作物を自ら育て、食べる。群馬県高山村で始める「農的暮らし」 // 移住STORY4
移住1年目の私、山中麻葉が高山村暮らしをつづる連載。今回は4話目です。1-3話はこちらからご覧ください。
そうそう。私たち家族が高山村で暮らす様子が、youtubeにて「移住ドキュメンタリー」として公開されました。こちらも良かったらどうぞ。
ではSTORY4のはじまりはじまり↓
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前回のSTORY3では稲刈りの話題をお届けしました。それから約1ヶ月後、高山村で収穫祭が開催されました。
稲刈りに参加したメンバーに加え、田植えに参加していた子ども達も集まりました。私たちが移住したのは10月ですが、遡ること数ヶ月前、同じ場所で田植えがあったんですね。
(↑田植えの写真を頂きました。手前の帽子の子は、3話目でコンバインを操縦してたお兄ちゃん。やっぱり、作業が板についていてたくましい…)
彼らが植えてくれた稲がここ高山村で立派に育ち、それを私達が刈り取って、こうして目の前のおにぎりが出来上がるわけです。
とってもシンプルで、真っ直ぐな仕組みですが、この仕組みを一気通貫で体験し、お米の出自を理解できるのは、その機会に恵まれた一握りの人たちだけなんだと思います。想像力に乏しい私が移住せずに東京にずっと住んでいたら、袋詰めされたスーパーに並んでいるお米が「米のすべて」だと思っていた事でしょう。
こんにゃくの出自を知る
同じように、食べ物の出自を知る機会がもう一つありました。ある日、赤ちゃんを連れて散歩をしていたら、近所の農家さんが畑でこんにゃく芋を掘っていました。こんにゃくの芋なんて見た事がないので興味本位で眺めていたら、「この後うちでこんにゃく作りするから、おいでよ!」と声をかけてくれたのです。スーパーで売ってるこんにゃくしか見た事がなかった私。移住してきてまず、こんにゃく芋という作物の姿に驚いていました。これがこんにゃく芋の姿なのです。↓
この小さなヤシの木みたいな植物の根っこにこんにゃく芋が眠ってるわけですが、ここからどうやってプニプニのこんにゃくになるのか、全く想像がつきません。お誘いを受けてこんにゃく作りに参加したおかげで、やっと理解できました。写真を撮っていたので、ここにシェアしますね↓
<こんにゃくの作り方>
こんにゃく芋の皮をむいてカットする。
水を加えてミキサーで攪拌する。
鍋に入れて火にかけて煮る。
すると徐々に、固まってきます。そして魔法の粉(炭酸ナトリウム)を投入すると、どんどん固くなっていくので、焦げないように混ぜます。
固まったらタッパーに入れて形を整えて、お湯に落として煮ます。
ぐつぐつとしばらく煮れば、完成です。
お湯からあげて、包丁でカットすれば、生いもこんにゃくのできあがり!
はじめてのこんにゃく作り体験。材料はこんにゃく芋と魔法の粉と水だけなんですね。もしかしたら自分の家でも作れるかも…。道の駅にこんにゃく芋が売ってたので、今度トライしてみよう。
農的暮らし、はじまる
このような経験。つまり、作物を自分で作り、自分で収穫し、自分で料理をし、みんなで食べるという経験。東京では味わった事のないこの贅沢な経験を立て続けに体験させてもらい、私の心境が変化してきました。そう、「私も作物を自分で育ててみたい」と思うようになったのです。近々よく耳にする「半農半X」、「農的暮らし」という言葉。正直、移住する前まであまり興味はありませんでした。それが実際に経験してみると、こういう暮らしの楽しさ、そして豊かさを身をもって知り、目覚めてしまったのです。私もやりたい、と。
そして、実は……
ジャジャン! 早速、土地を借りました。
自宅から歩いて2分のところに誰も耕していない田んぼがあり、思い切って一段、お借りする事にしました。
耕作放棄地とは
高山村では「耕作放棄地」と呼ばれる使われていない畑・田んぼがたくさんあります。農業に従事する人たちの高齢化に伴い、耕せる畑・田んぼの量も減っていき、後を継ぐ人も少なくなってきました。土地の種目は「農地」なので、耕作放棄地には家を建てたりすることが基本的にできません。(農地転用しない限り)そのため、誰も耕さずに放置されてしまうのです。もったいないですよね……。そういう耕作放棄地でも固定資産税はかかるそうなので、少ない賃料でも良いから誰かに貸したいという土地の所有者が多いです。
私が借りた田んぼも数年以上、誰も耕しておらず、持ち主の方は農家ではなくお勤めに出ている方。仕事をしながらお米を育てたりする余裕もなく、草刈りをするので手一杯だったそう。ご家族と相談されたうえ、心よく貸してくれました。
移住情報を集めている人はよく、「田舎に移住しても、実は農地は所有できない」と聞きませんか? その通りで、「農地」を所有するには農家でなくてはいけないという法律「農地法」というのがあります。でも、農地を既に所有している人から「借りて」、自分の農地として耕すことは違法ではありません。それなので、「田舎に移住して農地を持ちたい」という方は、こういう耕作放棄地がたくさんあるような自治体だと希望が叶いやすいかと思います。
マコモダケプロジェクトのスタート
田んぼで何を育てるかについては、一緒に田んぼを耕してくれるという東京の友人達と相談して決めました。決議の結果、「マコモダケ」に決定しました。
マコモダケって、みなさん知っていますか? たけのこみたいな、アスパラみたいな、エリンギみたいな食感で、淡白でクセのない味の作物です。私も高山村に移住してはじめて口にしました。
この緑の部分の皮を剥き、中の白い部分を食べます。炒めても、ホイル焼きにしても、天ぷらにしても、そのまま生でサラダにしても美味しいというミラクルな作物なのです。食べて美味しいだけでなく、育てるのもお米ほど大変ではないそうです。それだけでなく、水を浄化する力をもっているそうで、マコモダケを育てると蛍が帰ってくるという話も。
色々な可能性を秘めたこのマコモダケに、移住してからの私はすっかり魅了されていました。
しかし育てるとなるとわけが違います。果たしてちゃんと収穫する事ができるのかどうか……。農的暮らし一年生の私達ですが、試行錯誤を楽しみながら、田んぼと付き合っていこうと思います。
早速、農的暮らしの上級生、というよりも、「プロ」の農家さんがトラクターで土を起こしてくれました。数年以上、耕作されていない土地だったので、びっしりと草が生えていましたが、トラクターのおかげで土がふっくらと顔を出してくれました。
マコモダケ農園の進捗は、これからこの移住STORY連載でも報告していきますね。
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それでは、またすぐ。
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