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教#058|年寄りになったら、普通の格好をすると、決めていました~ブルーピリオドを読んで㉙(たかやんnote)

「タイトルをつけて描きなさい」と云うイメージ課題が出されて、八虎は「男のロマン」と云うタイトルを考え出します。ヒーローを描くつもりでしたが、「ヒーローに成りたくて成れなかった男」を描いてしまいます。考えていたタイトルとは、全然、違う所に行ってしまったと言えます。ロマンの内容は、何でも自由に考えられますが、「男の」と限定してしまうと、難しくなります。ほとんどのロマンは男女でshareできてしまいます。ちょっと行けそうにないと感じたら、さっさとそのタイトルの世界から撤収して、新たなタイトルをつけ直せば良かったんです。が、時間配分の問題もあります。具体的に何を描くのか、短時間で構成と全体のイメージを作り上げる必要があります。取り敢えず、出たとこ勝負で、描き始めると、失敗のリスクは高くなります。

 どういうタイトルをつけても構いません。自由です。高校生までの人生と云うか、生活ですと、自由と云うことに慣れていません。これまでの人生の経験を総動員して、bestなタイトルをつけようなどと、大上段に構えてしまうと、「男のロマン」と云った厄介で抽象的なタイトルを捻ねり出してしまいます。日常的な、日々、接している用語やネタなどを使って、saku sakuっと構図とイメージを組み立てるとかで、構いません。制限時間のある試験では、短時間に設計図を描けるかどうかが、ポイントです。

 新聞に、スタイリストの石田純子さんのインスタの記事が、掲載されていました。石田さんは、装苑と云うフアッション雑誌の編集の仕事をした後、フリーのスタイリストに成られた方です。アンアン・ノンノがまだなかった時代、装苑だけが、唯一のフアッション雑誌でした。その装苑で、コシノジュンコさんや山本耀司さんにも直接会って、多くのこと学び、25歳の時に独立し、雑誌のファッションページを請け負い、モデルや女優のスタイリングも手がけます。

 25歳くらいで、独立して起業すると、あとあとの展開が楽になります。去年、卒業したTくんと云う教え子が、大学を卒業して、会社に入っていろいろ学び、15年くらいその会社で働いたあと、起業したいと、手紙で知らせて来ました。おそらく、彼の父親が、15年間、会社勤めをして、独立したんだろうと推測できます。が、父親の世代とは、テンポが、もうまるで違います。起業なんて、早ければ、早いほど良いです。今は、学生時代に起業する若者が(まだ少数ですが)日本の大学にもいます。アメリカでは、一流大学の優秀な学生は、普通に起業を目指します。日本も少しずつ、そうなりつつあると感じます。

 25歳で起業すると、その後、様々な場面に遭遇することができます。石田さんは、30代の頃、保育園のママ友を見て、ショックを受けます。入学式や卒園式では、びしっとファッションを決めて来るのに、送り迎えや運動会の時は、何か、おつかいに行くような服装で、ちぐはぐと云うか、ギャップが大き過ぎるんです。「よそゆき」と「家着」の間がないとはっきり認識して「一般の女性のおしゃれを底上げしたい」と思ったそうです。お金持ちのセレブは、もちろん、どこにいても、おつかいに行くような格好はしてないと思いますが、普通の人だって、TPOと使える予算に合わせて、やっぱりお洒落をしなきゃいけないと、スタイリストとして、一般の女性のサポートをして行く決意をします。一流デザイナーの服を、モデルさんに着てもらうことだけが、スタイリストの仕事ではないと、新たなミッションを自覚されたわけです。

 病院の先生が、病気で治療中の方を、紹介してくれるそうです。最初に来店した時は、言葉も少なく、暗い感じなんですが、何度も石田さんの店に来て、服を買い揃えて行く内に、表情が明るくなって行くと語っています。
「おしゃれって、その人の生き方や価値観を反映する。だから、年を重ねてからのおしゃれは楽しいんです」とも仰っています。

 私は、35年間の教職生活を終えて、区切りをつけました。区切りをつけたので、YouTubeを始めて、ブログも書き始めました。facebookにも手を出しましたが、これは、今のとこ、開店休業状態です。赤やオレンジ、黄色の合羽を着て、首にタオルを巻くと云う定番のワードローブもやめました。原色の合羽を着て、首にタオルを巻いていたら、みんなが普通に街角で受け取っているティシュすら、配って貰えません。年寄りになったら、普通の格好をすると、決めていました。まあ、これも、区切りのactivityです。

 若い頃、イタリアに行ったことがあります。ミラノの空港で、飛行機から降りて、銀行に両替に行くと、両替所にいた係りの爺さんが、ファッション雑誌から抜け出て来たような、お洒落な服装をしていて驚きました。スーツも、シャツも、ネクタイも、腕時計も、すべて、決め決めです。銀行を出て、公園に行ったら、ジェラートを舐めてる爺さんがいて、カジュアルなんですが、やっぱりおしゃれの偏差値が、めっちゃ高いんです。イタリアの爺さんは、ミラノもヴェネチアもフィレンツェもローマも、どこで見ても、例外なく、おしゃれでした。やばいくらい、汚い格好をしていたのはジプシーの子供。ジプシーの子供たちに、何度か取り囲まれました。多分、私自身が汚くて、なおかつ観光客だったからです。

 スタイリストの仕事を、絵に落とします。夫婦だったら、金婚式とかのanniversaryイベントが、やっぱりいいかなってって感じです。イメージ的には、ショーンコネリーが主演した「マイハートマイラブ」の映画の最後のパーティーのsceneです。夫婦は、普通にスーツとドレスですが、人生の年輪が、服装も含めた全体に現れています。春と秋と、どちらかをchiceするのであれば(映画では秋でしたが)まあ、やっぱり春の方が、華やかでふさわしい感じがします。ゴッホがアルルで描いた桃の花のイメージを、絵のどこかにはめ込んでおきたいです。脇役の子供や孫たちは、少し離れたところにいて、主役の二人を引き立てている・・・みたいな絵です。全体の色調は、ゴッホで言えば、パリ時代のそれのように、明るく、快活、わくわくするような感じです。

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