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スタートアップ5年のリアル

こんにちは、株式会社プレースホルダの代表をしている、後藤(takasuke_go)です。
プレースホルダは2016年に創業した、スタートアップベンチャー企業です。
先日9月23日に、創業5周年を迎えました。

当社は「夢と感動を創り届ける」というミッションを掲げ、子どもたち・そして子育てに関わるすべての人に、夢・感動をお届けできるサービスを創っていきたい。
という考えのもと、エデュテインメント×テクノロジーを事業領域とし、テーマパークのリトルプラネット、習い事プラットフォームのリトルスパークを主力に事業展開をしています。

会社設立から5周年を迎え、この場を借りて、改めてリトルプラネットへ来場いただいているゲストの皆さん、リトルスパークのユーザー・先生の皆さん、取引企業の皆さん、株主の皆さん、そして社内メンバーの皆さん全員に感謝いたします。

創業からの歩みや新型コロナウィルスのことなどに触れながらこのnoteを通して、共感いただける方・応援いただける方が少しでも増えてくれれば、、と思い書いてみます。

創業を振り返って

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プレースホルダは2016年9月に秋葉原の小さなオフィスからスタートしました。

創業のきっかけはVRの登場です。私自身がゲーム会社を起業していたこともあり、当時はUnityというゲームエンジンでゲーム開発をしていたのですが、UnityとVRは相性がよく、自分で考えた世界やテーマパークのような施設をVR空間に作れる!ということにすごく感動しました。

ただ、ヘッドマウントディスプレイの使用には年齢制限があり、そういう制約がある中で、どうやったらデジタル空間で子どもたちが楽しめるテーマパークを作れるのか?と試行錯誤していくうちに、現在の主力でもあるリトルプラネットが生まれました。

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最初に作ったコンテンツの1つ。VR用のデバイスとスプレー缶を融合した、落書きコンテンツ「SPRAY PAINTING」

会社を設立してすぐに突き当たった課題が、リアルな施設を実際に作ることの難しさです。
リアル施設の体験型コンテンツから予約決済システムまで多くの部分をデジタル化するために、やらないといけないことが非常に多くあり、出店する商業不動産独特の慣習やルール、リアル施設の内装施工設計、現場オペレーション、などすべてを手探りでやってきました。

創業当時は、私を含めてゲームの開発経験者が数人しかいない状態だったこともあり、不動産や建築について未経験なメンバーしかいない状態でした。
そんな状態でも、どういう世界観・テーマで体験型コンテンツを作るか、内装・外観はどんなデザインか、どんな視線誘導でどんな導線を作るか、避難動線をどう確保するか、電気工事とサーバへのケーブルをどう調整して配置するか、設備計画をどうするか、スタッフはどういう服装か、どういう言葉を話すか、、これら1つ1つが来場するゲストの体験に紐づいているため、どうしても自社だけでやる必要がありました。

ファミリーパークとして成立させられるだけのコンテンツ数を開発しながら、同時に出店交渉や内装工事設計、オペレーションマニュアルの策定、オペレーションスタッフの採用・運営研修、アプリ開発、などを同時に進めていくという、かなりのハードワークを続ける日々が続いていました。

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初の期間限定施設「リトルプラネット 0号店」竣工時の写真

何度か失敗も繰り返しながら、数人でチャレンジした「0号店」は、大変ありがたいことに多くのゲストに来場いただけ集客目標を大幅に上回る成果がでたこともあり、全員の自信につながる結果を出すことができました。

この時の数人の中に、今の取締役の鈴木、VPoEの西尾、リトルプラネット統括マネージャーの佐瀬、一級建築士の森山がいます。創業時からなにかと困った時には、必要な人が参画してくれたり、とても運や環境に恵まれていたと思います。

成長期

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0号店で大きな実績を作ることができ、そこから次ステップとして常設の1号店を作ることになるのですが、このタイミングで資金調達ができたこともあり、スケール化に向かっていきます。

当時の計画では、店舗型ビジネスを主体としながらも、いかにデジタル化してスケールさせるか、という点に選択と集中をしていました。

そのため、アプリ開発だけでなく、どんな場所であっても遠隔でコンテンツを更新し続けられる仕組みや、POSレジと館内センサーを使いリアルタイムで入退場を管理する仕組み、など、さらに大きく面を広げる準備を整えていき、約1年で100坪〜300坪の常設型施設を全国6ヶ所に急展開するスピード感で拡大させていきました。

常設展開を行いながら、百貨店・商業施設さんとタッグを組ませていただき、期間限定のミニテーマパーク展示をやらせていただいたり、海外(ハワイ)での展示をやったりと、繁忙期のイベント需要や海外展開にも対応できるよう、コンテンツ開発・インフラ開発をしていました。

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本当に運や環境に恵まれていたと思うのですが、創業から3年目(FY2017〜FY2019)まで毎年500%以上の成長率で事業が成長していたため、少し怖いくらいに当時の事業計画通りに推移していました。

特に組織・チームについては当初からとても優秀なメンバーが参加してくれ、非常にコミットメントが高く、今の技術基礎の多くを速い段階で確立することができました。
例えば当社独自の施設開発方法として、一級建築士が作る3Dパースに、アートディレクターが作った体験コンテンツの3DCGを融合してVR空間上で再現します。こうすることで、子どもの身長のアバターを作って目線チェックや危険物のチェックを実際に施設を施工する前に確認することができます。機材のデータも取り込んでいるために、レイアウトが決まるとおおよその設備投資費用も弾き出せます。

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ゲームエンジンのUnityと建築ツールのRevitでデータを共有し、BIM(Building Information Modeling)のワークフローを独自に作っています。

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全施設の入退場データやオペレーションデータは、一定時間ごとにダッシュボードとSlackへ通知されるようになっています。

当社の競争優位性は、こうしたコンテンツ開発からオペレーションまで含めて一気通貫で内製化している点にあると考えています。
内製化することで、コスト合理化を行いながらクオリティの高いコンテンツをスピード感をもって展開していくことができ、いかに`面`を広げていけるか、という点に絞って成長計画を立てることができていました。

資本政策についても、インキュベイトファンドさん、TBSさん、KDDIさん、グローバルブレインさん、OLMさん、みずほキャピタルさん、という錚々たるVC・CVCの皆さんに事業を信じていただき、大きなご支援をいただいています。

新型コロナの悪夢

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ここまでの成長も残念ながら2020年年初からの新型コロナウィルス感染症による影響をとても大きく受けてしまい、成長計画が当初計画から乖離して足止めを受けることになります。

リアルな施設事業を主力にしていることもあり、度重なる緊急事態宣言による影響を大きく受けてしまい、2020年の4〜5月は売上が0円(昨年対比100%減!)という悪夢をみているような状態に陥りました。

運営施設の休業、進めていた出店計画のキャンセル、開発プロジェクトの停止、などあらゆる計画がストップし、多くの関係各所からお問い合わせをいただいたり、社内からも不安の声も上がり、一瞬にして窮地に立たされます。
当社の場合は新型コロナの影響度がとても大きく、資金調達環境も劇的に変化してしまい、「今のタイミングでは難しい」ということを多く言われることになり厳しい状況が続きました。

新型コロナに対して取ったアクション

流行当時は新型コロナウィルスという未知のウィルスに対して、メディアや専門家も様々な見解、収束見込みの予測をしていました。
当社でもできるだけ多くの情報を集め、まず自分を中心にCEO直下のタスクフォースを立ち上げ、トップダウンで最速で進めていける体制にしました。

まず最初にやったのがBCP(事業継続計画)の策定です。そして大きく以下の方針を掲げて1つずつやっていきました。
・雇調金などの助成金/補助金の調査・申請
・リトルプラネット再開へ向けての感染拡大防止マニュアルの策定
・減少した売上を補填する追加施策
・徹底したコスト合理化

特にこの中でもリトルプラネットに向いていたリソースの90%以上を急激に別のものに振り向け、売上を補填するためのいくつかの新規事業を立ち上げる決断をしたことが大きな意思決定でした。

1. 家族やチームで体温を管理できる「たいおんログ」
施設が休業状態に入ってから、1週間で作ったのがこのサービスです。
最初は従業員メンバーやリトルプラネットのナビゲーター(スタッフ)向けに、体温を定期的に記録して簡単に管理できるサービスがあるといいよね。という話から、エンジニアメンバーで盛り上がって、その日の内にUIを作り、わずか1週間でAppStoreとGooglePlayへアプリ申請を出すスピード感で開発しました。
大人数を管理できるダッシュボード機能を追加した法人プランも開始し、リリースからすぐに10万ダウンロードを超え、今も毎日1万人以上に使っていただいています。

2. リトルプラネットの技術や運営ノウハウをBtoBの形で提供する「エクスペリエンスデザイン事業」
リトルプラネットを創る過程で培ってきた開発や運営ノウハウをソリューションという形で切り出して販売する事業を立ち上げました。
社内に「Placeholder Studio」というチームを作り、コンセプトアート制作から空間演出・インフラ開発・運用保守までを一気通貫で提供するサービスになります。
ありがたいことに非常に多くの引き合いをいただくことができ、この1年でリトルプラネットよりも多くの利益を生み出し、実際に会社を支えている事業になりました。

3. オンライン特化の学習プラットフォーム「リトルスパーク」
リトルプラネットでやってきたことの一部をオンライン化することを進めながら、本格的なマーケットプレイス型のプラットフォームとして開発したのが「リトルスパーク」になります。
開発背景などは以前noteにも書かせていただいたので、こちらもご覧いただけばと思います。

新型コロナが流行をし始めた2020年2月から約1年半が経過し、あらゆる関係者の皆さんに協力いただき、売上0から立ち直り、結果的に新たな成長軌道に載せられそうなところまで生き延びています。
厳しい時ほど関係性がよく見えてくる。と言いますが、その言葉どおりの体験をさせていただくことができ、厳しい中・苦しい中で非常にご協力いただける方とそうでない方との差があるのは事実で、自分の中でも本当に多くのことを学ばせていただきました。

特に急激なリソースシフトをしたり、事業を多角化したことで、本来リトルプラネットが好きで参加してくれたメンバーの皆さんには大変な想いをさせてしまっています。ここまでついてきてくれて本当に嬉しいです。

また、既存投資家・株主の皆さんと対話し続けていただいたことがとても救いになりました。対面ではなくなりましたが、継続的なコミュニケーションの重要性を学ぶことができました。

今だから書けますが、何度か心折れそうになるタイミングもありました。当社はスタートアップの中でも離職率が少ない方だと思います(年間5%以下)。それでもこの状況で去っていってしまった人もおり、採用の責任をもっている自分としてはとても心苦しい時がありました。
プレースホルダは2社目の起業ということもあり、1社目の最も地獄だった時のことを思い出しながら、あの時よりはマシ!みたいな謎のモチベーションを保ちながらここまで向き合ってきました。

さいごに

本当に多くの方に助けていただきながらここまでなんとかくることができ、同時に会社としても様々なものを仕込んできました。

現在はリトルプラネットも営業再開できていますが、まだまだ強めの感染拡大対策を実施しており、入場制限も通常時の半分以下になったままです。そんなコロナ禍でも多くの方に来場いただいており、単月事業利益が黒字になる月もでてきました。

また、ライセンスパートナーの皆様とともに展開数も増えており、現在は常設施設が9ヶ所、今年中には10ヶ所目がオープンとなる予定です。

今後もリトルプラネットを起点にした新たなプロジェクトが複数同時にスタートしており、とても楽しみな展開が控えています。

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ポジティブなこともありますが、事業を複数に分散多角化したことによる弊害もあるのは事実で、これまでのように選択と集中で「これならいける!」という確実な勝ち筋が見えているわけではありません。山は登っているのに、頂上に雲がかかってしまっていて道がうっすらとしか見えていない。。みたいな状態です。

それでも自分たちの信じることをやり抜いていき、次の5年・10年をしっかり作っていきたいと考えています。

リトルプラネットを使った共同展開、教育機関との連携、ライセンスパートナー様も引き続き募集しております。

こうして文字にするとあっとう間の5年間でしたが、書ききれないことも多くありました。次の5年・10年を一緒に作っていってくれるメンバーも募集していますので、ぜひ気軽に覗いてみてもらえると嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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