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025 物語の予感
カヤックで漕ぎ出す、
豊かで孤独な宇宙。
そこは物語の予感に満ちている。
今思い返すと、地球の歩き方を片手に世界を旅していた頃の旅の目的は、本に書かれた場所の確認だったように思う。
アユタヤ遺跡に行き、本に掲載された写真と同じ構図で写真を撮り、それを旅の思い出として残す。
「ツアー旅行には行った事がないんだ。個人旅行で束縛されず、好きな場所に行きたくて。」
そんな言葉でコーティングされた「地球の歩き方ツアー」。
(とはいえ、英語音痴な僕は「地球の歩き方」に何度も助けられてるし、その日、その瞬間に出会ったものすべてが濃密な記憶として、今も自分の心に焼き付いているんだけど)
そんな旅を数年繰り返した頃、後輩の紹介でカヤックを趣味にする友人ができた。
そしてその彼からカヤックの魅力を聞く中で、人生を変える言葉を聞いたのだ。
「カヤックからでしか見えない景色、行けない場所がたくさんあるよ」
想像しただけで心は踊った。
まだ見ぬ世界に、ほんとうに心が踊り出した。
翌週には折り畳めるカヤックを買い、琵琶湖へ向かった。
「いつか外国の海へ漕ぎだして、地球の歩き方ツアーじゃない、自分だけの世界を見つけるんだ」
これからはじまる物語の予感を感じながら、その日、僕は水面を漕ぎ出した。
(カヤックの思い出は別の機会に。)
***
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-もの-
Voyager 460T
僕が最初に買ったカヤック。折り畳めるから家で邪魔にならないし、一人乗りにも二人乗りにもなるから、孤独な宇宙だけじゃなく、その宇宙を誰かと共有できる。
あぁ女子と共有したい。
(カバー写真:目黒川を漕ぐ「宇宙を共有したおっさん二人」)
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