#40 セカジョ、解散?

ガタン、、、ゴトン
ガタン、、、ゴトン

私は1人電車に揺られていた

都心に向かう車内は平日の昼間ということもあり空いている

プロテストも終わり昨日は練習も休み
頭を打ったりはしてないがまだまだ体作りも未熟な私
心の銃を受けて自分的には骨や内臓に異変はないと思ってはいるが万が一の夜中の急変に備えて夢子さんが寮に泊まってくれた
そして朝起きてだいぶ痛みも引いていた為、夢子さんは昼には帰って行った

その後、夕方頃に夢子さんから連絡が入る

社長からの伝言を要約すると
明日、15時から都内のホテルで記者会見がありライブ配信もされるのでそれに夢子さんと真琉狐さんの付き人として参加しろとのこと

お二人とも特に打ち合わせは不要とのことなのでそのホテルの最寄り駅で14時に待ち合わせ

今はそこに向かっている

実はセカジョは動画配信のチャンネルを持っている(意外?)

だがそれを運営、配信してるのは実はセカジョのスタッフではなく過去の膨大なアーカイブを個人で収集していた1ファンの田端さんという方だ

過去のビデオやDVDも保存用に残してたモノでも買いたい人がいればお金に換えてしまうので過去のアーカイブなんて事務所にほとんど残ってないのだ(セカジョらしいでしょ?)

どういう契約になっているのかはわからないが古参で顔馴染みの田端さんのチャンネルを公式認定しきっとロイヤリティを貰っているのであろう

そしてこのチャンネルは海外を中心に登録者も数万人おり更に昨日配信された今日の記者会見の予告Vのお陰で登録者も10万人目前に迫ってきた

まあこのチャンネルのお陰で私はズッポリとセカジョの沼に嵌ってしまったというワケなのだ

特に新人時代の制御不能のアイドルレスラー雨宮夢子のファイトスタイルには脳天を撃ち抜かれてしまった

なので田端さんありがとうなのだ


いやぁそれにしてもなんで電車は眠くなるのだろうか?
春だから?
陽気のせい?

そんなことを考えてたら本当に眠くなる

ダメだダメだダメだ!!
先輩2人待たせて寝過ごすなんて愚の骨頂なり!

SNSでも見るか

少し嫉妬、時には嫉妬に狂いそうになった同期達のキラキラした投稿も大きな心で
「うん、そうなんだね!キラキラしてるね!がんばってるねー!」
と、ニコニコして見れる(ちょっと嫌なヤツかも、、、)

そんな中
"鬼斬イザネ、HYDRANGEA退団!!"
というニュースが飛び込んでくる

「そうなんだぁー、イザネ退団するんだぁ」
薨とのQOH王座戦はどこか噛み合わないまま最後は一方的に攻められて敗北した印象があるが反則攻撃に隠された卓越したレスリングの上手さやあまり見せることはないが度胸満点の飛び技と本当はいいレスラーなんだよなぁー(完全ヲタ目線)

「フリーでやってくのかな?まぁがんばってよ(悪いヲタ目線)」


久々にガッツリとプロレス関係のSNSをDIGってるウチに目的の駅に着いた

「中央改札、中央改札、、あったあった!」
改札を抜けスマホで時間を確認
予定の12分前

「イェーイ!今日は迷わなかったから10分前行動成功、イェーイ!」
都会の駅という要塞を無事潜り抜けた喜びでテンションが上がる

すると後ろから
「たまーっ!何はしゃいでんのっ!!」

ビクッ

え?えええ?
ゆっくり振り返ると

うおおぉーっ!夢子さんも真琉狐さんもいるぅーー!!

「お!おはようございます!!」
ペコリ

「何1人でこんなとこではしゃいでんのよアンタはーっ!」

「あ、アハハハ、、、」
頭を掻く

「お2人で来られたんですか?」

「な、ワケないじゃん!改札出る前に会ったのよ!」
さいですかぁー

そして2人で私をジーッと見てから顔を見合わせ夢子さんが口を開く

「アンタ着替え持ってきてるの?」

「え?着替えですか?、、いいえ」

夢子さんは深くため息をつき
「アンタね、ホテルで記者会見なんだよ?そんなジーパンで行くつもり?」

「え?あのぅ、、付き人だと聞いてたので動き易い方がいいかとぅ、、、」
段々と小声になる

そしてチラッと2人を見ると
夢子さんはネイビーに同系色のピンストライプのパンツスーツしかもパンツは少しフレアがかってる
真琉狐さんはライトブルーの総レースで透け感のあるギャザーワンピースにハイブラのバッグ

そして私は、、、ジーパンにロンT、、、

「もう!おバカ!!」

「す、すみませーん!」

「どうする?真琉狐ーっ」

真琉狐さんは口調に人差し指を当て
ウーンと言って考える

「この辺だったらファストファッションの店ありますよね?全身揃えられますし綺麗めなモノでまとめればそれなりに様になると思いますよ」

「わかった、そうしよう!たま、店の場所調べて!」

「ハ、ハイーッ!!」


急いで調べる
幸いにも駅ビルの中にあった
エスカレーターを駆け上がり(やっちゃダメですよー!)
4Fまで

「あーもう疲れる!慣れない格好で走るの。真琉狐、適当に見繕ってやって」

「わ、わかりました!ピンヒールやめてパンプスにしといて良かったぁー」

そこから真琉狐さんは神技の様な速さで上下に靴、靴下まで見繕ってくれた

「たまちゃん、サイズは上Sで下XSで大丈夫かな?」

「あ、でも最近大きくなったんでぇ、、、」
くらいで夢子さんの怒号がっ!!

「もうーバカ!お会計前に見栄張るんじゃないのっ!!」

「まぁまぁ夢子さん。大丈夫!たまちゃん!私に任せといて!」

「ハ、ハイすみません」
ペコリ
一昨日褒められたばかりなのにもう怒られてるなんてあたしゃたまえじゃなくてまる子だよ

お会計は真琉狐さんが合格祝いにと出してくれた

値札を切ってもらいフィッティングで着替える

「すごい!サイズバッチリだ!」

着替え終わりフィッティングから出る

「おーーっ!!」
とお2人

白のちょいオーバーサイズのショート丈のシャツにチャコールグレーのハイウエストのプリーツの入ったAラインのミディスカート
そして厚底のローファー

キャワ!
真琉狐さんセンスいいー!
そしてありがとうございますぅー!!

「馬子にも衣装だね!」
き、効くぅーっ!!

「て、言ってる場合じゃないな。急ごう!」

3人揃って早歩き
駅近のホテルなのですぐ着いたが予定より30分ほどオーバーしてしまった

てか私のせいですぅー
すびばせぇーーん!!


エントランスを抜けロビーへ
するとそこでガンタさんが座ってコーヒーを飲んでいた

「あれー?ガンタさんも来てたんだ?」
夢子さんが後ろから声を掛ける

するとガンタさんは振り返り
「おー!夢ちゃん!お、みんなお揃いで!」

「おはようございます」
私と真琉狐さんは挨拶をする

「おはようおはよう!お!そういやたまちゃんプロテスト一発合格したんだって!おめでとう!真琉狐は3回も落ちたんだぞ!なぁ?」

「もうっ!2回ですよ!恥ずかしいからやめて!」
拗ねる真琉狐さん

「ごめんごめん!もうおっさんになると記憶が曖昧でさ」

なんかびみょーな空気が漂う

だがそんなことはお構いなしでガンタさんは話かける
「それにしてもめちゃくちゃ遅かったね?大丈夫なの?30分切ってるけど」

「そうなのよ!実は、、、って話てる場合じゃないのよ!ガンタさん控室知ってる?」

「あープレスルームの近くだから一緒に行く?」

「ありがとう!助かるわー」

そして3人でひょこひょことガンタさんの後ろに着いて行く


「ここがプレスルームだからその先だわ」
と控室を指差す

「ありがとうガンタさん!じゃあまた後で」

「おう!また後で!」
とガンタさんは手を軽く挙げプレスルームに入って行く


そして控室
夢子さんが扉を開ける

ガチャ

控室の中には何人かの知った顔
そうセカジョのスタッフ達

そして何故かスーツ姿の亀さんも!

「なにー亀ちゃん来てたの?言ってよー!」

「いやいや急に今朝よ病欠出たから来いって!社長から!」

「そうなの?で、何してんのよ」

「さっきまで会場の設営しててこの後は案内係みたいなこと言われたけどさ。よくわかってないのよねー」

「相変わらずアドリブ重視ね!この会社は。で、社長は?」

「何かどっかの部屋で昨日から泊まってるらしいわ」

「何それ?もったいない!もう!真琉狐、会ったら言ってやれ!私のポトレ代を宿泊費にしないで下さいって!」

「ハハハハハ」
真琉狐さんは乾いた笑い


なんて雑談をしていると星野さんが控室に入ってきた

「おう!夢子やっと来たか」

「星野さんおはよう!で!結局何の記者会見なのよー!」
夢子さんは少し詰め寄る

星野さんは夢子さんの圧に少し押されながらも
「いやいやいやいや、後ちょっとでわかるから!なっ?なっ!」

強引に夢子さんの圧を押し返す

根負けする夢子さん

「夢子、ちょっと流れだけ説明するな。定刻過ぎには記者会見が始まる予定だ。3人はとりあえずここの控室でモニターを見て待機しててくれ。で、出るタイミングになったら誰か寄越すから会見場の扉裏で待機。名前を呼んだら夢子と真琉狐は出て来て着席。たまは扉前で待機。そこから質疑応答とかあるからよろしくな」

「質疑応答って何聞かれんのよー?何にも考えてきてないけど!」

「まあまあ、そこはアドリブで!」

出た!セカジョ名物アドリブ、、、

「おーい!スタッフー!そろそろ配置着いてくれー!プレス呼び込むぞ!誘導してくれ!」
星野さんは仕切り出す

そしてスタッフが控室を出て行った

「もう!ほんと何なのよー!」

急に現場がピリついた空気を醸し出す
私は一抹の不安を覚え思わず


「セカジョ、、、解散とか、、、しないですよね?」

3人とも押し黙り
静寂の中
空調の音だけがやけに大きく聞こえてきた

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