キティサンタがやってきた!
もう随分の前の話なのですが、クリスマスイブの想い出を語りたいと思います。感動する話でも何でもないですが、哀しさはあるかもしれません。
できればハンカチをご用意ください。
あれは何年も前の、いつかのメリークリスマス。
当時付き合っていた女性と私は過ごしていました。
彼女の家で素敵なイヴを過ごした翌日、 私は仕事だったのですが、眠い目をこすりながら仕事に行こうとすると、彼女は突然ぬいぐるみを差し出しました。
キティちゃんでした。
彼女はキティちゃんが大好きで、部屋中キティちゃんだらけでした。
えっ、トイレットペーパーまでキティちゃん?
なんというこだわり。なんというキティラー。
そんな彼女だったから、私がプレゼントするのはいつもキティちゃんでした。
初めてサンリオに一人で行った時は、本当に緊張しました。
店員さんとお客さんに、私はいつも不審者扱いされて、視線が痛かったです。
キティちゃんは知れば知るほど奥が深かった。
キティちゃんの身長ってリンゴ5コ分?
体重リンゴ3コ分って何それ!?
キティちゃんってネコやのに、ペット飼ってるやん!
最初はツッコミまくりでしたが、ずっとキティちゃんと絡んでいると情が移るのか、だんだんと可愛く見えてきました。
最初はキャラクターグッズなんて何の興味もなかったのに。
私も人間の心を取り戻したってことなのでしょうか。
友人と街を歩いていて、お店でキティちゃんを見つけた時
「あ、キティちゃん♪」
とつぶやいてしまい
「お前、変わったな・・・」
とドン引きされたのは内緒です。
話を戻すと、彼女が私にキティちゃんのぬいぐるみをくれたのは、私の部屋にも大好きなキティちゃんを飾っておいて欲しかったそうです。
別に身に着けるわけじゃないから良しとしよう。
(どーでもいいけど・・・めっちゃ可愛いな)
そのぬいぐるみはクリスマスヴァージョンのキティちゃんで、お腹の部分を押すとしゃべりだす機能がついていました。
ポチッ
軽やかなクリスマスメロディとともに
「メリークリスマァーース♪」
キティサンタはビッグボイスでしゃべりだしました。
キティちゃんてこんな声なのか?
想像以上に声高っ!
でも・・・カワイイ。
キティサンタをかばんにしまうと、私は彼女の家を後にし、電車に揺られて会社に向かいました。
(あ、そういえばクリスマスカードくれたっけな)
まったく私は幸せ者です。
電車の中で、私は彼女のくれたクリスマスカードを見ようとかばんを開けました。
(えーと、どこに入れたっけな?)
かばんの中をあさったその時、私の本当のクリスマスが幕を開けました。
ポチッ
(あっ、しまった!キティちゃんのお腹押し、)
「メリークリスマァーース♪」
(げえええーーっ!)
なんてこと。なんてことなの!
電車の中だというのに、キティちゃんはしゃべりだしましたよ! 軽快なクリスマスソングとともに!
(うわっ、ちょっと、止まれって!)
だが止まるはずがありません。
キティちゃんはしゃべる、大声でしゃべる!
やめてー! あーなんか必死でカバン押さえても意味ないけど!
ちょっと、どんだけ声でかいねん。
シャラップやでキティちゃん!
電車の音でキティちゃんの声はかき消されているかもしれませんが、周りにはぎっしり乗客が座っています。
フフフ、聞こえないはずがないよね。
周りの乗客の表情がおかしい。
笑いこらえてんの?
ねぇ、聞こえてるんだろ?
笑えよ、ガマンせずに笑えばいいじゃない!
「&7@!#Kβ~♪」
キティちゃんはカバンの中でまだ何か言ってるよ・・・。
もう長い長いって! 早く終わってー
逃げ出したいが、車両を移動したところで、キティちゃんの声と軽やかなメロディは終わらない。
動けば余計に被害は拡大するだろう。
(もうやめて下さいやめて下さい)
永遠に思える時間を耐え抜き、 やっとキティちゃんは話すのをやめました。
やっと止まった・・・。
ふーもう汗だくだや。
乗客は私をどう思っているのだろう。
もはや顔を上げることができない。
めっちゃ視線感じる!
それにしても、このキティサンタは危険や。
これは悪魔や。キティサタンや。
かわいい顔して末恐ろしい爆弾やで。
キティちゃん、いや本名キティ・ホワイトよ。
君のおかげで心臓がバクバクしとるわい。
ふー、もう触らんように隅の方に置いておこう。
そーっと、そーっとね、 横からズラすように、
ポチッ。
( ノォオオオオオオーッ! )
「メリークリスマァーース♪」
何やってんねん!何やってんねん俺!
もう自分が許せない。
だからなんで押すねん。意味がわからん!
あのもう、なんてゆうか気絶しそうス。
お腹痛くなってきたっス。むしろ半笑いっす。
わかるだろうか。この極限の精神状態が。
またまたキティちゃんはしゃべりだしましたよ!
こんなことって、、これは現実なのですか!?
私の前に立っている女性は顔を歪めている。
アンタ、気づいているんだろ?
そして横のアンタ、体が震えてるぜ。
「ゲフンゲフン」て何そのわざとらしい咳払いは。
笑ったら?笑ろたらええがな!わしはもう死にたいわ!
挙動不審な私を見て、周りの乗客は笑いをこらえているに違いない。
そう、察するに万引き犯みたいな目になっているのだろう。
もう消えたい。消えて星になりたい。
キラリーン☆彡 なんやそれ。
そしてキティサンタは最後にこう言うのです。
「あなたにとって素敵なクリスマスになりますよぉーに♪」
って君のおかげで、わしゃ地獄見とるわい!
昔からクリスマスはろくなことが起こらない。
やはりクリスマスに事件が起こるのは、私の運命なのか!?
駅に着くと、私は逃げるように電車を飛び出しました。
深夜、帰宅直前の家の前で、またもやボタンを押してしまう私は、当時からやらかし王としての素質は抜群でした。
そんな遠い日の思い出。
その後、この恋はある日突然終わりを迎えました。
それから何度もクリスマスが過ぎていき、もう彼女との想い出を懐かしむことはないのかもしれません。
でもキティちゃんを見ると、ふと彼女を思い出し、ほんの少し切ない気分になります。
今もわがままばかり言って彼氏を困らせてるのかなぁ。
それとも結婚して、幸せに過ごしているのかな?
彼女とはもう二度と会うことはないだろう。
でも、今でも彼女のくれたキティちゃんは、 実家の部屋の片隅で、ニッコリ笑って座っている。
・・・ってよく見たら、キティちゃんって、くちないやん!
オシマイ☆彡
ここまで読んでくれたあなたへ。
メリークリスマス!
あなたにとって素敵なクリスマスになりますように♪
前回のクリスマスの記事はこちらです。
ここだけの話ですが、現在タイムマシンを作っているので、その資金に使わせて頂きますね。サポートして頂けたら過去のあなたに大事な何かをお伝えしてくることをお約束します。私はとりあえず私が14歳の時の「ママチャリで崖から田んぼにダイブして顔面めり込み事件」を阻止したいと思います。