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『秋色の匂ひ』
窓の外では夕立が続いている。
時折鳴り響く轟音は、昨今の季節の狂いを嘆くように
私の気を引くように鳴り響いている。
すっかり秋らしい”匂ひ”を忘れてしまった。
『一年が短くなった』と懐かしい顔を眺めているとそう言った。
子供の頃に感じた”人の老い”に関しての感性を鈍くなり、
その感覚は”自分の老い”に関する感性も鈍らせている。
昔の感覚でいえば、秋のような”老い”の中に感じる重厚さというか、
暖かくもあり、まだまだこれからという気持ちの中に夏の名残惜しさもあり、
寂しげでもあるけれど、月日を重ねた強さのようなものがそこには確かにあった。
今では年相応の美しい”老い”ではなく、
”若さ”に引き摺られた醜さを感じてしまう時がある。
私の一生を一年に例えるなら今、どれくらいの季節なのだろう?
季節感のないオフィス街でネクタイの紐を緩めながら、カフェのメニューに目を落とす。
そこには一年中変わらないメニューたちが並んでいる。
ふと、目を閉じると其処には秋色に照らされた商店街が見えるような気がした。
今日は少し遠回りして帰ろう。
金木犀の”匂ひ”がする方へ…
劇団での企画や、自分の企画の制作費として有難く使わせて頂きます。髙頭祐樹がやりたいことを出来るだけ多く皆さまに届けられるように色々と作っていきたいと思っています。