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「宿題早く終わったじゃん!頑張ったね!」は危険なほめ言葉

こなすだけの勉強を卒業し、意味のある学習をするには、
「早さ」をほめるのではなく、「姿勢」をほめる必要があります。

ただやるだけか、目的のある学習か。

「勉強をする」といっても、2つの種類があります。1つは、自分を向上させるために勉強する、という本質的なもの。そしてもう1つは、人から言われてただ作業的に「こなす」時間のことです。前者は目的を持った学習です。計算をミスなく解けるようになる、漢字を覚える、といった目的が設定されています。後者は、こなしているだけなので、時間の浪費です。時間を費やせば力がつくわけではありません。車の運転が良い例なのですが、運転時間と運転の上手い下手はあまり関係ないでしょう。勉強も目的なく時間を費やしたところで、学力が伸びるわけではありません。

声かけによって「こなす」勉強が始まる

 「勉強をしなさい」「宿題終わるまでゲーム禁止ね!」と言われると、子どもたちは、宿題を終わらせさえすれば良いという発想にいたります。つまり先ほどあげた「こなす」勉強が始まります。
 実は、「宿題早く終わったね」という褒め言葉も一見普通に聞こえますが、危険な側面があります。 
子どもたちは、ほめられたこと=良いこと、として捉えます。「宿題早く終わったね」という一言は、「早く終わった」ことをほめる一言です。大人は「集中して頑張ったじゃん!」ということを伝えたいのですが、子どもたちにとっては集中したか否かは関係ありません。「宿題が早く終わった」ことが良いことなのであって、手段は問われていません。
 宿題を終わらせるためだけに頑張っても学力は伸びません。漢字の練習だって、ただ書いていても覚えるはずはなく、覚えるための工夫や意識がなければただ時間が過ぎるだけです。
 ただ単に、子どもが宿題を終わらせること、机に向かうためにほめること、またルールを課すことによって勉強をするよう仕向けても、学力向上には役立たないのです。
 では、どうすれば良いのでしょうか?どうすれば、自分を高める学習に変えていけるのでしょうか。いくつか方法はありますが、ここでは、2つのほめ方を紹介します。
 

ほめ方① 「姿勢をほめる」

 1つ目は、姿勢をほめることです。先ほどの「宿題早く終わったじゃん!」の中には、本来「集中して頑張ったね」という意味があります。それを、そのまま「集中して頑張ったね」と伝える方法です。これは手軽ですぐに実践しやすい方法です。少なくとも、「宿題早く終わったね」よりは良い褒め言葉でしょう。

ただ、手軽さゆえに危険もあります。それが、実際は集中していないケースです。宿題が早く終わっていても、子どもが作業的にこなしている場合(=目的がない勉強の場合)があります。子どもがどのように勉強しているかを見ずに「集中していたね」とほめれば、「勉強」の基準が下がります。このほめ言葉を使う際には、しっかりと子どもたちが集中していることを確認する必要があるので注意してください。

 ちなみに、「宿題が早く終わること」=集中した、ではありません。課題を早く終わらせることに確かに集中は必要ですが、早さだけで集中力を測るのは無理があります。計算練習でも「間違わないよう丁寧にゆっくり解く」ことも1つの「集中」です。スピードは早くないですが、丁寧に仕事をこなすスキルや確認する力が身につくでしょう。このように、早さだけが集中の基準ではありません。

 一般的には、机におへそが向いていて、足が地面にしっかりついていて、鉛筆を放すことなく問題を解き続けている姿勢を人は「集中」と呼びます。このどれかができていれば、それをほめることができます。「今日、鉛筆一回も離さなかったね」「最後まで連続で解き続けてたね」「一回もよそ見せずに頑張ったじゃん」。どれも、集中していないとできないことです。これをほめられれば、子どもたちは次もそうしようと心がけます。そしてその姿勢はそのまま集中に反映され、良い取り組みにつながります。
 集中したね、と一言でほめることもできますが、より具体的にほめることでより効果があります。 
 

ほめ方② 「内容をほめる」

自分を高める学習にしていくもう1つの方法は、解いた問題の内容を褒めることです。例えば、漢字練習なら、良い1文字を指して「この漢字、上手じゃん」など。計算練習なら「途中式綺麗じゃん」「ここ暗算頑張ってるじゃん」「速いだけじゃなくて、間違わないように気をつけたんだね」など、宿題の内容をほめることができます。
 子どもたちは、ほめられることで「もっと字を綺麗に書いてみようかな」「じゃあ次はもっと計算を丁寧にやってみようかな」という気持ちになります。結果として、何かを目指す目標のある学習になっていきます。
 

ほめ方はとても大事 

「宿題早く終わらせたじゃん、頑張ったね」はよく聞くほめ言葉ですが、ほめ言葉として良いものとは限りません。子どもに「早ければ良い」という誤った価値観を伝えてしまうことがあります。毎日やる宿題も、力をつけようと思いながら頑張るか、ただ終わらせるかで1年後には大きな違いになります。せっかくやるのであれば、それも力につなげられる学習にしたいものです。
 そのためにも、普段のほめ言葉を具体的にすることは有効です。「姿勢」や「内容」を褒めることを意識することで、子どもたちの「学習」に向き合う姿勢を変えることができます。

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