退会者防止の効果を小学5年生で習う算数で検証してみた(初心者向け)
今年のコロナ禍は多くの事業者にとって様々な転換を迫り、事業者もそれに対応することで再び成長軌道に乗ろうと試行錯誤をしています。 この試行錯誤で近所で起こった代表的なことが飲食店のテイクアウトサービスです。
このテイクアウトサービスは、お店を営業できなかった際の売上創出の手段として実施された例も多いですが、やってみると新規獲得にも一定寄与している点もあるようです。ランチそのものでは大きな利益を生まないが、新規獲得コストとしては十分にメリットがあるというお話をされてる飲食店もありました。
一般的には、新規獲得で得た顧客をなるべく離反されることなく維持することは極めて重要であり、マーケティングの常識ともされています。それは、新規価格に必要なコストは既存顧客の維持の数倍に上るとされています。
今日はそんな当たり前の事実を、敢えて小学5年生にもわかる算数でで検証してみたいと思います。ビジネスにおいて既存顧客の維持(=退会者防止)がどれだけ重要であるかを知るための材料にしてみてください。
具体例を考える
サブスクリプション型のサービス提供企業であるX社を例に検証してみることにします。
以下の数値を前提として考えます。
<基本情報>
会員数:100,000人
一人当たりの売上高:1,000円/月
検証期間:12ヶ月
1か月あたりの売上は、100,000人 × 1,000 = 100,000,000円
つまり1億円です。
次に、新規獲得についてです。
<新規獲得>
毎月3,000人の新規顧客を獲得する
退会者については複数のパターンで比較を行いたいので複数パターン用意してみました。
<退会者>
毎月の残存会員に対して退会者が
① 0%発生する(退会率0%)
② 3%発生する
③ 5%発生する
この例で、12か月間での①②③での会員数の推移や売上はどのように変化するでしょうか?
実際に計算してみる
まずは会員数の推移についてです。
グラフにまとめてみました。
退会率が0%のケースでは、毎月3,000人のユーザーが増えていくので右肩上がり。
退会率3%ではほぼ横ばい。
退会率5%ではだんだんユーザー数が減ってしまうという結果になりました。
この前提条件の元だと、わずか数%の違いでも将来のユーザー数に大きな影響が出ることがわかります。
ではこの結果を売上金額で見てみるとどうなるでしょうか?
売上金額でみるとどれくらいのインパクトがあるのか?
X社のサービスは月額1,000円ですので、毎月の会員数に1,000円を乗じた金額が売上高となります。月ごとの売上高を折れ線グラフで表すと、以下のようになります。
ユーザー1人当たりが支払う金額は同じなので、ユーザー数の推移に比例した売上推移になります。そのためユーザー数の推移と同じく、退会なしでは右肩上がり、退会率3%では横ばい、退会率5%では右肩下がりになっています。
次に売上を積み上げたときのグラフを見てみます。12か月後にどれだけの売上の差が生じてしまうのでしょうか?
退会なし :1,434,000(千円)
退会率3%:1,200,000(千円)
退会率5%:1,069,326(千円)
退会なしと退会率5%の差額はなんと4億円弱です。
12か月の売上の差異は34%に上ります。
結論
この結果から、退会者が発生しない方が経済合理性が高いという事実のみならず、数%退会率が変動するだけでも売上に大きな影響が出ることがわかりました。
(実際のビジネスの現場ではコンマ数%の退会率の変化でも売上が大きく変化します)
町の夫婦2人でやっている飲食店から、グローバルにサービス展開をしている企業に至るまで、会員を保有するすべての企業において、退会防止というものは非常に重要です。
人工減少や消費行動の多様化など、新規顧客の獲得は得を追うごとにその難易度が上がっているといわれています。
こんな状況だからこそ、企業が保有する財産である『顧客基盤』を最大限に活かすための退会防止はその一丁目一番地と言えるのではないでしょうか。
本記事が、退会防止を考える上でのきっかけになれば幸いです。
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