高梅 仁

あの日にもどれるなら。 Twitter (@TP1fzb)

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最近の記事

長崎の夏

おととしの夏休みだった。パパが運転する車の助手席に乗り,休憩を挟みながら高速道路を走ること約2時間。僕らは午後3時前に長崎のおばあちゃんの家に着いた。おばあちゃんちの庭ではセミがうるさく鳴いていた。暑い日だった。  長崎には坂が多く車が通れない道も多い。家と駐車場が相当離れていることも珍しくない。おばあちゃんちもそうだった。おばあちゃんは,縁側で扇風機の風を受けながら座っていた。 「よう来たね。待っとったよ。」    パパは仕事の関係で直ぐに出かけなければいけなかった

    • 初めての慰問

      「明日、慰問に行くんだけど、付いて来るかい?」 「いもん?」  金曜日の夜。すでにパジャマに着替え歯みがきをしているところへお父さんが帰って来ました。  寝る前にはっきりと返事をした覚えはなかったのだけど、翌朝起きたときにはお出かけ用の服が用意されていたので、ぼくは、よくわからないまま着替えを済ませ、お父さんとお出かけすることになりました。    お父さんが運転する車の中で尋ねました。 「いもんってなに?」 「うん。慰問というのはね、元々お見舞いをして慰めるって意味なんだけ

      • しゅんかしゅうとう

        きせつは夏。夏の朝。さっき起きたばかりというのに,おひさまはずいぶんと高く、まばゆい光がまどぎわにおかれたアサガオのはちにあたっています。 耳をすませば,せみの声。「ミーン,ミーン。」「ジジジジジ。」いろんななき声が聞こえてきます。 「あら,おきてたの。」 おかあさんが入ってきました。 「うん。今日は,せみの声がすごいよ。」 「そうね・・。替えのパジャマをもってきたから,あとできがえといてね。」 「うん。あのさあ・・。」 「なに?」 「せみってさあ,土のなかに・・。」 「あ,

        • ぼくとハメラちゃん

          幼稚園では、もうすぐ運動会があります。先生たちは準備に大忙しです。 ぼくたちが手をのばしてもジャンプしても届かない所に「ばんこくき」が飾りつけられました。 とてもきれいです。いろんな国の国旗がならんでいます。 日本の国旗はすぐに見つけました。ほかにもたくさんの国旗があって,ぼくが知っているのもあれば,はじめて見る国旗もあります。同じかなと思っても、よく見るとちがっていたり動物が描かれていたり,文字のようなものが書かれているものもあります。 気になった国旗を先生に聞いてみました

        長崎の夏

          ありがとう

          幼稚園の年長で迎えたある秋の日。 おばあちゃんの家にお泊まりをしたことがありました。 公園の砂場でトンネルを掘って遊んでいると、あっという間に時間は過ぎて、おばあちゃんが迎えに来てくれたときには真っ赤な太陽が海のむこうに沈もうとしていました。 「そろそろご飯だから帰ろうか。」 「うん。」 二人で歩いて帰ろうとすると 「ありがとうございました。」 おばあちゃんは夕陽に手を合わせてそう言いました。 「だれに言ってるの?」 「おてんとうさまだよ。」 「どうして?」 おばあちゃんは,

          ありがとう