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リトルウィッチ・ア・キル・ゼム・オール! 〜ホリデースペシャル〜 #パルプアドベントカレンダー2021
白い中古車の中で、カーステレオから声がする。明るく甲高い、ハキハキした喋り方──誰にも聞こえない声だが、その車の主にだけは聞こえていた。
『……故郷を捨ててアメリカにやってきた彼女は、今日も仕事に大忙し! がんばって! 魔法少女はみんなの味方。愛と勇気があれば、誰にも負けないんだから! 次回、魔法』
女は手を伸ばし、ステレオのスイッチを入れた。声はかき消え、ラジオから陽気なDJが、曲の紹介
ライク・ア・ヘル・エッジ・ロード(6)
セントラルパークを出ると、アドは自分のスカートがドロドロになってしまっているのに気がついた。
着替えたい。車で行くつもりだったから、このメイド服は恐らく目立つ。
少年は人通りの多さと摩天楼の高さに圧倒されたのか、目をきらきらさせながらあちこちに視線を向けている。
とにかく時間がない。
「キョロキョロすんなよ。ついてこい」
前向きに考えるべきだ。メイドが子供の手を引いて移動する。それ自
ライク・ア・ヘル・エッジ・ロード(4)
屋敷の外まで転がり出るように飛び出して──ようやくアドは自分の鼻から血が出ていることに気づいた。触ると痛いが、折れてはいない。
最悪だ、畜生。
モノクロストライプ柄のハンカチを取り出すと、痛みを我慢しながらそれを拭った。
ついでに涙まで出ていたので、それも。
少年は物珍しいのか、アスファルトの上をもぞもぞ動いていた蟻を観察している。
それはいい。しかし、これからどうする。あの化物みたい