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スポーツと投げ銭は相性最悪!?

スポーツ界ではコロナの影響によって、無観客試合の可能性も出てきて「投げ銭」のサービスが増えてきたり、スポーツ界に投げ銭という文化を根付かせようという動きが増えてきています。

SHOWROOMのようなサービスや、アイドルを目指している女の子に対して投げ銭するサービスがあったり、中国なんかでもインフルエンサーのライバーに対して数億の投げ銭する事例があります。

私がスポーツと投げ銭が相性が悪いと思う理由は、実は3年前くらいに投げ銭のサービスを考えていて、その際に仮説を立てヒアリングもしたので、投げ銭については正直悲観的な意見です。悲観的な理由として既存の”配信者”への投げ銭とスポーツの投げ銭では大きな違いがあるからです。ただし、今は状況がかなり変わってきたので少し違う可能性もありますので考察も加えて書いていこうと思います。

条件

試合に対して投げ銭する場合、試合中に良いプレーをしたり、勝敗を決めるプレーをしたとして本当に投げ銭するのか?という疑問があります。投げ銭サービスを考えている人は本当に自分が使うのか?をちゃんと考えてみるとわかります。自分は99.9%しないので、投げ銭サービスは無理だと思いました。対象が自分が好きなNBAでも絶対にしませんし、つまり良い(すごい)プレーや勝敗を決めたとしてもファンは投げ銭をしようとしないという前提があると思います。

いやいやお前が冷めてるだけでもっと熱狂的なファンは出すだろと思ったかもしれません。それが言えるのは熱狂的なファンのあなたで、絶対に投げ銭してくださいね?あとは素晴らしいUIUXがあればきっといけると思うかもしれません。しかしUIともかく、UXの議論はもちろん当たり前ですがここではそもそもの話をしていきたいと思います。

可能性があるとしたら、どうしたら投げ銭するのか過去にヒアリングした時の意見を参考にして、いくつか考えてみました。先ずは日本代表戦です。オリンピックやこの前のラグビーW杯のような国を背負って戦ったりメダルをかけたパフォーマンスや勝敗を決めるプレーをした選手や代表チームには投げ銭するかもという"予想"はあります。

ナショナリズが高まるなかで、世論(マクロ)が注目する大規模な大会であれば寄付する国民の確率は上がりますし、実際に資金の寄付があったり”試合後”に結果によっては特需が生まれやすいので投げ銭する可能性はあります。リアルでもオンラインでも、興奮している最中に投げ銭するのかと言われたら疑問ですが、簡単にできる設計ならお金が集まりそうです。

これはTVなどマスメディアが取り上げ、国民が盛り上がるくらいの、4年に1度や世界一を決める決戦など意外はほとんど試合で投げ銭は成立しないという見解です。そもそも試合というコンテンツは配信者が本人ではないので、例えば音楽アーティストのドームツアーのライブの配信にTVやスマホで見て投げ銭するのかという疑問があります。スポーツと音楽ライブは違うというならそれは何でしょう?試合で投げ銭を成立させるには投げ銭で期待以上の投げた回数もしくは流通金額がないといけません。

では試合ではなく、チームや選手個人がライブ発信したらどうなのか、これはユーザーの心理がすごく重要で、スポーツ選手と既存の配信者は大きく違うと思っています。ユーザーが課金する理由は配信者のランキングを上げたい(自分が育てた感)や配信者に認知されたい(近づきたい)配信者の夢(目標)を叶えてあげたいなどが考えれます。つまり心理的なリターン(見返り)があるから投げ銭をします。

あるいは配信者と視聴者の相互コミュニケーションをとることで心理的なリターンを得ることができます。試合には相互コミュニケーションはありませんので成立しない理由になります。トーク配信の場合、心理的なリターンはなんなのかを考えてみると非常に難しいと思います。投げ銭によるダイレクト課金は素人さがあるインフルエンサーの方が現状多くの課金の"文化"があるように思えます。芸能人のような有名人はTVやYoutubeのような広告課金型による配信がメインです。

キングコングの2人で考えると、オンラインサロンという定額ダイレクト課金型の西野さんとYoutubeによる広告課金型をとっているカジサックとの違いがあります。西野さんは幅広いですが、単純に2人の戦略やポジショニングは違います。

投げ銭はダイレクト課金型でも定額ではなく、変動する課金モデルです。選手もSHOWROOMや17Liveのようなのを選手が使えばいいですが、ライブ配信をするならインスタライブやTikTokとの明確な違いを考えないといけません。

スポーツ選手という価値はライブ配信でどこまで影響するのか、2年前にSHOWROOMの方にスポーツ選手の配信の戦略を試みたが、結果はスケールが見込めず撤退(タイミングではない)の判断をされたそうです。そこでアイドルの配信とは全然違う心理、相性の悪さを言っていました。

相性最悪の理由

配信者と視聴者の相互コミュニケーションのなかで投げ銭が成立するのは相互承認欲求が満たされるからだと思っています。SHOWROOMや17Liveは特にその感覚がわかりやすいと思います。

例えば投げ銭することで成長することができ、次のステージに進みやすくなる感覚=育てた感はゲームの課金に似ています。配信者の努力だけでなく視聴者の行動(投げ銭)によって配信者のランキングや、露出が目に見えて上がるから相互に承認欲求が満たされます。しかしスポーツにおいては視聴者の投げ銭で選手に与える成長感覚が非常に弱いです。投げ銭でランキングが上がったり契約がつかめたり、試合に確実に出れることはありません。視聴者の投げ銭による影響力が弱いので相互の承認欲求が満たされません。

投げ銭が行われやすいのは、決して感謝や応援でという単純なものではなく心理的リターンがあるからです。一方通行の投げ銭でいうと『賽銭』という文化が日本にはありますが、これも心理的リターンがあるから人は100円前後の投げ銭をしています。賽銭の平均金額が最も高いのが三重県(平均2323円)伊勢神宮の存在が2位以下を大きく突き放しています。平均金額が最も低いのは沖縄県(平均63円)本土とは違った歴史背景と神社の数が11社と極端に少ない理由があります。ここにもヒントがありますよね。

配信者の努力も当然だが、それだけでなく視聴者の行動が大きな影響が与えれないとあまり意味がありません。AKBの総選挙の投票権など、自分の課金の金額が順位や露出に反映されないと投げ銭はしません。

Bリーグで行われたオールスターのSNS枠のようなオンライン投票でも投げ銭は行われてないものの心情としては同じだと思います。推薦や実力だけでは選ばれなかった選手が視聴者の行動(投票)によって順位や露出が変わるから毎日コツコツ投票するのです。仮にオールスター1枠を有料投票にすればきっと流通が生まれますが、実力主義でアイドル以上にバッシングを受けやすいのでレピュテーションを気にするリーグは絶対にやりません。おそらくフェアじゃないとかいいそうです。

金銭の流通を大きくするためには文化と心理的リターンが大事です。文化の成熟度=人数で、心理的リターンの魅力=流通額かなと思います。

投げ銭の相性がいいのは間違いなく下記のツイートに近い条件でしょう。

新人デビューイベントわずか2週間の戦いでそれぞれ1億ベイビーコイン(約3,500万円)、2億ベイビーコイン(約7,000万円)で歴代記録更新だったそうです。50%以上が運営にいくそうなのでプラットフォーム強しですね。というかキャバクラにはすでにその文化があり、弾き語りでも路上ライブがあったりそれぞれにが投げ銭の文化があったことが背景にあります。

ではチームに熱狂的な人は?投げ銭するのかという疑問ですが熱狂的に代表されるJリーグのサポーターの方に投げ銭についての意見を聞いたことがあります。その方はアウェーにも全試合足を運ぶ方でした。「投げ銭があったらしますか」という質問を昔しました。

(標準語に変換)背景による。俺たちサポーターは投げ銭だろうが、チケット代だろうがファンクラブだろうがクラブの為にお金は使う。応援しているクラブの試合には、たとえ大雨大雪でも足を運ぶ。クラブの理念に投げ銭がマッチしてるなら投げ銭する。投げ銭の一部が選手にはいるとかじゃない。サポーターはクラブを愛しているから選手に課金するのとしてもクラブへの愛を感じればするかもしれない。経営や試合運営がクラブの理念から外れていると思ったときには、投げ銭はしない。現状は、投げ銭しない。仮に良いプレーをしたとしても出さない。

話をしていると「投げ銭とかお金じゃないんだよね。みんなとスタジアムでチャントしたり、一緒にアウェーに足を運んだり、応援する体験に俺らはお金を使ってる。」サポーターの人は、熱狂的だから出すというのは大きな間違い。むしろ人生かけてたり、生活の一部になってる人より選手のファンや流行語にもなった”にわか”のが投げ銭する確率が高いのではないでしょうか。もちろん心からクラブを愛し「クラブのために生きる」サポーターにも投げ銭の可能性がないわけではありません。ただ理由が必要です。

また「投げ銭を考えてる人絶対サポーターちゃうやろ?サポーターなら投げ銭とか考えへんし。」という方もいました。クラブのフロントスタッフや視聴者側が投げ銭を考えるなら、誰かが出すを考えるより、自分が出したくなる仕組み、仕掛けを考えましょう。UXにその辺は左右されるので単純じゃないと思います。

スポーツで投げ銭が成立する条件

投げ銭は定型課金ではなく、購入型、クラウドファンディングとも違います。投げ銭は言うならば青天井なものなので0円にも100億以上にもなります。スポーツで投げ銭が成立するかもしれない条件をいくつか考えてみます。

①無観客試合の場合

これは完全なる寄付の概念といえます。苦しいチーム状況を救う新たな収益源の一つになりうると期待されてますが、あくまで理念やビジョンにそった文脈はなく、存続や新しい打ち手の文脈があります。とはいえ、経済的に苦しい状況であり、投げ銭する側にも余裕があるわけではないのでどれほど流通するかはわかりませんが、ないよりはあったほうが良いと言えます。

②コミュニティとしての投げ銭

心理的リターンを作りやすいのはコミュニティ型です。クラブというコミュニティの中でオンラインでの相互コミニケーションを投げ銭によって生まれる特典や変化を相互承認欲求を満たせるコンセプトや中身を作ることで活性化すると思われます。試合ではなく、普段の活動における内容次第では月に数十万円の投げ銭があった実例もあります。(もし興味あるチーム関係者の方はお繋ぎします)

③社会的な意義

売上の8割は全顧客の2割が生み出しているパレードの法則(2:8の法則)に代表されるように、どれだけ2割の人にとってめちゃめちゃ刺さるストーリーになるかです。例えば○○に売上の一部を支援の場合、○○に思い入れのある人は投げ銭する可能性がありあます。視聴者のモチベーションを上げ、配信者のプロデュース力、そして背景にあるストーリーが重要です。タイミングが重要になると思います。しかし、これは金額は大きくても手元にお金が残らないです。

①②③に加えて④特典(リターン)が多いものも考えましたがこれは投げ銭が握手券や投票権にかわるならあるかなと思いました。また1000円で1000ポイント購入して、10ポイントから投げ銭できて、投げ銭されたプレイヤーがランキングでリアルタイム表示されるといったある意味ゲーム感覚なものも面白いとは思いますが、結局はUIUX次第で投げ銭の感覚ですらなく、視聴者はお金を投げることができるかもしれません。

BtoF

ファンビジネスはその人やチームの価値を感じてもらう事で、信頼され、共感してファンになります。代表的な芸能人、ユーチューバー、インフルエンサーもファンビジネスの1つと言えます。いまでは企業も消費者ではなく、ファンを増やすためのPRやマーケティングに力を入れています。

変化を嫌うファンの嗜好と、企業として必要なことが相反する場合もあります。安易なマーケティングやブランディングを実行して、熱心なファンを裏切るようなことは避けなければなりませんし、無償で奉仕していてはビジネスが成り立たないので、持続的な成長を遂げるためには、時に大胆に変化をすることも重要です。理念やビジョンをブラさず、今まさに、プレイヤーとファンという幻想を絶妙のバランスで保つことの大切さと難しさが問われているかもしれません。

もし投げ銭をするのかどうかを問うならば私はしません。しかし、スポーツにも投げ銭という文化が今後根付く可能性はあると思います。それはアイドルやインフルエンサーでも成り立っているからという憶測ではなく、どんな形でもいいので、自身の体験やお金を投じた時の心情と一致するものがサービスとして形になった時、人は使うと思います。投げ銭という文化が根付くか否かはサービスを提供する企業やそれを支援する人たちのパワーによって変わってくるかもしれません。

スポーツにおいて相性がいいのは間違いなく、投げ銭よりギャンブルでしょう。考えてみれば投げ銭は配信者と視聴者の相互コミュニケーションのなかで相互承認欲求が満たされるもので、ギャンブルは視聴者の一方通行の金銭的と心理的リターンを揺さぶれるコンテンツです。スポーツにはその熱狂を生み出すことができます。私は競馬もパチンコもtotoもやったことないですが、アメリカでのユーザー体験によって思ったことです。

投げ銭文化根付くといいですね。応援はしています!面白いUIUXに期待しています!





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