社会保険の適用拡大について
社会保険に加入させないといけない社員の範囲がドンドン広がっています。
本題に入る前に「社会保険」という言葉について説明しておきます。社会保険というのは、健康保険と厚生年金を足したものです。その総称です。労働保険というのは、労災保険と雇用保険の総称。違います。
さて、本題です。少し前までは、社会保険に加入するべき対象者は、企業規模にかかわらず、所定労働時間の4分の3以上働いているだけが対象でした。つまり週40時間の会社は30時間以上働く人だけが対象。基本、これだけ覚えておけばよかった。日数も4分の3以上なんですが、まあ、とりあえず時間の基準だけ覚えておいて下さい。
今も4分の3という大原則はあります。で、一昨年(令和4年)から企業全体で101人以上のところは、週20時間以上になってまして(4分の3ではない)、今年(令和6年)の10月からはこれが51人になります。ドンドン基準が引き下げられてます。他にも要件ありますが、話がゴチャゴチャするので割愛します。細かい要件を知りたい方はこちらを見てください。
それでですね、政府はこの人数制限を撤廃しようとしているらしくて、そういうニュースがちらほら出てきています。
そうなりますと、週20時間以上の人は全部(パートだろうが、アルバイトだろうが、契約社員だろうが、名称は関係なし)社会保険に加入することになります。
この週20時間というのは、雇用保険の加入基準と同じです。ということは、雇用保険に加入する人は全員、社会保険に加入ということになるってことです。
個人経営の場合について少し話しておきます。個人経営の場合、5人未満のところは社会保険には加入しなくていいです。これが原則。ただし、農林漁業や、飲食店などのサービス業は、人数に関係なく、現在、社会保険には加入しなくていい。こういうルールになってます。ややこしいですね。法人は人数に関係なく強制適用、個人は人数と業種で扱いが異なる。
この個人の扱いも検討課題にあがっていますね。具体的には加入しなくて良い業種というものをなくす方向です。
ということは、将来、業種に関係なく、個人でも5人以上雇用するところは、社会保険に加入ということになる可能性が高いです。適用事業所についてはこちらを見ておいてください。
社会保険料はざっと給与の額面の約15%が事業主負担となってます。ということは、時給1,000円で雇ったつもりが、実は1,150円の負担になるわけです。これはかなり大きい。
当然、本人も天引き徴収されます。同じく15%。これも痛手です。将来年金が増えるからいいじゃないかという人もいますが、パートの方は通常、今お金が欲しいわけです。
となると天引き分だけ(15%分)、余計に働く必要が出てくる。余計に働くと、いわゆる○○円の壁というものが立ちはだかってきます。税金とか社会保険の扶養の問題です。
細かくは書きませんが、働く人も、企業側も非常に困った形になるわけです。一言でいって、面倒なんです。
とにかく、国は、働く人をほぼ全員、社会保険に加入させたいわけです。まずそういう方向性を理解しておくことが大事です。企業運営に与える影響が大きいからです。
社会保険料が増加した場合、どこで補うのか、値上げするのか、なにか別のところで経費を削減するのか、今から考えておくべきですね。
国がこのような方向で進めていけば、いずれ、企業は、雇用をやめて外注という形に移行していくだろうと推測します。外注であれば、労働基準法は原則適用されないです。ただ、形式的に外注(委託契約とか請負契約)にしても、内容的に(実質的に)雇用契約であれば、適用されることもあるので注意してください。委託契約などにすれば基本、労働時間の制約はないし、残業代も社会保険の問題もない。
国は、企業が簡単に人を雇いにくい状態を作り出しているように見えますね。
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