています。

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