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90年代の音楽を知らないアナタへ その65 DOWN BY THE WATER(95)/PJ HARVEY 子を宿した女性のためのロック讃歌

この曲との出会いは偶然だった。MTVのビデオミュージックアウォードという毎年好例の授賞式で女性部門のノミネーションの映像でチラっと曲が流れただけ。ただそれだけで衝撃を受けるほどのインパクトがあった。

ポリー・ジーン・ハーヴェイ。シャーデーのようにひとりの名前であり、バンド形式をとっていた時期。彼女の産後初となるアルバム「TO BRING YOU MY LOVE」は女性の母性愛と性愛を昇華したリアリズムと女性賛美の双方が濃縮された傑作アルバムと思っている。彼女の良いところは、その表現方法が他の女性アーティストとは大きく違っているところにある。

ヒットチャートに媚びないダークさ。地をはうような地声を駆使した低音歌唱。ハードにかき鳴らすギター。エキセントリックで、半狂乱のようなパフォーマンス。それでいて歌わない素の彼女は穏やかで、母性そのものといった安心の様子。女性の性を多面的に表現しているのだなと、子供ながらに関心したものである。

話しを戻すが、その授賞式で紹介されていた「DOWN BY THE WATER」は妊娠中、おなかに宿した妊婦の喜びと子種のうごめく様が比喩的に歌われた曲。こんな曲はオルタナティブであるが、90年代だったからこそ注目された曲であろうといまさらなが感じるのだ。

こんな曲後にも先にもわたしは知らないし、これ以上女性を格好良く歌える歌手はそういない。PJハーヴェイは女性よりも男性の支持が多いのもまたびっくりである。才能豊かな音楽性に男が惹かれるのはあるが、男に媚びない女性こそ、男に崇拝されるのもまた然り。彼女はいつの時代も格好良くて、エロく、男を支配し続けるのだろうな。

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