見出し画像

TikTokのAI技術とデータ量がすごい

ここ最近でビジネス系ニュースの大きなトピックスの一つに、アメリカにおけるTikTokアプリの有り方に関する事案が挙げられます。今日は世間をエンターテイメントの領域でもビジネスの領域でも騒がせているTikTokで使われているAI技術について簡単に話してみたいと思います。

TikTokとは

TikTokは中国バイトダンス社が提供するショート動画共有のアプリケーションです。若年層を中心に爆発的な人気を誇っているアプリであり、2018年井はiOSで最もダウンロードされたアプリにもなりました。

TicTokは中国企業が提供するアプリであり、TicTokで扱われる情報は中国の国家情報法が適用される対象です。つまりバイトダンス社にも中国の情報活動への協力が義務付けられていいます。国家情報法では企業に対して以下のことが求められます。

中国政府がTikTokに対し、ユーザーの個人情報提供の要請を行ったときに情報提供を行うこと
中国政府がアプリ内の投稿に対する検閲権を持つこと
個人情報の利用範囲や目的をユーザーは知ることが出来ないこと
これらの懸念点である為、アメリカ国内でのTikTokの利用を制限しようとしたり、別法人を立ててそこでアメリカ国内向けのTikTok提供をさせようとしたりしているわけですね。

この辺りの細かい話はさておき、本日お話したいのは、TikTokというアプリがAI技術のデパートというか、AI技術の総合商社というか、それはそれは素晴らしい形でAI技術を活用しているアプリであることです。TikTokで使われているAI技術について今日は簡単にお話ししていきます。

TikTokの高度なAI技術

TikTokが凄いところはいくつもありますが、最も革新的であるのは高い技術力がもたらすAIレコメンドエンジンであると言われています。

私は日常的にTikTokは起動させることはあまりないのですが、「いまはどんな感じなのかな」とサービスそのものの現状確認でたまに立ち上げると気づけば際限なく動画コンテンツを見てしまってます。少し見るだけのつもりでもあっという間に30分程度は経過してしまいます。

TikTokを起動するとメニュー左にある『レコメンド』にて動画が再生されますが、ここで再生される動画がユーザー毎に最適化されており、興味関心の高いものが次々に再生されます。

ついつい動画を見てしまう顧客体験のカギは、スマートフォンに最適化された画面であること、1本15秒の動画を気軽に視聴できること、人気楽曲が次々と耳に飛び込んでくる音楽プレイヤーとしての使い勝手であると言われています。そしてそれ以上に重要な要素がAIによる動画のレコメンドであり、ここに高度なAI技術が使われています。

TikTokのAIはどういったものなんでしょうか?

国内外で様々な分析がされているようで、それらを参考に簡単にまとめてみると、大きくは『ユーザーの理解』と『動画コンテンツの理解』を行い、それを紐づけているようです。

以下に、それぞれどのような情報を取得しているのかというと、恐らく以下のようなものだと思います。

【ユーザーの理解】
・生年月日などのデモグラ
・完全視聴した動画の種類
・スワイプでスキップした動画の種類
・その人がフォローしているユーザー
・「いいね」を押した動画の種類

【動画コンテンツの理解】
・動画に含まれている要素
・映っている人の数や性別
・動画に使われている音楽の種類
・視聴しているユーザー層
・「いいね」をしているユーザー

これらの情報を用いて、ユーザーがどんな人でどんな動画に興味があるのか、動画にはどんな要素がありどんな人が見ているのかを割り出します。この2つの要素を組合わせることで、各ユーザーに適切な動画を再生リストにどんどん加えていくようです。
これだけでも十分に高度なAI活用であると言えますが、TikTokが凄いのは毎日発生する莫大な量のデータを使ってその精度を高めに高めまくっているところです。レコメンドエンジンの改良を行い続けており、圧倒的な動画投稿数、15秒という短いコンテンツの特性も相まって膨大なデータで学習させ続けることが他の追随を一切許さない競争力の源泉になっています。

AIを進化させるのはデータである

2020年1月時点のユーザー数はグローバルで8億人、国内だけでも1,000万人を超えています。ユーザー1人当たりの、1日のTikTok平均視聴時間は約42分であり、その閲覧動画数は160~200本程度です。

つまり、毎日とんでもない量のユーザーがアプリを起動していて、とてつもない量の動画が閲覧されており、これによってレコメンドの精度を磨きに磨いているわけですね。

AI業界でよく言われるデータ量の壁をTikTokはいとも簡単に乗り越えており、データを集めることに四苦八苦することなく、何にユーザーに心地よい体験を提供するかという課題に集中することができています。グローバルで8億人のユーザーがいることを考えると、全世界のユーザー合計で1日あたり6万4,000年分の時間がTicTokに使われている計算になります。1日で6万4,000年分のデータが溜まり、それを活用し続け、高精度になっていく。こう聞くと人間よりもAIによる解がより効果的であることにも納得できます。

エンターテイメントの領域において、AIは既に人間が思考せずとも快適な体験が出来ることを証明している一例です。

またTicTokではユーザーが好むであろう動画だけでなく、レコメンド外の動画もおすすめ動画欄に敢えて表示させて閲覧させるようにしています。たとえばスポーツに関連した動画を好んで見ている人に対して時たまペット動画が出てきたり、といった具合です。この偶然の出会いが不快にならない絶妙な頻度で行われることがアクセントになっています。自分自身の趣味が拡張され、世界が広がる感覚を与えてくれることもずっと動画を見続けてしまう理由です。

自らの価値観を大きく変えるような偶然の出会いやきっかけで人は成長します。その出会いやきっかけを与えてくれる仕組みがTicTokには備わっているということですね。人間が心理的に快であると感じる状態を“理解”し、自然と価値観の変容まで促す。TicTokが成し遂げたことはある意味この水準まで達しているのかもしれません。

政治的な絡み、ビジネスにおける戦略、AI技術に関してなどTicTokの動きはこれからもウォッチしていきたいと思います。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?